富裕層の金融資産を目減りさせる「インフレ」が襲う!

富裕層の金融資産を目減りさせる「インフレ」が襲う!

資産目減りの脅威が富裕層を襲っている

資産目減りの脅威とは、①インフレのリスク、②マイナス金利による運用難、③相続税の増税です。

2016年、日本で初めてマイナス金利政策が導入されました。マイナス金利の影響で、ただでさえ超低金利だった預金の利息が、限りなくゼロに近づいているため、投資や消費が促されるどころか、「タンス預金」が急増しているといわれています。

タンス預金とは、金融機関に預けずに自宅に保管している現金のことですが、一説には40兆円にものぼると見られ、「貯蓄から投資へ」ならぬ「貯蓄から現金へ」の志向が強まる形となっています。資産運用どころか、資産の置きどころが難しい時代になってしまいました。

特に富裕層にとっては、日銀の狙い通り本格的なインフレ時代が到来するのか、はたまた引き続きデフレが長期化するのか、どちらに転ずるのか死活問題といっても過言ではありません。なぜなら、インフレ率は資産価値に対して大きな影響を及ぼすからです。

タンス預金増加の背景には、マイナス金利のほか、マイナンバー制度があります。マイナンバーは、社会保障や災害対策にも利用するとされていますが、特に富裕層にとっては「納税者番号」としての側面が強いように思われます。

マイナンバーの本格的運用が始まる前に、「税務当局に把握されない財産」を作っておきたいと考える富裕層が増えているということでしょう。

タンス預金増加のもう1つの背景は、相続税の増税です。2015年からの相続税の増税により、富裕層だけでなくごく一般の人が相続税の申告対象者になるご時世となりました。「かからないはずの税金がかかることになった」となれば、「何とか逃れたい」と考える人が潜在的に急増しているものと思われます。

要するに、マイナス金利下での運用難、インフレのリスク、そして相続税などの相次ぐ増税といった資産目減りの脅威が次々と富裕層を襲っているのです。

何の対策もなく漫然と放置しておくのか、資産運用と節税の両面からしっかりと対策をとるのか、資産防衛の戦略と行動力の違いが、信じられないほどの差をもたらす時代に突入したといえるでしょう。

インフレとデフレへの対応策

一般に、インフレ(物価上昇率がプラス)は現預金の価値(購買力)を減少させます。仮に日銀の狙い通り本格的なインフレ時代が到来した場合、現預金を持っているだけでは資産価値を維持することができません。

日銀の統計によれば、日本の個人金融資産の半分以上が現預金となっています。資産の大半が現預金という人は、資産の価値を維持しようと思うなら、インフレの可能性に備えて現預金の構成を見直し、ある程度有価証券・不動産などのリスク性資産を保有しておく必要があります。

反対に、デフレ(物価上昇率がマイナス)は現預金の価値(購買力)を増加させます。デフレが長期化した場合は、保有資産の大半を現預金などの安全資産にしてさえおけば、おおむね資産価値を維持することができます。

ただし注意すべきことは、一見安全のように思えても実はそれほど安全ではない資産があり、しっかり選別する必要があることです。

要約すると、資産運用については、インフレ、デフレ、どちらのシナリオになっても対応できる、柔軟な資産運用戦略をとっておくこと、もう1つは、安全資産の選別を間違えないことが重要だと考えます。

インフレに備えておきたい場合、資産をどこに置けばいいか?

今後、追加的なマイナス金利政策などによって、本格的なインフレ時代が到来する可能性もあります。例えばマイナス金利導入後、東証REIT(不動産投資信託)指数は相対的な利回りの魅力から堅調に推移していますが、マイナス金利の効果が徐々に表れて株式や実物不動産も長期的に上昇していく可能性もあります。

インフレ時は、資産を何にしておけばいいのでしょうか。インフレに強いリスク性資産(インフレヘッジ資産)の代表例は、株式と不動産です。これらの資産は、実態経済より半年ほど先行して変化する傾向があります。

マイナス金利の導入によって、株式や不動産といった資産が先行して上昇し、その後徐々に消費・投資へ資金が向かい金利も上昇していく、というのは確度の高いシナリオです。

特に株価や不動産価格が上昇する「資産インフレ」は、現預金の相対的価値を大きく低下させます。富裕層にとって現預金だけの資産構成では、相対的な資産価値が大きく目減りしてしまうおそれがあります。インフレリスクに備えてある程度リスク性資産を保有しておく必要があるのです。

たとえば、元本保全型かつ変動金利型の安全資産を7割から8割、リスク性資産を2割から3割といった資産配分にしておけば、インフレ、デフレいずれの局面でも資産価値を概ね維持できると考えています。

インフレによる目減り

まず、資産の大半が現預金という人。目減りする最大の要因はインフレです。仮に物価上昇率が3%だった場合、1000万円の現金は20年後には55%となってしまいます。

たとえば、老後の生活資金を現預金や貯蓄性の年金のみに頼っている人は、現預金はインフレによって実質的に目減りしてしまいます。

特に引退後の生活資金については長期にわたるため、インフレの影響を受けやすくなります。ライフプラン上では悠々自適な生活ができると思っていても、インフレを考慮していないと、思ったほど優雅な生活は送れないことになります。

外国為替変動による目減り

次は、資産の大半が円建てのみの金融資産という人。外貨建て資産を保有している場合に比べ、大きく見劣りしてしまう可能性があります。

例えば、日本の10年国債は、米国、およびユーロ圏の10年国債利回りと比較して、歴史的に2~3%低い傾向にあります。2~3%の複利運用の効果は、20年の間に元本の6~10割もの差になります。

さらに今後、マイナス金利の効果によって円安が進んだ場合、円資産の価値が目減りする可能性があるため、価値保全の手立てを考えておく必要があります。

税金による目減り

最後に、税金に対して無頓着な人。特に富裕層にとっては所得税と相続税の影響が大きいのですが、何の対策もとらずに漫然と多額の税金を納めている人や、税金を節約することに罪悪感を持っている人の場合です。

所得税(住民税・復興税含む)の最高税率が56%、相続税が55%ですから、富裕層にとっては、何の対策も講じないと、生きている間のフロー所得が半分になり、さらに一生かけて蓄積した税引き後の財産が死亡時に半分になるため、「二重課税効果」で財産が4分の1になってしまいます。

特に相続税は払う、払わない、を選択できる税金であるため、早期からしっかり対策を実行すれば、法的なリスクを抑えて十分節税することが可能です。何の対策もとらずに相続を迎え、残された家族が多額の税金を払わせられるといった事態は避けたいものです。

相続税対策というと、生きている間に親の死にかかわる話をするなんて縁起でもないと敬遠されがちです。しかしながら、お金にかかわる話というものは、情緒的なものではなく、経済合理的か否かで判断すべきもので、シンプルな損得勘定なのです。

相続税対策は、相続までの期間が長ければ長いほど、選択の幅が広がり、節税効果も高くなります。基礎控除額を大きく超える財産を残す可能性が高い方は、できるだけ若いうちから対策を実行しておくことが望ましいと考えます。

資産を増やすための金融商品の選び方

金融商品を選ぶ際には、「収益性」「安全性」「換金性」の3つの側面から検討するというのが原則です。仮に、元本の保全のみを考える「必要なお金」であれば、マイナス金利下であることを考えると、「収益性」は度外視して、「安全であること」「すぐに換金できること」を優先すべきです。

超低金利時代の安全資産の置きどころとしてポイントとなるのは、金利が上昇した場合でも連動して利息が増えてくれる「変動金利型」の商品を選ぶことです。

一般に、金利が低い時は「変動金利型」、金利が高い時は「固定金利型」を選択するのが原則です。固定金利型の商品では、市場金利が上昇すると価値が下がってしまいますが、変動金利型の商品であれば、市場金利が上昇すると連動して受取利息が上がってくれるため、資産価値を保全することができるからです。

「安全性」「換金性」に優れ「変動金利型」に該当する金融商品で、最初の候補となるのは「銀行預金」です。「定期預金」や利息の付く「普通預金」などは、預金保険制度によって、万が一金融機関が破綻した場合でも、預金者1人あたり、1金融機関ごとに、元本1000万円までは保護されます。したがって、この金額の範囲内であれば、有力な選択肢の1つとなります。

次に、1000万円を超える場合の資金の置きどころとして有力な選択肢となるのは、「個人向け国債 変動10年」と、証券会社版普通預金とも言える「マネー・リザーブ・ファンド(Money Reserve Fund、略称:MRF)」ではないでしょうか。

2つの選択肢の共通点は、安全性・換金性に優れ、「変動金利型」であるため、インフレ、デフレ、いずれのシナリオでもおおむね価値の保全が可能な資産であることです。

ただし、安全資産だけでの資産運用では、本格的なインフレ時代が到来した場合、相対的な価値を十分に維持することができません。

ここでいうインフレとは、必ずしも消費財の物価指数だけを目安としているわけでなく、株式、土地、海外資産といったリスク性資産が現預金と比較して大きく値上りする「資産インフレ」も含めています。

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