事業承継のための伝統的な自社株対策を全て解説しよう!

事業承継のための伝統的な自社株対策を全て解説しよう!

自社株対策の基本!「土地特外し」と「株特外し」

事業承継のために自社株評価の引き下げ方法を検討しましょう。

株式保有特定会社、土地保有特定会社は、原則として純資産価額方式により評価することになりますので、類似業種比準価額方式の方が低い場合は、株式等や土地等の保有割合を下げることが必要です。

株式保有特定会社に該当している状況において、株式の所有割合を下げ、特定会社に該当しないようにする手法は、「株特外し」と呼ばれます。

また、土地保有特定会社に該当している状況において、株式の所有割合を下げ、特定会社に該当しないようににする手法は、「土地特外し」と呼ばれます。

複数のグループ会社を抱える企業オーナーであれば、土地や株式を他社へ移転させればよいでしょう。

現在はグループ法人税制が導入されましたので、この適用対象である法人間では資産の譲渡損益は繰り延べになります。

つまり、原則として税負担なしにグループ法人間で資産を移転させることが可能です(もちろん登録免許税などは必要です。)。

そこで、グループ法人税制の対象会社を複数保有している場合、他のグループ会社に資産を移転することによって、株式等や土地等の保有割合を変えることを検討しましょう。まずはグループ法人間における資産の再配分を検討すべきなのです。

「株式保有特定会社」から外すためのオペレーティング・リース活用法

株式保有特定会社とは、総資産の価額のうちに占める株式等の価額の割合が一定以上の会社をいいます。吉野工業所事件を起因とする平成25年度の税制改正によって、大会社・中会社・小会社のいずれも50%が基準となりました。

この適用を外すには、不動産の取得によって株式の保有割合を下げる方法が効果的でしょう。

ここで提案したい方法は、オペレーティング・リースです。これは航空機、海上コンテナ、船舶等の大型リース資産へ匿名組合出資する方法です。

オペレーティング・リースの特色は、リース収入は毎年定額ですが、リース資産は定額法によって減価償却し、かつ、リース期間が耐用年数を上回っていますから、リース期間の前半は必ず投資損益が赤字となり、投資家に損失が分配されることになっていることです。

オペレーティング・リース取引を実行することによって、「匿名組合出資金」を資産へ計上し、株式等の保有割合を下げることができます。

また、オペレーティング・リースであれば、株式の保有割合を下げることと同時に、損失分配額の計上によって利益を圧縮し、類似業種比準価額を引下げることができます。

さらに、損失分配額の未払金計上によって、純資産価額を引下げることもできます(大型の償却資産を取得した場合と同様の効果があります。)。

ただし、匿名組合への出資の際に多額の現金支出を伴いますので、会社の資金繰りに支障をきたさないように注意する必要があるでしょう。

なお、出資金と未払金(損失分配額の累計額)の評価については、従来は簿価評価を行うことが一般的でしたが、近年では損失分配を否認する事例が出てきているため、注意が必要です。

ちなみに、財産評価基本通達189によれば、株式評価前に合理的理由も無く資産構成の変動があり、それが株式保有特定会社を外す目的だと認められた場合には、その変動がなかったものとして判定されると規定されているため、株式評価の直前に節税対策を行うことは避けたほうがよいでしょう。

「土地保有特定会社」から外すためのオペレーティング・リース活用法

土地保有特定会社とは、総資産の価額のうちに占める土地等の価額の割合が一定以上の会社をいいます。

この適用を外すには、所有土地の有効活用を兼ねて、建物を新築することが効果的です。

また、上述したように、オペレーティング・リースによって、大型リース事業への匿名組合出資する方法も効果的でしょう。

さらに、M&Aによって事業を買収し、不動産保有会社から事業会社へ転換してしまうことも選択肢の一つです。

もちろん、借入れを行なって預貯金や有価証券に運用すれば、土地の保有割合を簡単に低下させることができますが、租税回避行為とみなされる虞があるため止めておいたほうが無難でしょう。

余談ですが、失敗事例などで散見される方法として、株式等や土地等を買い戻し条件付きで第三者に売却し、一時的に「未収金」という金銭債権に転化させて保有比率を下げる大胆な手法もありますが、明らかな租税回避行為ですので止めるべきでしょう。

類似業種比準価額を引下げる方法

類似業種比準価額の3つの比準要素の配分比率は、配当1:利益1:純資産1となっています。この中で恣意的に引き下げることが最も容易な要素は「利益金額」です。それゆえ、類似業種比準価額を引き下げるためには、利益(課税所得金額)を引き下げることが効果的です。

私の過去のアドバイス実績では、前年度 3億円の利益を生前贈与を実行する事業年度 1億2千万円(前年比60%減)に減少させることによって、株価を@50,000円から@10,000円まで約8割下げたケースがあります。

株価を下げたタイミングで相続時精算課税を適用すれば、贈与税を大幅に軽減(ゼロも可能)した状態で後継者へ株式を引継ぐことが可能となります。

損失を出す方法①~含み損の実現

たとえば、遊休不動産などで含み損を抱えている場合は、売却して損失を顕在化させることによって利益金額を圧縮しましょう。

3要素のうち利益金額には、不動産売却益等の臨時的な特別利益を加算する必要はありませんが、臨時的な損失は当然に差し引くことができます。

もっとも、「グループ法人税制」の適用があるため、関連会社に飛ばして損失を吐き出すような手法は使うことができません。すなわち、グループ法人間で帳簿価額1千万円以上の資産等を譲渡する場合、譲渡損益を計上することはできません。

損失を出す方法②~役員退職金の支給

オーナー経営者の退職時と併せて、後継者に株式を生前贈与するのであれば、役員退職金の支払いは利益の圧縮に効果的です。一般的に、法人税法では次のように計算式による金額を役員退職金として認めています。

役員退職金 = 最終報酬月額 × 勤務年数 × 功績倍率

すべての役職を退く場合はもちろん、常勤から非常勤などになる場合でも役員退職金の支給対象になります(この場合でも実態をともなっていることが必要です。たとえば退職後も引続き会社に出社して経営指揮をとって意思決定をしていたら、退職の事実はみとめられないでしょう。)。

役員退職金の支給があると、多額の損金が計上されますから利益を圧縮するとともに、多額の現金支出によって純資産も圧縮しますから、自社株の評価額は下がります。

損失を出す方法③~高収益部門の分離

複数の事業を営む会社であれば、高収益部門を会社分割により別会社として独立させる手法が効果的です。これによって、既存会社には低収益部門が残るために利益を減少させることができます。

また、高収益部門が使用する固定資産(不動産)を賃貸すれば、純資産価額を下げることができます。すなわち、純資産価額の評価において、建物を貸家評価(概ね30%減少)、土地を貸家建付地評価(概ね20%減少)とすることができます。

さらに、分社型新設分割によって高収益部門を既存会社の子会社とすれば、将来的に株価が上昇しても、その上昇分に対する法人税等相当額37%を控除することが可能となり、既存会社の株価上昇を抑えることができます。

会社規模区分のランクアップして類似業種比準価額の適用割合を上げよう!

会社規模区分がランクアップすれば、通常は純資産価額よりも低い評価となる類似業種比準価額の適用割合が高くなるため有利です。中会社の大であれば、大会社を目指すべきでしょう。

その方法は、(1)従業員数を増やすこと、(2)売上高を増やすこと、(3)総資産を増やすことによります。

ただし、総資産だけ増えても、従業員数や売上高が増えなければ区分変更は認められない仕組みとなっており、例えば、借入金と普通預金を両建て計上して総資産を増やしてもランクアップさせることはできません。

即効性のある方法は、M&Aによる事業譲受や合併でしょう。これによって従業員数や売上高を増やすことができれば、Lの割合(類似業種比準価額の適用割合)を上げることによって株価を引下げることができます。

外部の会社とのM&Aでも構いませんが、複数のグループ会社を経営しているならば、合併によって単純に従業員数と総資産を増やすことによって、会社規模のランクアップを図ることができます。

特に、合併する片方の会社が赤字ならば、利益を圧縮できることに加えて、純資産を引下げることもできますので、類似業種比準価額を引下げる効果が期待できます。

また、M&Aによって株価の低くなる別業種の事業を譲り受け、それによって類似業種比準価額の計算に適用する業種目(国税庁が公表)を変えることができれば、株価が下がることができる可能性があります。

純資産価額を引下げる方法

純資産を減らす方法①~役員退職金の支給

オーナー経営者の退職時と併せて、後継者に株式を生前贈与するのであれば、役員退職金の支払いによって純資産を減少させておくとよいでしょう。

再度掲載しますが、法人税法では次のように計算式による金額を役員退職金として認めています。

役員退職金 = 最終報酬月額 × 勤務年数 × 功績倍率

すべての役職を退く場合はもちろん、常勤から非常勤などになる場合でも役員退職金の支給対象になります。この場合でも、実態として、経営権を手放していることが必要です。たとえば、退職後も引続き会社に出社して指揮命令し、意思決定を行っていたら、役員からの退職という実態があるとは認められません。

役員退職金の支給があると、多額の損失が発生し、多額の現金が流出しますから、純資産が減少して、純資産価額は下がります。

純資産を減らす方法②~所有する資産の財産評価の引下げ

純資産価額を引下げるための方法として、最も効果的なものは、投資用不動産の取得です。

たとえば、銀行借入れによって賃貸マンション、賃貸オフィス、商業ビルなどの収益物件を取得します。いつでも売却できるような優良な収益物件を取得し、再び現金化できるようにしておきたいものです。

賃貸物件を取得した場合、土地は「貸家建付地」による評価、建物は「貸家」による評価となります。すなわち、建物と土地の相続税評価額は、概ね取得価額の3割~4割の大きさとなります。相続税評価額が時価を下回った分だけ純資産価額を引下げることができます。

そこで、企業オーナーが自社株式を後継者に贈与又は譲渡する際に、投資用不動産を取得して株価引下げを実行するのです。純資産価額を引下げたタイミングで後継者に贈与を実行すれば相続税対策は完了です。その後、投資用不動産を売却すれば、また投資に充てた現金が戻ってきます。

ただし、株式評価において、課税時期から3年以内に取得した不動産は、取得価額で評価しなければなりません。それゆえ、投資用不動産を活用した株価引下げ対策を実行する場合には、贈与を行う3年前以前の早い時期に、投資用不動産を取得しておく必要があるのです。

デット・エクイティ・スワップ

デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap)とは、デット(債務)とエクイティ(資本)をスワップ(交換)することです。

すなわち、債務と交換に株式を発行することをいいます。債権者から見たときは「債権の株式化」、債務者から見たときは「債務の資本化」ということができるでしょう。

債務者にとっては、過剰債務を減らし財務体質を健全化できるメリットがあります。有利子負債の減少による金利負担の軽減により、経営再建を行うためのスキームとして利用されることが少なくありません。

債務が消滅し、資本が増加することにより、債務超過の解消という効果が生じるケースもあります。

一方、債権者にとっても、債権の全部又は一部を全面的に放棄しないで、その一部を株式に交換しておくことによって、将来、経営再建が成功し、株式の価値が上昇したときに、キャピタル・ゲインや配当収入を得ることが期待できます。

また、債権者としては株式を取得することによって経営に関与することも可能となります。

DESの会社法上の取扱い

デット・エクイティ・スワップの手法には、債権を現物出資する「現物出資方式」と金銭出資及び債務の返済を組み合わせる「新株払込方式」がありますが、実務上はほとんど現物出資方式を用います。

会社法においては、現物出資方式によるデット・エクイティ・スワップ(金銭債権の現物出資)について、原則として検査役の調査は不要とされています。

すなわち、弁済期が到来している金銭債権を、その債権額(額面金額)以下で出資する場合には、検査役の調査は不要であると規定されています。

これは、弁済期の到来した金銭債権を現物出資する場合、弁済額が確定しているから、債務の弁済と払い込みが同時に行われたのと実態は変わらないことから、券面額説(債権の時価ではなく額面金額について資本の増加を認識するという考え方)によっても問題がないと解されたものです。

DESに係る会計処理

弁済期の到来した金銭債権を現物出資する場合において、会計上も債権の券面額につき資本金(又は資本準備金)の増加を認識することになります。

会社法上の払い込みを伴う新株発行に該当するため、2分の1規制の対象となり、払込金額の2分の1を超えない範囲で資本準備金に計上することは認められます。

DESに係る税務処理

現物出資は、税務上、企業組織再編税制の対象に含まれています。適格現物出資とは、①100%グループ内の現物出資、②50%超グループ内の現物出資、③共同事業を行うための現物出資のいずれかに該当する現物出資で、現物出資法人に被現物出資法人の株式のみを交付するものをいいます。

しかし、デット・エクイティ・スワップの場合は事業の移転を伴わないことから、従業者引き継ぎ要件(従業者の概ね80%以上の引き継ぎが見込まれていること)及び事業継続要件(移転した事業の継続が見込まれていること)を満たさないと考えられることから、完全支配関係がある法人間のデット・エクイティ・スワップで適格要件を満たすものを除いて、非適格現物出資になるものと考えられます。

非適格現物出資に該当する場合、債務者側において新株発行において増加する資本金等の額は、給付を受けた金銭以外の資産の時価と規定されています(法令8条1項1号)。

具体的には、債権の時価相当額につき資本金等の額を増加させ、債務者の財政状態が著しく悪化している場合のように債権の時価相当額が額面金額を下回るときは、その差額が債務消滅差益(債務免除益)として認識されることとなります。

なお、会社更生法、民事再生法その他それに準ずる一定の場合において、期限切れの欠損金を債務消滅差益に充当することができます(法法59条1項1号、2項1号)。

実務上よく見られるケースは、また、中小企業のオーナーが会社に資金を貸し付けている状況です。このようなオーナーからの貸付金は、実質的に資本と同様であるにもかかわらず、相続が発生すると相続財産として貸付金額で評価されてしまいます。

そこで、デット・エクイティ・スワップを利用して貸付債権を株式に交換することで相続財産の評価を引き下げることができる場合があります。

ただし、貸付金額と貸付債権の時価に差額があると債務免除益を計上することになって会社で課税されてしまう可能性がありますのでご注意ください。

債務免除益に対する課税を回避する手段は、いったん金銭出資による増資を行った後、その増資払込金で借入金を返済する、いわゆる疑似DESと呼ばれる手法です。これにより、デット・エクイティ・スワップと同様の効果が得られます。

この疑似DESは、現物出資ではなく、単なる金銭出資による増資と債務の返済ですから、債務免除益は発生しません。

なお、デット・エクイティ・スワップにしろ疑似DESにしろ、資本金等が増加することにより税負担が増大する可能性があります(登録免許税、住民税均等割)。税務上のリスクを含めた費用対効果を見極めて実行に移すことが大切です。

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