70歳から始める相続対策!家族との対話でオープンな相続を目指そう!

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家族でコミュニケーションを取ることからはじめよう

空前の相続ブームです。いままでタブーだった相続ですが、TVや雑誌が日常的に相続をテーマとした番組を放送しており、家庭のお茶の間でも話せる環境になりました。だからこそ、こうした世の中の動きがあるときをチャンスとして、家族のテーマにしておくことをお勧めします。

理想的な形は、家族で集まったときに、親から話を切り出すことでしょう。日頃から、自分の意思を明確にして、配偶者や子供に話をしておくことができればもめ事は防げます。

子供から話を切り出すなら、親のサポートを主としたテーマとして、親、きょうだいで希望を聞いたり、役割分担を決めたりするといいでしょう。相続や財産は、親のサポートの延長線上にある枝葉のことで主目的ではないと考えることが円満に進めることかもしれません。義務を果たしてこそ、権利が生まれるはずです。

それでも、相続の場合は、法律で権利が決められていて、保証されていることが争いを引き起こす現実がありますので、生前に予行演習のように、家族でコミニュケーションを取り、相続を想定した親のサポートをしながら、相続の用意が必要となります。

意思を伝えて価値を残す

相続をどのようにしていくのかは、現在、財産を所有する人の権利でもあり、責任でもあると言えます。たいていの方は、財産を配偶者や子どもに残してあげたいと考えておられます。

財産を残したいという思いのベースにあるのは「残された家族が幸せになってほしい」という願いでしょう。

財産が残ることで、生活にゆとりが持てたり、将来の不安を解消することにもつながります。身分相応で維持しやすい財産を残すことは、配偶者や子どもたちにとっても幸福なことです。

一方で、残した財産が管理が煩わしく負担となる場合や、分けられない不動産の場合で「争いのもと」になるような残し方をすれば、財産がデメリットになります。

財産を残すことはよいことのはずですが、それによって負担になったり、争いになるのであれば、むしろ残さないほうがよかったということになるかもしれません。

相続は家族の絆を深める機会にしたい

こうして考えてみると、財産を残す人の考えひとつで、家族が幸せになれる財産となりメリットを生むのか、負担になり、分けられない負の財産でデメリットにもなります。

また、相続の手続きでは、「家族の絆が深まる機会」になることもあれば、分割でもめてしまい「一生許さない絶縁のきっかけ」になることもあります。

だからこそ、相続で家族が大変にならないために、自分の意思で「自分の相続を用意しておく」ことが必要なのです。

数多くの相続の実例を見てきた経験から言えることは、相続では、配慮のある生前対策をしておくことが大切なのです。そうした相続の用意がないと、残された家族は迷い、主張し、争うことになります。

感情面にも配慮すればもめない

けれども、相続になっても残された人が円満に、不安なく、争わずに乗り切れるよう、感情面と経済面の両方に配慮しながら、対策をしておくことで、相続の価値が高まります。

それだけでなく、そうした意思を残し、対策をしてこられたご本人への感謝や評価が高まり、家族の絆が再確認できる機会となります。

そのためには相続は何とかなるだろうではうまくいきません。
生きているうちに「相続プラン」を作り、自分の意思を残すようにしてください。

 

「相続させる立場」から、意思を残して自分と家族を守る

相続では亡くなった方に対して感謝や尊敬心を持ちながら、互いに配慮して家族の絆を大切される気持ちがあると、こちらにもそうした気持ちは十分に伝わりますし、終始円満に穏やかに手続きが進みます。

そうした場面をつくるためには、家族に配慮した意思を残すことが必要です。

いざ、相続の用意をしようとするといろいろな迷いもでてくるでしょう。

・子供にはお金を知らせるとあてにされそう
・生前にお金を渡すと使われて、なくなってしまう
・親のお金をあてにするような生き方をさせたくない
・お金は最後まで渡したくない
・財産を残すともめ事になるので残さず使い切る
など

それも、自分の独断でよいかというと、それでは「意思」や「気持ち」は伝わりません。自分の考えや気持ちを話すことでもいいでしょうし、「相続する人」の考えを聞くこともいいでしょう。いずれにしても相続の用意をしておかないとうまくいきません。

「相続する立場」から、親子・兄弟の信頼関係を保つ

「相続する立場」では、いきなり相続や財産の話をするのではなく、親のサポートするために、親、きょうだいで希望を聞いたり、役割分担を決めたりする機会を持つことが大切です。相続は家族のテーマとだということです。

・ずっと自宅に住み続けたいのか
・独り暮らしになっても大丈夫か
・介護が必要になったら、誰がサポートするのか、誰にサポートしてもらいたいか
・認知症になったら、誰がサポートするのか、誰にサポートしてもらいたいか
・老人ホームなどに入るには費用は足りるのか
など

親のサポートを主としたテーマとして、親、きょうだいで希望を聞いたり、役割分担を決めたりする機会を持つことが大切です。相続は家族のテーマということです。

相続や財産は、親のサポートの延長線上にある枝葉のことで主目的ではないと考えることが円満に進めることかもしれません。義務を果たしてこそ、権利が生まれるはずです。

それでも、相続の場合は、法律で権利が決められていて、保証されていることが争いを引き起こす現実がありますので、生前に予行演習のように、家族でコミニュケーションを取り、相続を想定した親のサポートをしながら、相続の用意が必要となります。

自分や家族に合った方法は何か、考え、話し合い、探すところからはじめてはいかがでしょうか。

70代が相続対策のスタートライン

それでは、いつから、はじめるのがいいのでしょう。

「相続させる立場」の方は、”70歳”がボーダーラインのようで、考えはじめる年齢のようです。50代、60代はまくだ仕事の現役で相続の実感はなく、80代、90代になると、動きにくくなります。

親が自ら動き出さない場合は、「相続する立場」の子供たちが、なんとかしなくてはと対策を考えることになります。

認知症になると対策はできなくなる

高齢化社会になり、80代、90代の方が多くなりました。それに伴い、身体は元気だけれども意思能力が低下して、いわゆる「認知症」になる方も増えています。

「認知症」になれば、成年後見人をつけないといけないと思う方がありますが、成年後見人の役目は、本人の財産を管理し、守ることです。そうなると、相続人のための贈与や節税対策の売却、組換え、活用はできなくなります。遺言書の作成もできません。

相続税がかかり、家族がもめる不安があるとわかっていても、何もできないのはとても残念なことです。このような後悔をしないためにも、できるだけ元気なうちに、後見人をつける前に、相続対策に取り組む必要があります。

遺言書があってももめてしまう

遺言書があればもめない相続ができると思いたいところですが、現実には、「遺言書があったことでもめてしまった」ことが多々あります。

なぜなら、遺言の存在を知っていたのは相続人の一部であることが多く、また、遺言書の内容が特定の相続人に偏っているからです。

たとえば、「相続になったとき、同居する長男が亡くなった父親の遺言書を出してきた。遺言書は、“長男に全財産を相続させる”という内容だったが、他の相続人は遺言書の存在は一切知らされていなかった」というようなことがよくあります。

こうした場合、長男以外の相続人は、父親が自分の意思でその遺言書を書いたとは思わず、長男が財産を独り占めしたいために父親に遺言を書かせたとしか思いません。生前には父親から別の分与の話を聞いていたり、預貯金はみんなで分けるようにと言われていたような場合はなおさら、長男が書かせたと思うはずです。

自筆遺言書であれば、「筆跡が違う」などという疑いも出てきます。公正証書遺言であったとしても、「父親は認知症で遺言できる状況ではなかった」という指摘がされたり、裁判で筆跡鑑定や遺言の無効を主張されたりすることもあるほどです。

当然、長男に偏っていれば、遺留分減殺請求もできますので、財産を公開するようにと長男に言っても、預貯金の額を教えず、通帳なども見せないと言われることもよくある話で、最初から喧嘩腰ということさえあります。こうなると遺言書があったために、かえって悪感情を引き出してしまう結果になりかねません。

こうした現状を教訓を引き出すのであれば、「遺言書はこっそり作らない」ことが大事だということです。

いままでの遺言書は、「こっそり書いて、誰にも見つからないように隠しておく」というイメージでしたが、これではうまくいきません。争いのない相続を用意しようというのであれば、遺言書は相続人全員に作ることや内容をオープンにしておくことが必要です。これができていないとせっかくの遺言書が仇になることもあるのです。

「本人が相続人に伝えておく」ことが疑心暗鬼を引き出さない、最良の対策になると言えます。

もめない遺言書を残す秘訣

第一に、遺言書はこっそり作らないことです。誰かが作らせたという疑いはもたせてはいけません。家族全員に知らせておくべきです。

第二に、遺産分割は公平にするのが無難です。長子相続の時代は、ほとんどの財産を長男に渡していましたが、現代は、権利意識の高い次男や長女にも平等に分けるべきです。

第三に、遺留分には配慮しておくこと、付言事項を活用して理由や意思を表現しておくことです。もし、公平に分けられないときは理由を明記しておくべきでしょう。また、財産のことだけでなく、感謝や気持ちも残しておいたほうがよいでしょう。全員に向けたメッセージや思いは最良の説得材料になるのです。配慮のある遺言書があれば、もめることはありません。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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