資本の払戻しと出資の払戻しは異なる!払戻しの税務は?

資本の払戻しと出資の払戻しは異なる!払戻しの税務は?

資本の払戻しとは何か?

株式会社では、資本金の額そのものを直接に払い戻す(有償減資)ことは、簡単に行えるものではありません。

いったん資本金の額の減少手続きを実施し、減少した資本金を資本剰余金に振替えて払戻しの手続きを実施する必要があります。

これを仕訳で表記すれば次のようになります。

(借)資本金 ×××   (貸)資本剰余金 ×××
(借)資本剰余金 ××× (貸)現預金 ×××

税法においても、資本の払戻しは、株式に係る剰余金の分配であって、それが資本剰余金の減少を伴うものと定めています。

出資の払戻しとは何か?

一方、株式会社における自己株式の取得、合同会社における出資持分の払戻し、「持分の定めのある医療法人」における出資持分の払戻しやその消却(以下「出資の払戻し等」)を行う場合には、資本金又は出資金を直接に減少させることができます。

自己株式取得の場合には、資本金等を減額(マイナス)させることができます。また、株主は、会社に対して持分の払戻しを請求することができます。ただし、合同会社の場合には、持分の払戻しについて制限があるのです。

細かく見ていきましょう。先に合同会社における出資の払戻しを確認します。

すなわち、合同会社の社員は、会社に対して、すでに出資として払込んだお金の払戻しを請求することができます

持分会社では、社員は連帯して債務を弁済する責任を負うため、その債権者は会社財産だけでなく、社員の個人財産もあてにすることができます。

したがって、会社財産の流出も許容され、それに伴う出資の払戻しが認められているのです。

ただし、合同会社は、全社員が出資額までしか債務の弁済責任を負わないので(有限責任社員)、会社財産がむやみに流出してしまうと、債権者の利益を害することになってしまいます。それゆえ、合同会社では、出資の払戻しが制限されているのです。

具体的には、合同会社の社員は、定款を変更し、そこに規定される「出資の価額」を減少させなければ、出資の払戻しを請求することができません。

また、定款変更を行ったとしても、一定限度額を超える出資の払戻しはできないことになっています。

出資の払戻しのためには、資本金を減少させる必要がありますが、合同会社が資本金を減少する場合には、その債権者は、会社に対して、資本金の減少について異議を述べることができることとされています。債務返済の財源となる会社財産が流出してしまうと困るからでしょう。

会社法における出資の払戻しの制限規定

合同会社では、出資の払戻しが可能であるものの、債権者を保護するために、制限が課せられていました。会社法の規定を確認しましょう。

第632条【出資の払戻しの制限】

① 第624条第1項の規定にかかわらず、合同会社の社員は、定款を変更してその出資の価額を減少する場合を除き、同項前段の規定による請求をすることができない。

② 合同会社が出資の払戻しにより社員に対して交付する金銭等の帳簿価額(以下この款において「出資払戻額」という。)が、第624条第1項前段の規定による請求をした日における剰余金額(第626条第1項の資本金の額の減少をした場合にあっては、その減少をした後の剰余金額。以下この款において同じ。)又は前項の出資の価額を減少した額のいずれか少ない額を超える場合には、当該出資の払戻しをすることができない。この場合においては、合同会社は、第624条第1項前段の規定による請求を拒むことができる。

 

この規定ですが、合同会社の社員は、定款を変更してその出資を減少する場合を除いて、会社に対し、出資の払戻しを請求することができないというものです。これは債権者保護が目的でしょう。

また、出資の払戻し額が、その請求日における剰余金又は出資額を減少した金額のいずれか少ないほうを超える場合、その出資の払戻しをすることができないとされます。これと同時に会社側では、出資の払戻し請求を拒否できるとされています。社員であった期間に増やした(減らした)財産については、その社員の持分に反映させるということでしょう。

払戻しにおける税務上の異同

資本の払戻しも出資の払戻しも、それに伴って交付されるお金が資本金を超える場合には、その超える部分が「みなし配当」として取り扱われます。つまり配当金です。

また、「交付されたお金-みなし配当」の金額は、株式等の譲渡所得に係る収入金額とみなされています。

それゆえ、取得した株式及び出資金が資本金と異なるときは、株式等に係る譲渡損益が生じることになります。

この点、出資金の払戻しにあっては、払戻しした金額が資本金以下であれば、みなし配当は発生しません。

しかし、資本の払戻しに関しては、その払戻しが資本金からなされていても、法人の純資産に利益剰余金がある限り、みなし配当が発生します。資本の払戻しには留意が必要です。

なお、出資の払戻しが資本金以下であっても、それが特定の出資者に対するものである場合には、他の出資者に対して「みなし贈与」課税が生じるケースがあるため注意が必要です。

退社に伴って持分を払戻す場合

次に、退社した社員の投資回収に関する規定を見てみましょう。

上述した出資の払戻し制度は、社員が辞めること(退社すること、出資を全額回収すること)は想定していませんでした。しかし、社員が辞めることもあるため、その際の対応方法も想定しなければいません。

この点、合同会社を退社した社員は、持分の払戻しを受けることができるようになっています

持分の払戻しは、払込みしたお金の金額を限度とする出資の払戻しとは異なり、退社時における持分会社の財産の大きさに応じて行われます。

具体的には、退社時の自己資本のうち、退社した社員の出資割合に対応する金額を払い戻すということです。

したがって、出資してから獲得したキャピタルゲインや、負担すべきキャピタルロスを反映した金額が払戻しということです。

合同会社の社員は、自分の出資持分を他人に自由に譲渡することができません。これは人的信頼関係に基づいて構成される会社だからです。

それゆえ、退社に際して、入社の際に投資したお金を回収することができる手段を設けているのです。

ただし、合同会社については、出資の払戻しと同様、退社に伴う持分の払戻しについても制限があります。

具体的には、持分の払戻し額が、その払戻し日における剰余金を超えている場合には、債権者は、持分の払戻しについて異議を述べることができるものとされています。

これは債権者を保護するための規定です。債権の弁済の財源となる会社財産がむやみ流出してしまうと困るからでしょう。

また、合同会社が債権者保護手続きを経ないで、勝手に持分の払戻しを行った場合、その業務を執行した他の社員は、持分の払戻しを受けた社員と連帯して、持分払戻し額に相当するお金を会社に支払わなければならないこととされています。勝手に流出させてしまった会社財産を、責任持って補填させるということです。

株式会社が合同会社に出資することは可能か?

合同会社の法律上の機関を大雑把に申し上げますと、「出資者」=「経営者」という概念になります。合同会社は、出資者を「社員」と言います。

そして、社員の中で、経営に参加する者を「業務執行社員」、出資だけして経営に参加しない者は、そのまま「社員」となります。

よくある質問ですが、合同会社には、法人(株式会社など)も出資することが可能です。株式会社が出資者になり、出資持分を取得することも可能なのです。

ただし、出資者が法人となると、実際に合同会社を代表して、法人が動くことは不可能です。

そこで、合同会社の代表社員が株式会社の場合には、職務執行者を選任することになります。

この場合、実際に合同会社を代表して、職務を執行する人を株式会社が選任をすることになります。

選任手続きは、株式会社が、取締役会などで決議して、合同会社の職務執行者を決めるということになるでしょう。

出資者(社員)が、複数いた場合、代表社員(業務執行社員)となった株式会社は、業務執行者の選任を決定後、速やかに他の社員に通知をしなければいけません。

また、この業務執行者の住所、氏名は、登記事項となりますので、合同会社の登記簿に業務執行者として、登記されます。

その他資本剰余金の取り崩しに係る法務

出資の払戻しを行うと、資本金または資本準備金を減少して、その他資本剰余金に振り替えなければいけません。その他資本剰余金は、剰余金の配当の財源になります。

会社法上の剰余金の分配規制のもとでは、その他の資本剰余金は、利益剰余金と同様に分配可能額の算定のベースとなる剰余金の一部を構成することとなります。

そこで、出資を払戻すために、その他資本剰余金を取崩した場合の法務・会計・税務を確認しておきましょう。

会社法上、資本金の減少と、株主に対する払戻しは区別されています。

資本金の減少は、資本金を減少させて、同額のその他資本剰余金を増加させる取引です。

出資者に対して資本の払戻しを行う場合は、そこで発生したその他資本剰余金を原資として剰余金の配当の決議をとって払い戻すことになります。

【資本金の減少によって発生したその他資本剰余金を原資として剰余金の配当を行う場合】

資本金の減少(会社法447条) + 剰余金の配当(会社法454条)

株式会社を前提としますと、資本金の減少に係る決議は、原則として株主総会の特別決議事項であり、剰余金の配当に係る決議は、原則として株主総会の普通決議事項です。

これら二つの決議は同じ株主総会において、たとえば「第1号議案 資本金の減少の件」および「第2号議案 剰余金の配当の件」と付議して行うことが可能です。すなわち、効力発生日を同じ日と定めて決議することにより、資本金の減少と同じ日に剰余金の配当を行うことが可能です。

もちろん、資本金の減少によって発生したその他資本剰余金をそのまま計上しておくことも可能です。

また、利益剰余金の額がマイナスであるときのそのマイナスに充当することもできます。

会社法における剰余金の処分は、剰余金の勘定科目間の金額の変更を想定しているだけであり、別途積立金の積立て・取崩のように、利益剰余金の中での振替だけでなく、その他資本剰余金からその他利益剰余金のマイナスへの充当(欠損てん補)も可能なのです。

その他資本剰余金の取り崩しに係る会計処理

会計処理については、その他剰余金の配当を行う法人側の会計処理と、その配当を受ける法人側の会計処理の両面から考える必要があります。

先にその他剰余金の配当を行う法人側の会計処理を見ていきましょう。

会計上も、会社法の取扱いに合わせて、資本金の減少と剰余金の配当を区別して取り扱います。資本金の減少については、資本金を減少し、その他資本剰余金が計上される認識をします。

(借)資本金 XXX (貸)その他資本剰余金 XXX

その他資本剰余金を原資として剰余金の配当を行う場合は、会計上、その他資本剰余金の減少を認識します。税務上はみなし配当が生じる場合があり、みなし配当に係る源泉所得税等の徴収が必要になります(仕訳省略)。

(借)その他資本剰余金 XXX (貸)現預金 XXX

次に、その他資本剰余金を原資とした剰余金の配当を受ける法人の会計処理を見てみましょう。

株主である法人が、その他資本剰余金の処分による配当を受けた場合、それが売買目的有価証券である場合を除き、原則として配当金の受取り額を有価証券の帳簿価額から減額します。

(借)現預金 XXX (貸)投資有価証券 XXX

なお、配当金を計上する際の会計処理ですが、相手方がその他利益剰余金の処分を行っているのか、その他資本剰余金の処分を行っているのか、受け取った立場では、わからないでしょう。

その場合は、受取る側は、受取配当金として計上することができます。

その後、その他資本剰余金の処分によるものであることが判明した場合には、その時点で修正する会計処理を行います。

その他資本剰余金を財源とする配当に係る法人税法上の取扱い

その他資本剰余金を原資とする剰余金の配当を行った場合、税務上、自己株式の取得と同様に、「資本の払戻し」として取り扱われます。つまり、「みなし配当」となります。

この場合、みなし配当を定めた法人税法24条1項の規定に従います。すなわち、自己株式の取得の場合と同様に、①資本金等の額の減少と、②交付金銭の額(払戻額)を比較し、②が①の額を上回る場合は、その超過額について利益積立金額の減少として処理します。

その他資本剰余金を財源とする配当を受けた法人株主の会計処理

一方、その他資本剰余金を原資とした配当を受ける側が法人の場合、その税務上の処理は以下の通りとなります。

すなわち、その他資本剰余金を財源とした配当を受ける法人においては、資本金等の額の減少部分に対応する金額が株式(出資持分)の譲渡対価(譲渡収入)とされ、利益積立金額の減少部分に対応する金額が受取配当金とされます。

結果として、出資者においては、株式の譲渡損が生じる場合と、株式の譲渡益が生じる場合の2通りが想定されることとなります。

その他資本剰余金の処分による配当は、基本的には出資の払戻しの性格を持つことから、このような処理が原則とされているのです。

出資している会社が子会社であった場合、その他資本剰余金の処分による配当を受けた場合は、子会社株式の帳簿価額から減額することになると考えられます。

(借)現預金 XXX  (貸)子会社株式 XXX

ただし、完全支配関係がある法人間で配当が行われた場合には、株式(出資持分)の譲渡対価の額を「譲渡原価の額」とするものとされており、計算上、譲渡損益を計上できないようになっています

結果として、株式(出資持分)の譲渡損益に相当する額は、資本金等の額を加減算して処理することになります。

これは、非適格組織再編によって巨額の譲渡損を意図的に創出するような租税回避行為を防ぐための規定だと思われます。

一方、完全支配関係がある法人間で配当が行われた場合、その配当を受ける法人が有する株式は完全子法人株式等に該当するので、受取配当金は全額益金不算入となります。

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