【不動産オーナー民法トラブル】問題のある土地、欠陥住宅を買ってしまった!

目次

他人の持分がある土地だと聞いてなかった事例

他人物売買の事例です。

買主A氏は、売主B氏から土地200㎡を購入しました。

しかし、その土地のB氏の持分は4分の3(150㎡)しかなく、持分4分の1(50㎡)は、B氏ではなく、C氏のものであることが判明しました。つまり、売主B氏は他人と共有する土地を、勝手に買主A氏に対して売りつけたのです(一部他人物売買)。

この場合、A氏は土地を200㎡すべて取得できるのでしょうか?

これは一見して、売主B氏が買主A氏を騙した酷い話のように見えますが、売主B氏は買主A氏に対する債務を履行するために、自分で持分4分の1(50㎡)をC氏から買い取って引き渡せいいだけの話しです。現実的に想定できる話しでしょう。

しかし、B氏がC氏から買い取ることができず、債務不履行となった場合が問題となります。

この場合、買主A氏は、C氏の持分のことを知っているときでも、知らないときでも、売主A氏に対して代金の減額を求めることができます。また、A氏がC氏の持分があることを知らなかったときに限り、損害賠償を請求することができます。

土地を測量したら契約よりも小さかった事例

数量指示売買の事例です。

買主A氏は、賃貸アパート建築のために先行して、売主B氏との間で、「土地200㎡を1㎡単価50万円で譲渡する。」と書かれた契約を締結して(数量指示売買)、土地を購入しました。

しかし、その土地を実際に測量してみると実際には180㎡しかなく、20㎡足りないことが判明しました。

この場合、買主A氏は売主B氏に対して何を請求することができるでしょうか。

もし買主A氏が180㎡であることを知っていたのであれば、A氏にとって何ら不都合はないでしょう。単に契約書の記載ミスということになりますから、A氏は何も請求することはできません。

しかし、A氏が180㎡であることを知らなかったのであれば、売主B氏に対して代金の減額を求めることができます。また、それに伴って損害賠償を請求することができます。さらに、180㎡しかないことによって、当初予定していた賃貸アパートが建設できない最悪の事態に陥った場合には、契約を解除することができます。

抵当権が付いている土地を買って失敗した事例

抵当権の付いた土地に関する事例です。

買主A氏は、売主B氏から土地を購入しました。しかし、その土地には金融機関の抵当権が設定されています。売主B氏が債務を返済することによって抵当権が消滅すれば何も問題ないでしょう。

しかし、債務が返済されず、金融機関が抵当権を行使して競売にかけてしまいました。このような場合、買主A氏は売主B氏に対して何を請求することができるでしょうか。

買主A氏が抵当権のことを知っていたとしても、A氏は、売主B氏が抵当権を消してくれるはずだと期待していたことでしょう。しかし、土地が競売されることによってA氏の期待は裏切られ、購入した土地を奪われてしまいました。それゆえ、A氏はB氏に対して契約の解除を求めることができます。また、それに伴って損害賠償を請求することができます。

欠陥物件を買ってしまった事例

欠陥が判明した事例です。

買主A氏は売主B氏からアパート1棟を買取りました。

しかし、取得した直後に、屋根に穴があいて雨漏りすることが判明しました。買主A氏は「欠陥物件をつかませやがって!」と言って激怒しました。この場合、買主A氏はどうすべきでしょうか。

この事例では、買主A氏が雨漏りするようなひどい欠陥を知らなかった(それについて過失も無かった)のであれば、1年以内に売主B氏に損害賠償を請求することができます。

また、その欠陥によって賃貸経営することができない場合には、契約を解除することもできます。

他人の不動産を売りつけられた事例

他人物売買の事例です。

買主A氏は、売主B氏からアパート1棟を購入しました。

しかし、そのアパートの所有者は、B氏ではなく、C氏であることが判明しました。つまり、B氏は他人の不動産をA氏に売りつけたのです(他人物売買)。

この場合、A氏はアパートを取得できるのでしょうか?

これは、売主B氏が買主A氏を騙した、酷い話しなのでしょうか。いえ、B氏はA氏に対する債務を履行するために、自分でC氏から買い取って引き渡せいいだけの話しです。現実的に想定できる話しでしょう。

しかし、B氏がC氏から買い取ることができず、債務不履行となった場合が問題となります。

この場合、A氏がC氏の所有物であったことを知らなければ、契約を解除することができ、それに伴って損害賠償を請求することができます。

一方、A氏がC氏の所有物であったことを知っていたならば、契約を解除することはできるものの、損害賠償を請求することはできません。B氏がC氏からの買取りに失敗することも契約時において想定できたはずだからです。

購入した物件を引き渡してくれない事例

アパート1棟の売買契約の事例です。

買主A氏が、売主B氏からアパート1棟を1億円で購入する契約を締結し、2019年6月30日を決済日としました。

しかし、決済日の6月30日になっても売主B氏は海外旅行で遊んでおり、アパートを引き渡そうとしません。買主A氏はどうすればよいでしょうか?

これは、履行期(6月30日)を過ぎても契約の相手方が債務を履行しない「履行遅滞」という状況です。この場合、買主A氏が怒って「ふざけんな!お前からはもう買わないぞ!」ということはできません。売主B氏に対して、相当の期間を定めて引き渡しを催告しなければいけないのです。

催告しても引き渡してくれない場合、A氏は契約を解除することができます。そして、A氏はB氏に対して損害賠償を請求することができます。

それでは、B氏の不始末で火事が発生したためにアパートが燃えてしまい、アパート全部が使えなくなった場合は、どうでしょうか?

この場合、買主A氏が燃えてしまったアパートの引き渡しを催告しても、もはや意味がありません。それゆえ、A氏は催告の必要はなく、直ちに契約の解除を行うことができます。そして、A氏はB氏に対して損害賠償を請求することができます。

不動産売買契約を解除することはできるか?

不動産売買契約を解除は、解除の意思表示を行うことによって足ります。相手の承諾は要りません。一方的に相手に伝えるだけでいいのです。

解除がなされると、不動産売買契約は当初から無かったものとされ、売主と買主は、元の状態に戻す義務(原状回復義務)を負うことになります。

しかし、例外があります。転売されて登記済みのケースです。

たとえば、売主Aが土地を買主Bへ売却し、Bが代金を支払わないうちに、Cへ転売し、Cが所有権移転登記を済ましたとしましょう。買主Bの債務不履行ですから、Aは解除できるように見えます。

しかし、この場合、AはCへ土地を返すように求めることができません。第三者が登記してしまえば、どうしようもないのです。つまり、売主Aは落ち度が全くないのに土地を失ってしまいます。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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