【相続相談事例】共有なのに長女主導の賃貸事業にする?もめ事の引き金に! 

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長女主導の賃貸事業?

Sさん(70代・女性)は、30年以上も前に夫を亡くしました。
幼い娘3人を育てることは大変でしたが、農家の長男だった夫から土地を相続し、貸家や貸倉庫を建てて、賃貸業で生活をしてきました。娘三人はそれぞれ結婚して家を離れましたので、Sさんは一人暮らしです。

それでも、すぐ近くに離婚して二人の子供を育てている次女がいるので、何かあると次女がすぐに来て手伝ってくれて、不安はありません。長女は東海地方にいて子供は3人、三女は同じ県内にいて子供1人です。
Sさんの自宅は300坪あり、庭と畑が広がっています。周辺の住宅よりも広くて目立つため、いろいろな会社から営業マンがやってきます。

いままでは特段考えていなかったのですが、昨年、相続税が変わったということで、長女が主導して取引銀行から土地活用の提案を受けています。その後、当社へはSさんと次女のふたりで相談に来られました。
聞いてみると、夫が亡くなった時、3か所の土地はSさんと3人の娘の4人で共有しています。Sさんが40%、子供たちが20%ずつという割合です。銀行の提案は、自宅を解体して20世帯の賃貸マンションを建て、自宅は最上階にするという内容です。建築費3億円は銀行が融資するので心配はないといいます。
その事業は長女が連帯保証をして引き継ぐため、次女、三女は関係しない内容で進める予定になっており、契約の段取りもできていました。

共有は難しい

ところがそれを知った次女と三女は黙っているわけにはいきません。ふたりとも、土地の共有者なのに、なんら相談なく進められていることに憤慨。
さらに相続対策といって、3億円も融資を受ける必要があるのかということが知りたいということです。

当社で診断をしてみると、土地を共有していることでSさんの持ち分が少なくすでに節税対策ができており、相続税は数百万円程度。家を持たない次女が自宅を相続するともうほとんどかからなくなります。
よって、Sさんの課題は相続税ではなく、土地の共有解消と土地活用だと言えます。いままでは娘たちは名義があるだけで、個人で使える土地ではありませんでした。しかし、このままでは、争いになりかねません。また、自宅も貸家も古くなっており、建て替えが必要な時期でもあります。
この機会に共有解消の方法を決めておくこと、自宅や賃貸事業をどうするのか全部合わせてバランスの取れる方法を選択することをお勧めしました。

このまま進めてしまうと、長女の独り勝ちのような計画ですので、相続対策で姉妹の争いの引き金を引くことになります。
Sさんはようやくこうしたことに気が付かれ、銀行の提案は一旦保留にし、当社が「相続プラン」で共有の解消、土地活用などを提案することにしました。土地を共有する娘たちそれぞれも財産として使えたり、収入になる状況にすることも提案していきます。
「姉妹で共有」は、解消するほうが望ましいでしょう。このままではいずれ、争いになります。いま、共有を解消しておくのが、ぎりぎりのタイミングでしょう。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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