知っておこう!土地国庫帰属法と相続登記義務化!

2023年から、相続した土地を国庫に帰属できる制度や、相続登記の申請義務化といった制度が相次いで導入されました。ここでは、これらの新制度を解説します。

目次

相続登記の義務化とは何か

近年、土地や建物の相続登記が行われないために所有者が不明となりました土地や建物が、防災や減災、まちづくりなどの公共事業の妨げになっていますことが社会問題となっています。このように相続登記がされない原因は、これまで相続登記の申請は任意とされており、かつ、その申請をしなくても相続人が不利益を被ることが少なかったこと、相続した土地の価値が乏しく、売却も困難であるような場合には、費用や手間を掛けてまで登記の申請しようとする意欲がわきにくいことがあります。

そこで、この社会問題の解決を図るため、令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されることとなりました。義務化される日以前の相続であっても、相続登記がされていないものは、義務化の対象になります。

相続登記の義務化とは、相続が発生した際に、遺産となりました不動産について相続人名義に変更する登記を行うことが義務付けられたことです。すなわち、相続または遺贈によって不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。

また、遺産分割の話し合いがまとまった場合には、不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記を申請しなければならないこととされました。

いずれの場合でも、正当な理由がなく義務に違反した場合、10万円以下の過料の適用対象となります。

相続登記に必要となる手続きと紹介すべき専門家

相続登記の主な手続きは、戸籍謄本など全ての相続人を把握するための資料を収集したうえで、遺産分割を完了させ、法務局へ相続登記の申請することです。登記申請書に添付する書類には、遺言書が無ければ遺産分割協議書と印鑑証明書、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書といった書類があります。これらの書類を漏れなく収集し、登記申請書を適法に作成することは容易ではありません。そこで、相続登記の手続きは司法書士に代理させるケースが一般的でしょう。

自ら手続きを遂行する場合、申請書類の作成と提出を代行できる弁護士、司法書士を見つけるとよいでしょう。印鑑証明書以外の書類は、これら専門家に代理で取得させることが可能であり、手続きを円滑に進めることができるようになります。

相続登記を行う際、不動産を取得する相続人に対して登録免許税が課されます。税率はケースによって異なりますが、不動産の固定資産税評価額の0.4%です。ただし、相続人以外の人が遺言によって取得した不動産を登記する場合の税率は2%となります。

登録免許税が免税されるケースが2つあります(令和7年3月31日まで)。一つは、相続登記をします前に相続人が亡くなったケース、もう一つは、相続する土地の固定資産税評価額が100万円以下の場合です。

以上のように、相続登記には登録免許税と専門家報酬が必要となりますが、この支払いに躊躇してしまい、手続きを怠るケースが多く見られるのです。そこで、相続登記を簡易に申請できるようにするため、相続人申告登記の制度が儲けられました。これは、登記簿上の所有者について相続が開始したことと自らがその相続人であることを申し出る制度である。提出する書類は、申出をした相続人の戸籍謄本だけでよいことになっています。

この相続人申告登記の申出が行われますと、申出をした相続人の氏名・住所等が登記されることになり、相続登記の申請義務を履行したとみなされます。持分までは登記されるものではないため、法定相続人の範囲できておらず、遺産分割協議が済んでいない段階であっても、申出を行うことができます。

相続土地国庫帰属法とは何か

相続した土地について、「遠くに住んでいて利用します予定がない」、「周りの土地に迷惑がかかるから管理が必要だけど、負担が大きい」といった理由により、土地を手放したいというニーズが高まってきました。このような土地が管理できないまま放置されると、将来、「所有者不明土地」が発生することとなり、問題となります。そこで、相続又は遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。これによって、相続人が不在であるか、相続権が放棄されました場合、土地を国のものとすることができます。

ただし、すべての土地が引き取られるわけではありません。建物が残っている場合は、解体して更地にし、建物滅失登記まで済ませておく必要があります。申請した後、承認審査のために1年程度の期間をかけて調査が行われ、通常の管理費用や処分費用よりも多くの費用がかかる場合は引き取ってもらえません。また、一定の負担金の支払いが求められることがあります(原則20万円ですが、市街化農地などでは380万円になることもあります)。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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