【後継者教育】​ファミリービジネスの親族内承継を成功に導く!後継者候補への必要経験と資質とは?

親族内承継では、経営者のご子息が会社に入ってきます。一人前に後継者にするにはどのような仕事を経験させればよいか、後継者に必要な資質は何でしょうか。

目次

後継者が経験すべき仕事

後継者を入社させたとしても、その人が一人前の経営者に成長できなければ意味がありません。計画的な後継者教育を行う必要があります。

最初に必要なことは、主要事業の営業責任者の仕事を経験させることです。全ての現場を経験することは不可能でしょう。主力部署を優先して経験すべきことになります。

将来は会社のトップに就く後継者ですから、主力部署の仕事を知らずして、リーダーシップを発揮することなどできません。この主力部署に3年程度は所属し、他の社員に認められるような実績を残す必要があります。最も稼ぎやすい部署で実績を残すことができない経営者に従業員がついてくるはずはありません。

次に経営企画の仕事を経験させることです。現場の仕事を経験した後は、経営企画部の責任者、経営企画担当の役員になることです。この立場における後継者の仕事の目的は2つあります。

一つは、社長の仕事を覚えることです。経営に関する意思決定を社長の代わりに行うこととします。特に、責任の軽い経営判断は、後継者一人で現社長に頼らず行うようにし、それに伴う失敗体験もできるだけ数多く積んだほうがよいでしょう。

もう一つは、社員との人間関係の構築です。後継者は現社長のようなリーダーシップを発揮することが困難であるため、組織的な経営体制を構築するほうがよく、そのためには、後継者を中心としたコミュニケーションが円滑に行われるような組織体制を作らなければいけません。例えば、毎月1回は、後継者が主導する経営会議を開き、経営幹部の全員を参加させき、毎月の業績報告、今後の経営課題の検討を行うのです。その場では、社員に会社の将来の方向性を明確化させるべく、後継者が自ら策定した経営計画を提示します。

また、同年代の幹部社員を選抜し、自らを支える右腕人材として、彼らの意見を採り入れるようにします。現経営者を支えてきた役員・管理職は社長と同世代であり、彼らも高齢になっているはずです。そこで、内部の若手から役員・管理職を抜擢する人事を行い、彼らに後継者を支えてもらうのです。営業系で1名、管理系で1名、製造業であれば技術系で1名を選抜すればよいでしょう。後継者と同年代の新しい幹部社員を育成し、社長交代と同時期に若返りを図ります

ここで苦労するのは、現社長と同年代、後継者よりも年上の古参社員との関係性です。後継者を拒絶するケースもあるかもしれません。しかし、後継者のほうから話しかけ、積極的に教えを請う姿勢で謙虚に接すれば、必ず後継者を支えてくれるはずです。後継者の方から飲みに誘い、語り合いたいものです。

後継者に求められる資質

事業子供が社外での修行を終えて(または新卒で入社して)、自社に入った場合、何年もかけて後継者教育を行った後、どのような段階で事業承継を行うかが問題となります。これには、子供が経営者としての資質を備えたかどうかを判断することが必要です。

当初は未熟であっても、時間をかけて後継者教育を行うことで、社長職を遂行する能力と経験を備えた経営者になるまで成長させることが必要です。一人前になった社長へ事業承継を実行する際には、以下の6つの基準において合格点を取ることが求められます。

第一に、業績を上げた実績があることです。いくら肩書が社長だとして、立派な経営理念を掲げても、実績が伴わなければ、部下がついてきません。明らかに利益獲得に貢献した実績があれば、部下は安心してついていけることになるのです。それゆえ、現社長は、まだ気力や体力が十分あるうちに、後継者が実績を残すことができるようにサポートしながら、しっかり後継者教育しなければいけません。

第二に、健康で体力があることです。創業者は、24時間365日喜んで働き続けるタイプの人間だったことでしょう。経営者には、いざとなると、部下とともに徹夜も辞さないような体力があることが求められます。それゆえ、若い頃からスポーツに励み、頑強な体力作りに取り組んでおく必要があります。

第三に、明るく社交性があることです。経営者の仕事の多くは、様々な人間関係を作る仕事です。人間関係の幅を広げなければなりません。そのためには、明るく陽気で、人見知りしない性格が必要となります。いい大人なのに、初対面の相手に挨拶できない、楽しく会話ができない人見知りのタイプは不適格です。性格には生まれ持って備えている要素もありますが、訓練によって社交性を高めることが可能です。計画的にコミュニケーション能力を高めなければなりません。

第四に、リーダーシップを発揮できることです。事業の経営資源の中で最も重要なものは「ヒト」(従業員)です。従業員を動かすのは、理屈や論理ではなく、感情です。感情面で従業員に影響を与え、動機づけを行い、リーダーシップを発揮できなければ、事業を存続・成長させることはできません。

第五に、人情に厚いことです。他人のために尽力する労を惜しまない、周囲の人の幸せを考えて協力する、このような自利自他の精神によって、周囲の人の感情に影響を与え、信頼関係が生まれるのです。

第六に、現実的で柔軟な意思決定ができることです。自社の置かれている状況、経営環境を冷静かつ客観的に理解し、現実的に意思決定できることが求められます。創業者であれば事業を独善的に推進することも可能だったかもしれません。しかし、変化の激しい時代には、現実的で柔軟な意思決定が求められます。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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