はじめに
今回は、財産評価において最も重要な不動産の評価について解説いたします。土地の評価単位、路線価方式と倍率方式、自用地としての評価だけでなく、借地権、貸宅地、貸家建付地の評価方法まで理解しておきましょう。
土地の評価単位
土地は、宅地、田畑、山林、原野、雑種地など様々な地目に分けて、評価されます。地目によって評価方法が異なるからです。この地目は、登記地目ではなく、土地の現況によって判定されます。
宅地は、1画地ごとに評価されます。画地とは、宅地を利用する場合の単位となっている1区画の土地のことです。
登記上の単位を筆といいますが、1画地と1筆は異なります。2筆以上の土地が1画地となることもありますし、1筆の土地が2以上の画地に分かれることもあります。
宅地の評価方式
路線価方式
路線価とは、国税庁が路線ごとに決定した宅地1㎡あたりの価額をいいます。
路線価方式とは、その宅地が面している路線に付された路線価を基礎とし、敷地面積を乗じて評価する方式です。ただし、路線からの位置やその形状によって利用価値が異なるため、これらの状況に応じて調整を行います。
たとえば、路線価が33万円、奥行きの長さによる調整率が1.0、面積が180㎡の場合、33万円かける1かける180㎡で、5,940万円と評価されます。
倍率方式
路線価が定められていない地域では、倍率方式によって評価します。倍率方式とは、その宅地の固定資産税評価額に、国税局庁の定めた倍率を乗じて評価する方法をいいます。
宅地の上に存する権利
自用地の評価
宅地のうち、借地権による制限が無く、自分で使用している宅地のことを自用地といいます。無償で貸している宅地も自用地となります。
借地権および貸宅地の評価
借地権とは、建物を所有するために賃借した土地を使用する権利のことです。これに対して、貸宅地とは、他人に賃貸して、借地権が設定されている宅地をいいます。
借地権の評価額は、自用地としての評価額に借地権割合を乗じて計算されます。これに対して、貸宅地の評価額は、自用地としての評価額に、1から借地権割合を差し引いた割合を乗じて計算されます。
路線価図に借地権60%と記載があるケースを想定しましょう。たとえば、宅地の自用地としての評価額が3,000万円で、それを賃貸借している場合、借地権の評価額は、3,000万円に借地権割合60%を乗じた1,800万円となります。それに対して、貸宅地の評価額は、3,000万円に1から借地権割合60%を差し引いた割合を乗じた1,200万円となります。
貸家建付地の評価
貸家建付地とは、宅地の所有者が、アパートやマンションなど自ら建物を建てて、他人に賃貸している場合の宅地をいいます。
貸家建付地の評価額は、自用地としての評価額に対して、1-から(借地権割合×借家権割合×賃貸割合)を差し引いた割合を乗じて計算されます。
貸家建付地の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合) |
なお、建物を賃借する入居者が持つ権利のことを借家権といいますが、借家権割合は全国一律30%です。
たとえば、路線価図に借地権60%と記載があるケースにおいて、自用地としての評価額が3,000万円の宅地の上に自ら建物を建てて、その100%を賃貸している場合、貸家建付地の評価額は、3,000万円に、1から借地権60%かける借家権割合30%かける賃貸割合100%を差し引いた割合を乗じた2,460万円となります。
私道の評価
私道は、自分の所有する土地を道路として使用している部分のことをいいます。私道の評価額は、自用地評価額の30%として計算されます。ただし、その私道に不特定多数の人々が通行している場合には、評価額はゼロとなります。
建物の評価
家屋と構造上一体になっている設備について、たとえば、電気設備、ガス、衛生、給排水、エアコン、消火、エレベーターなどは、建物の評価額に含めて評価され、別個に評価することはありません。所得税申告において設備の減価償却費が計算されていたとしても、相続税申告では評価されないため、注意が必要です。
自用家屋
自用家屋とは、自宅や事務所、店舗など自分が所有し利用している家屋のことです。ただし、空き家も自用家屋となります。
自用家屋の評価額は、固定資産税評価額を1.0倍して計算されます。
自用家屋の評価額=固定資産税評価額×1.0 |
貸家
貸家とは、他人に賃貸している家屋のことです。
貸家の評価額は、建物の固定資産税評価額に対して、1から(借家権割合×賃貸割合)を差し引いた割合を乗じて計算されます。
貸家の評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合) |