一時払い終身保険とは
一時払い終身保険とは、保険料を一度に支払い、被保険者が亡くなった際に死亡保険金が相続人に支払われる保険のことです。契約者(保険料支払い者)と被保険者を被相続人とし、保険金受取人を相続人として、一度の保険料支払いで保険契約を結びます。
一時払い終身保険のメリット
一時払い終身保険の最大のメリットは、相続税対策となることです。相続発生時、被相続人の預貯金は相続財産となり、相続税が課されます。これに対して、一時払い終身保険の死亡保険金は非課税枠があるため、死亡保険金の一部が相続財産の対象外となります。
死亡保険金の非課税枠は、死亡保険金は遺族の生活を支えるためのものであるという考え方に基づき、「500万円×法定相続人の数」として設けられています。例えば、相続人が奥様とお子様2人の場合、500万円×3人=1,500万円までが非課税枠となります。この金額には相続税がかからないため、相続税対策となるのです。
また、一時払い終身保険のメリットとして、相続財産を確実に引き継がせることがあります。生命保険の死亡保険金は相続財産ではなく、受取人個人の財産となります。そのため、指定した保険金受取人に対して財産を確実に引き継ぐことが可能です。これは、遺言書と同様の効果を持ちます。
さらに、一時払い終身保険のメリットとして、相続税の納税資金を確実に準備できることがあります。相続税の申告と納税の期限は、相続開始日の翌日から10カ月以内です。「十分な預貯金があるから、税金はそこから支払えばよい」と考えている方もおられるでしょう。しかし、被相続人の遺産である預貯金の払い戻しを行うためには、相続人全員の合意が必要になります。そのため、遺産分割でもめているケースでは、遺産から相続税を支払うことが難しくなるケースもあるのです。一方、死亡保険金は、被相続人の遺産ではなく、相続人固有の財産として扱われます。そのため、遺産分割協議が成立する前であっても、保険会社に請求をすることによって、支払いを受けることが可能です。将来の相続人が負担する納税資金を確保することができることになります。
そして、一時払い終身保険のメリットとして、高齢者でも加入しやすい点があります。80歳まで加入できる商品が多く、一部の商品では90歳までの加入も可能です。これにより、年齢に関わらず保障を受けることができます。
一時払い終身保険のデメリット
一時払い終身保険のメリットとして、利回りがほとんどゼロだという点があります。現在の日銀の低金利政策により長期金利が低下しており、これが貯蓄性保険に影響を及ぼしています。利回りはほとんどゼロとして設定されており、保険会社の中には、販売を一時的に休止しているところもあります。
また、相続人同士で不平等が生じることがあります。生命保険の死亡保険金は、相続人固有の財産とされていますので、遺産分割の対象となる相続財産には含まれません。しかし、高額な死亡保険金を受け取った相続人とそれ以外の相続人との間には不平等が生じることになり、他の相続人から不満が出る可能性があるため注意が必要です。
贈与契約とは
贈与は、贈与者(あげる人)と受贈者(もらう人)の契約です。例えば、親や祖父母が子や孫に財産を贈与したい場合でも、受贈者側の同意が必要です。特に、幼い孫に贈与する場合は、親の同意が必要です。
生前に贈与するメリットは、遺産争いが発生する確率が低くなること、税負担が軽くなることです。
暦年課税による贈与
贈与税の制度には、暦年課税と相続時精算課税の2つがあります。暦年課税では、受贈者1人あたり年間110万円を超える贈与には贈与税がかかります。しかし、110万円以下の贈与は贈与税がかからず、相続財産を減らすことができます。孫にも贈与する場合は、事前に合意して契約書を書面で残しておく必要があるでしょう。
相続開始前7年以内の推定相続人に対する贈与には、相続税がかかります。つまり、亡くなる直前の5年前に110万円を贈与していたとしても、相続税の計算をするとき、その110万円は被相続人(故人)の相続財産として計上されてしまうので、110万円にも相続税がかかることとなります。
これに対して、お孫様など推定相続人以外の人への贈与には、相続開始前7年以内の贈与であったとしても相続税はかかりません。
相続時精算課税による贈与
相続時精算課税による贈与とは、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫が贈与を受けた場合、110万円を超えた部分について、2,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。2,500万円を超える金額の贈与を受けた場合でも、2,500万円を超えた部分に対して一律20%の贈与税を納付すれば済みます。
この制度には2,500万円の特別控除があり、同一の父母または祖父母からの贈与において限度額に達するまで何回でも控除することができ、2,500万円までの贈与には贈与税がかからないことになります。また、贈与税の基礎控除(110万円)を利用することができます。
一方、贈与者が亡くなり相続が開始した際には、贈与を受けた財産額のうち毎年110万円を超える部分は全て相続財産に加算され、相続税が課税されることになります。なお、既に納付した贈与税額がある場合には、相続税額から控除されます。