相続がとても簡単!法定相続情報証明制度の利用

相続手続きのために戸籍謄本を集めるのはたいへんです。ここで法定相続情報証明制度を利用すれば負担を軽減できます。法定相続情報証明制度について解説します。

目次

相続手続きに必要となる戸籍謄本

不動産や銀行預金などの相続手続きにおいて、亡くなった人(被相続人)の戸籍謄本を提出することが必要となります。これは、誰が相続人かをはっきりさせることが目的です。相続人とは、亡くなった人の財産を引き継ぐ権利を持つ家族のことです。

戸籍謄本には、被相続人の生涯を通じた家族の変化が記録されています。例えば、結婚や離婚、養子縁組などの重要なイベントは、すべて戸籍に記録されています。これらの情報は、法定相続人がどのように発生してきたかを理解することに役立ちます。また、戸籍謄本には、過去に記載されていた他の戸籍がどこにあるのか記載されているため、出生から死亡まで、その履歴を追跡することが可能となります。

以上のように、戸籍謄本には、亡くなった人の配偶者や子供など、相続人になり得る家族の情報が記されているため、これを見れば、誰が相続人かを正確に知ることができます。戸籍謄本がないと、相続手続きを進めることができません。

法定相続情報証明制度とは何か

日本では、2017年から「法定相続情報証明制度」という新しい制度が導入されました。この制度を利用することで、亡くなった人とその相続人との関係を、全国の登記所(法務局)が証明します。主な目的は、相続手続きを簡素化し、相続登記などのプロセスを容易に進めることです。

この制度の大きなメリットは、相続手続きにおける負担の軽減です。従来、相続手続きでは、複数の機関にまたがる場合には、それぞれの機関ごとに必要な戸籍謄本などの書類を準備する必要がありました。相続人にとって大きな負担でした。

しかし、法定相続情報証明制度を利用すると、最初の申出時に必要書類を一式揃えれば、その後は法務局から交付された法定相続情報一覧図を用いることで、複数の手続きを効率的に進めることが可能になります。戸籍謄本などの公的書類発行の手数料コストを削減できるという経済的なメリットもあります。

さらに、この制度の利用により、複数の相続手続きを同時に進めることができます。通常、一つの手続きが完了するまで戸籍謄本を返却できないなどの制約がありましたが、法定相続情報証明制度では、必要な手続きの数だけ法定相続情報一覧図を発行することで、複数の手続きを並行して進めることが可能となるのです。

ただし、相続手続きが1か所しかない場合、法定相続情報証明制度を利用する必要はありません。申出から法定相続情報一覧図が交付されるまでに、時間と日数が必要となり、かえって時間がかかるからです。

例えば、相続手続きが一つの銀行の口座解約や一つの不動産の名義変更のみである場合、通常通り戸籍謄本を取得するほうがよいでしょう。

法定相続情報証明制度の手続きの流れと必要書類

手続きの流れを説明しましょう。まず必要書類を準備します。亡くなった人の戸籍謄本や除籍謄本、住民票の除票などの必要書類を集めます。

次に、申出書を作成します。 法定相続情報一覧図を作成して、申出書を記載します。これらの書類を、亡くなった人の本籍地、最後に住んでいた場所、申出人の住所地、または亡くなった人の名義の不動産がある住所地の登記所に提出します。申出ることができるのは、相続人、または代理が可能な有資格者(例えば、弁護士や行政書士)に限られます。

登記所で手続きが完了すれば、登記官による確認後、法定相続情報一覧図の写しの交付が行われます。交付手数料は無料です。この一覧図は申出の翌日から5年間保管され、再交付も可能です。

申出する際に必ず用意することが必要となるのは以下の書類です。:

・亡くなった人の戸籍謄本や除籍謄本(出生から死亡まで)、住民票除票

・相続する人全員の戸籍謄本・戸籍抄本(亡くなった日以後の証明日)

・申出人の身分証明書(マイナンバーカードのコピーなど)

・各相続人の住民票記載事項証明書(任意)

もちろん、有資格者に代理を依頼する場合には、委任状が必要です。また、親族に代理を依頼する場合には、申出人と代理人の親族関係を証明する戸籍謄本が必要になることもあります。

法定相続情報一覧図の書き方

勘違いされることがありますが、法定相続情報一覧図は登記所が作成してくれるものではありません。申出人が作成して提出するものです。

法定相続情報一覧図の作成方法について、例えば、配偶者と子どもが法定相続人であるケースを想定しましょう。

まず、亡くなった人の氏名と、住民票の除票に基づいて最後の住所を記入します。次に、任意ではありますが、相続人の住所を記載します。申出人になる相続人の箇所には、「申出人」と明記しましょう。最後に、作成した日、作成者の住所と氏名を記載します。有資格者に作成を依頼した場合は、弁護士や行政書士の名前が記載されることになります。

法定相続情報一覧図の提出先

相続手続きにおいて法定相続情報一覧図が必要となるケースは、具体的には、不動産の名義変更、銀行口座の解約や名義変更、証券会社の口座の引継ぎ、生命保険金の請求などです。法定相続情報一覧図があれば、相続人が一目でわかり、大量の戸籍謄本を集めて提出する必要がないので、相続手続きが迅速に進みます。生命保険金の請求に際しても、法定相続情報一覧図があれば、保険金の受取人が速やかに確認でき、手続きが迅速化されます。法定相続情報一覧図は、相続手続きを円滑に進めるために、非常に役立つ書類だと言えるでしょう。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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