【動画解説】「株式保有特定会社」の持株会社の株式評価を引き下げたい!

【動画解説】「株式保有特定会社」の持株会社の株式評価を引き下げたい!

親族内の事業承継対策として、持株会社を設立するケースが多く見られます。このように事業承継対策で持株会社を設立することは、相続税対策として効果的ではあります。しかし、その株式評価に原則的評価方式を使うことができなくなるため、想定以上に評価額が高くなってしまうケースがあります。株式保有特定会社の評価方式と注意点を説明いたします。

事業承継対策としての持株会社化

なぜ持株会社を設立するのか?

業績好調で、将来的に株式評価額(株価)の上昇が予想される場合、持株会社を設立することにより、その上昇を抑制することができます。

先代経営者が持株会社を設立するケースもあれば、後継者が持株会社を設立し、銀行借入金のよって先代経営者の自社株式を買い取るケースもあります。

相続税対策を目的とするのであれば、先代経営者が株主となって持株会社を設立すべきです。これは組織再編(株式移転、会社分割、現物出資など)であり、後継者に対して株式の承継が行われるものではありません。

【組織再編のための持株会社化】

持株会社化

これに対して、遺産分割対策(譲渡代金の現金を後継者以外の推定相続人に渡すこと)を目的とするのであれば、後継者が持株会社を設立するスキームが採用されるでしょう。これは株式の譲渡であり、後継者に対する株式の承継が行われるものです。

持株会社化がもたらす相続税対策

持株会社化は、株式評価の引下げ株式評価の上昇の抑制の両面から効果を発揮します。

まず、株式評価の引下げ効果は、複数の事業を営む会社であれば、高収益部門を会社分割によって子会社として独立させることによって実現させることができます。

すなわち、分社型分割による持株会社化です(図表3-40)。これによって、評価会社には低収益部門が残るために、企業オーナーが所有する株式の評価を引下げることができます。

また、複数のグループ会社を所有している場合は、既存の兄弟会社を株式交換によって100%子会社化することで、持株会社化を実現することができます。

すなわち、高収益で株式評価の高いグループ会社を、低収益で株式評価の低い会社の100%子会社とすることによって、企業経営者が所有する株式の評価を引下げることができます。

持株会社に事業を運営させると株式評価が下がる

持株会社が所有する資産は、ほとんどが非上場株式(子会社株式)となります。「ホールディングス」と呼ばれるように、株式所有による子会社の支配が事業目的となるからです。

ただし、持株会社にオーナーの利益を蓄積させるため、獲得した現金を不動産投資に充てることもあるでしょう。不動産は財産評価を引下げる効果を生みますから、株式評価を下げることができます。子会社が所有する不動産を持株会社に移転させ、事業会社の資産を軽くしてM&A(特に、従業員承継のMBO)を計画することもあります。

中堅規模の会社の事業を2つに分離させ、事業会社に子会社を保有させる持株会社体制も効果的です。

たとえば、持株会社に、大規模であるが収益性の低い事業を運営させます。会社の規模が「大会社」に該当すれば、類似業種比準価額を100%適用することができるでしょう。比準要素数1の会社に該当しないよう、配当金は0.1円出しましょう。当然に、株式評価額は低くなります。

一方の、子会社には、小規模であるが収益性の高い事業を運営させます。利益が大きいことから類似業種比準価額が高くなりますが、可能なかぎり純資産価額を引下げ、純資産価額100%の選択適用ができるようにします。株式評価額が上昇しても、持株会社に反映される金額は、法人税等相当額37%(2019年現在)だけです。

子会社株式の評価額の上昇は、親会社である持株会社の株式評価額の上昇をもたらしますが、持株会社の評価方法が類似業種比準価額100%であれば、子会社株式の上昇の影響を最小限に抑えることが可能となります。

事業持株会社

「株式保有特定会社」に係る事業承継対策

株式保有特定会社に該当すれば割高な評価となる

持株会社化による相続税対策を実行する際、注意すべきポイントは、持株会社化することによって、評価会社が株式保有特定会社に該当してしまうことです。

分社した高収益部門の規模が大きければ、子会社株式の評価額が総資産に占める割合が50%以上となり、株式保有特定会社に該当する可能性が高くなります。

そこで、特定会社外しの方法を検討することになります。

すなわち、子会社株式が総資産に占める割合を50%未満に引き下げて、株式保有特定会社から外し、類似業種比準価額を使うことができるようにします。これは、純粋持株会社を事業持株会社に転換するということです。

たとえば、人事・総務・経営企画などの管理部門に係る資産および負債は持株会社に移すための会社分割を行うなどの組織再編を行います。

また、子会社化された事業会社の不動産を持株会社に移すことによって、株式保有特定会社から外すことができる場合もあります。その際、不動産を子会社に対して賃貸すれば、純資産価額を下げることができます。

すなわち、純資産価額の評価において、建物を貸家評価(30%低下)、土地を貸家建付地評価(概ね20%低下)とすることができます。

持株会社を株式保有特定会社から外して類似業種比準価額方式を適用することができれば、その子会社の株式評価が高まっても、評価される持株会社の株式評価にはほとんど影響はありません。

つまり、持株会社を設立することによって、高収益事業の成長に伴う相続税負担の増加を抑制することが可能となるのです。

また、保有する子会社株式の評価が高まったとしても、その上昇を抑えることができます。すなわち、直接保有の場合、自社株式の「含み益」はそのすべてが評価対象とな

っていたのに対して、持株会社を使って間接保有した場合、子会社株式の含み益に係る法人税等相当額37%が控除されるため、それだけ株式評価の上昇を抑える効果が生じるのです。

以上のように、持株会社化には、株式評価の引下げという短期的な効果だけでなく、株式評価の上昇の抑制という長期的な効果があるのです。

株式保有特定会社とは、持株会社の所有する株式(と出資金)の価額の合計額(相続税評価額)の総資産(相続税評価額)に占める割合が50%以上の会社のことです。

非上場株式の評価に類似業種比準価額を使うとき、配当・利益・純資産価額(簿価ベース)の 3 要素を類似業種と比較するように計算します。

これに対して、純資産価額を使うときは、会社資産を帳簿価額ではなく相続税評価額に基づき、時価ベースでの資産価値を反映させるように計算します。

このため、会社の総資産に占める株式等の割合が高く、かつ含み益が生じている状況においては、時価ベースで計算する純資産価額よりも、簿価ベースで計算する類似業種比準価額の方が、評価額が低くなります。

そこで、課税の公平の観点から評価の適正化を図る目的で、特定評価会社の一類型として、「株式保有特定会社」の区分が設けられました。

株式保有特定会社の評価は純資産価額となる!

株式保有特定会社は、保有資産のほとんどが株式という資産構成が特殊な会社です。このような会社は、上場会社に比べて資産構成が著しく偏っており、上場会社レベルの非上場会社の株式に対して適用すべき類似業種比準価額によって評価を行うことは合理的といえません。むしろ、この場合は、資産価値をよく反映できる純資産価額を採用することが適当といえます。

それゆえ、株式保有特定会社の評価は、原則として純資産価額によって評価されます。

株式保有特定会社の株式評価の「S1+S2」方式

ただし、純資産価額方式に代えて、「S1+S2」方式とよばれる類似業種比準価額方式を修正した方法によって評価をすることもできます。

この計算の「S1+S2」のうち「S2」は、発行会社が保有する株式等に相当する部分の価額をいい、純資産価額により評価されます。

「S1」は、発行会社が保有する株式等やその株式等に係る配当金を除外したところで、原則的評価方式、つまり会社規模に応じ類似業種比準価額方式、純資産価額方式またはその併用方式により評価した金額となります。

このS1の金額とS2の金額の合計額が、「S1+S2」方式による評価額となります。

株式保有特定会社から外す事業承継対策

事業会社の不動産を持株会社へ移転する

対象会社が株式保有特定会社に該当した場合、自社株評価が高くなり、親族内承継に伴う相続税の負担が問題となります。それゆえ、株価引下げのための事業承継対策が必要です。

例えば、賃貸不動産を購入することによって、総資産に占める株式の割合を引下げる方法があります。投資信託など株式以外の金融商品を取得することも効果があるでしょう。

また、上述のように、子会社が所有する不動産を持株会社に移転させることも、結果的に株式保有特定会社から外す効果があります。このスキームの目的は2つあり、一つは持株会社の株式評価を引下げること、もう一つは、子会社の資産を軽くしてM&Aの準備をすることです。特に、従業員承継のMBOでは、従業員に不動産まで購入できる資金力が無いケースがほとんどであるため、事前に不動産を事業会社から外しておく必要があるのです。

株式保有特定会社

いずれにせよ、株式保有特定会社に該当しなくなるよう、早めに事業承継対策を講じておく必要があります。

組織再編は税務調査に注意

一般的に、相続税対策を行う企業オーナーは、相続に伴う税負担を可能なかぎり軽減したいと考えるものです。

特に、企業オーナーは、ゼロからの叩き上げで資産を築いてきている人が多く、1円を削るような厳しい商売を行ってきたため、コスト意識が強く、無駄な費用は1円でも減らしたいと考えます。

それが税金であっても同様です。それゆえ、あらゆる節税手法を駆使して株式の相続税評価を下げようとします。

しかし、極端な組織再編は、租税回避行為であるとして否認されるリスクを伴います。それゆえ、相続税対策のための再編スキームは、時間をかけて自然体で行うとともに、取引に事業関連性があることを確認しておく必要があります。

そもそも、会社の組織再編や資産の譲渡等は、節税以外の「経済的なメリット」を生み出すものであることを前提として実行されるべきものです。

この「経済的なメリット」とは、税効果を織り込むことなく実現が客観的に見込まれる経済的利益をいいます。

たとえば、事業の集中・選択・リストラ等により収益の増加または経費の節約が実現し、キャッシュ・フローが改善されるようなものが考えられます。

しかし、このような「経済的なメリット」を無視し、税負担を軽減させることのみを目的とする取引が現実に行われています。

この点、同族会社等の行為または計算で、その株主や親族など関係者の相続税または贈与税の負担を不当に減少させるような場合には、税務署長の判断によって課税することができるものとされています。いわゆる同族会社の行為計算の否認という規定です。

税務大学校「組織再編に係る行為計算否認規定の解釈・適用を巡る諸問題」によれば、組織再編を利用した租税回避行為(法人税法132条の2)として、経済的合理性を欠いている取引、個別規定の趣旨・日的に反している取引が挙げられています。

それゆえ、相続税を不当に減少させることのみを目的として企業組織再編や同族間取引を行った場合、税務調査において否認される可能性があることには注意しなければなりません。

したがって、相続税対策を実行する際は、グループ経営の合理化、間接部門の統合によるコスト削減など経済的な合理性を確保するだけでなく、専門家から指導を受け、それを明文化した書面を残しておくことが不可欠となるのです。

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