【相続相談事例】夫婦ともに対策が必要。動産、貸付金が手つかず。

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夫婦ともに対策が必要

Aさんの夫は80代。数年前から難病を発症し、入退院を繰り返しています。病院ではすでに治療はし尽くしたということで、現在は自宅で生活をしており、おおよその余命宣告をされたということです。
Aさんは夫の余命が長くないと知って、いよいよ相続対策をしておかなくてはと思い、相談に来られました。

数年前にセミナーで話を聞いており、いつか、相談に行こうと思っていたということでした。夫は親から相続した財産を有価証券にしており、自分でも購入した賃貸不動産があります。
持参された固定資産税の納付書や株の明細書をもとに財産評価をしますと不動産が4物件で1億円、動産が1億6000万円となり、
合わせて2億6000万円、子供が2人あり、相続人は3人ですので、相続税は4320万円と試算されました。

一般的には、配偶者の税額軽減を適用すれば、納税は2150万円となりますが、Aさんが言われるには、自分にも財産があるということ。Aさんの財産は動産6000万円、法人への貸付金が4000万円。合わせて1億円の財産だというのです。
夫の賃貸マンション3物件と法人名義1物件があり、賃貸事業を行う法人を設立していて、現在はAさんが代表者になっています。法人で管理する物件の修繕費用を、夫名義の物件についても法人が負担し、Aさんが貸し付けてきたのでした。

手つかずの貸付金問題

夫の確定申告と法人の決算は、事業をスタートした20年前からずっと同じ税理士事務所に任せてきていましたが、修繕費が法人の負担にすることも税理士のアドバイスで、貸付金についても同様です。何年も決算書に載ったままになっていますが、アドバイスはありません。
相続対策については、現金贈与をしてはと言われ、2人の子供に310万円を贈与した程度で、それ以上のアドバイスはありませんでした。

Aさんのお話からわかったことは、2人の子供は40代で、ともに独身。長男は自宅に同居し、長女は近くで賃貸住まいをしています。二人の年齢が近くため仲が良くないこと、二人とも収入に不安があることなどいろいろと不安があるようです。

そこで、アドバイスしたことは、夫の相続税を減らす節税対策をすること、Aさんの貸付金を解消して節税対策をすること。賃貸物件を増やして子供たちに分けられる形を作り、遺言書も作成すること、などなど。いくつも課題がありますので、夫婦とも「相続プラン」を作って、方向性を決めて対策に取り掛かることを提案しましたところ、Aさんは、「ぜひ、お願いしたい」と夫婦ともにプランを作る決断をされました。

夫の体調に不安があるため、早急にまとめる約束で、ほっとして頂きました。有価証券を解約、不動産対策をすると相続税は3分の1以下になりますので、ほんとうに安心して頂けるはずです。
財産を残すことは大事ですが、そのままでは相続税も課税されます。形を変えて「家賃の入る財産」にすることで評価を下げて価値は残すことに
なります。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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