「賢い不動産売却で老後を安心に」50代60代の資産最大化戦略:相続・事業承継を見据えて

賃貸マンションを所有していて、空室率の増加や賃料収入の減少に頭を悩ませている方、また、終の棲家としての自宅の住み替えを検討される方も多いのではないでしょうか。今回は、不動産の売却を考えるタイミングなどについて、わかりやすく解説いたします。

目次

家賃相場の変動と賃貸マンションの価値

私たち税理士は税務顧問をしていますと、賃貸マンションの経営状況を間近に見ることができます。これまで賃貸マンションは、相続税対策として建てられるケースが多かったのですが、満室経営で不動産オーナーに利益をもたらしていました。しかし、最近になって空室が出始め、家賃収入が減少し始めています。

このような状況下で、賃貸マンションの売却を検討するケースも増えてきています。不動産の売却は、経済的な観点からも合理的な選択肢となり得ます。特に、東京都内の不動産価格が依然として高騰している現状では、高値での売却によって資金を確保し、他の投資機会に転じることも考えられます。

特に、東京都内では中古マンションの価格が上昇傾向にあり、売買平均単価とマンション賃料平均単価の両方が上昇しているようです。これに伴って、賃貸マンションを売却することで最大限の利益を得ることが可能だと考えられます。売却せずに賃貸経営を継続するのであれば、家賃相場が下落リスクを考慮する必要があります。

投資家が賃貸マンションに求める表面利回りは、経済状況や金融政策によって変動します。税務顧問先の多くは、現在の表面利回りが約4%程度となっているようです。これは過去数年間のデータと比較すると低下傾向にあると言えるでしょう。2017年から2020年にかけては、5%から7%の利回りが要求されていたと聞いています。

つまり、現在の不動産市場における投資家の期待利回りが低下していると言えるでしょう。この利回りの変化は、賃貸経営の収益性に影響を与えることになります。

日本銀行のゼロ金利政策の下で低金利環境が続いている現在、不動産投資に対する関心は高まっています。このような状況下では、賃貸マンションを高値で売却し、収益性の高い他の投資へと資金をシフトさせることも一つの戦略となり得ます。

賃貸経営の将来性と売却のタイミング

賃貸経営の将来性を考える上で、賃料の低下、金利の上昇、修繕費などの経費増加が主なリスク要因となります。特に、新築時と比較して中古マンションの賃料が低くなる傾向にあり、築年数が経過するごとに賃料単価が低下することが一般的です。築年数が1年異なるだけで賃料単価は1%ほど低くなることでしょう賃貸マンションの価値は時間とともに低下するのです。

また、空室率の問題も重要です。平均的に、退去後の部屋の原状回復工事や入居者募集活動には約3ヶ月かかり、4年間のうち3ヶ月が空室となると、最低でも6%の空室率が発生することになります。

賃貸マンション経営の将来性に関しては、経済状況や市場の変動によって大きく左右されるため、オーナーは常に市場の動向を注視し、柔軟な経営戦略を立てる必要があります。

自宅の住み替え

賃貸マンションだけではありません。居住用のマンションについても、売却タイミングを考えましょう。

最近、高齢者の間で見られる住み替えの動きは、単なる住環境の変化を超えた深い社会的、経済的要因に根ざしています。現在の住まいを「終の棲家」と捉えている高齢者は意外と少なく、多くの人たちは生活の質の向上や経済的負担の軽減を目指し、よりコンパクトな住まいや老人ホームへの移住を考えています。この背景には、広い住空間が不要になる家族構成の変化、住まいの老朽化による生活の質の低下、そして体力の衰えによる日常生活の不便さがあります。郊外から都心部への引越しは特に、生活の便利さを追求する高齢者にとって魅力的な選択肢です。

住み替えを考えるタイミングとなるのは、人生の大きな転機、例えば子供の独立や定年退職などでしょう。

住み替えのプロセスは、まず新しい住まいの選定から始まり、次いで不要な家財道具の処分や整理、さらには現在の住まいの処分方法の選択に進みます。海外への移住を検討している場合は、実際に現地を訪れ、短期間滞在してみることで、現地での生活を体験し、リアルな情報を得ることが推奨されています。

高齢者が住み替えを考える際には、複数の費用面での考慮が必要です。新しい住まいを探すにあたり、特に都心部や海外などの物件は高額になることが多く、多くの場合、現在の住まいの売却から得られる資金を新しい住まいの購入に充てることになります。売却する物件の市場価値を把握するためには、不動産業者による査定が必須です。そして、新しい住まいの購入に際しては、購入費用だけでなく、不動産業者の仲介手数料、登録免許税、印紙税、不動産取得税などの諸経費も計画に含める必要があります。

不動産売却は思い切った決断もときには必要

高齢者が所有する不動産の売却は、経済的自立と生活の質の向上に資する賢明な選択です。特に、賃貸マンション経営が直面している空室率の増加や収入減少、そして都市部における不動産価格の高騰を考慮すると、市場が好況な現在、売却を決断することは理にかなっています。

売却によって得られる資金は、より管理が容易で生活の便利さを提供する新しい住まいへの投資や、老後の資金として活用することが可能です。

また、生活環境のダウンサイジングは、維持費の削減や日常生活の便利さにも寄与します。自宅の住み替えのタイミングとして、子供の独立や定年退職などの人生の節目は、新たな生活スタイルを模索する絶好の機会を提供します。所有する不動産の売却は、高齢者にとって豊かな老後生活を送るための重要な一歩と言えるでしょう。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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