上場会社の非上場化(MBO等)の株価算定に係る適時開示規則の改正

2013年7月8日に公表された適時開示規則の改正により、MBO(公開買付者が対象会社の役員である場合の公開買付け)を行う場合や、支配株主等が買付者となる公開買付けを行う場合の開示内容が拡充されました(2013年10月1日から適用)。
従前から、上場会社が上場廃止を伴う公開買付けを受ける場合や支配株主から公開買付けを受ける際等には、上場会社は意見表明に際して第三者算定機関からの株価算定書を取得して証券取引所に提出することが求められていましたが、その際に算定内容を開示するにあたっては、採用した算定方法と算定結果、その方式を採用した理由を記載すれば足りていました。
しかし、本改正後は、類似上場会社比較法であれば選択した類似上場会社とその選定理由や倍率として採用した財務指標等、DCF法であれば、前提とした財務予想の具体的な数字や割引率、残存価値の算定方法と採用した数値等の具体的な算定方法を開示することが求められることとなります。
これらはこれまで、少なくとも日本では、一般に開示されることがほとんどなかった情報です。
「(3)算定に関する事項 ②算定の概要」に係る開示・記載上の注意事項は、以下のように改正されました。

目次

3.当該公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由(3)算定に関する事項②算定の概要

・ MBO等に関して意見表明を行う場合には、算定の重要な前提条件として、市場株価法、類似会社比較法及びディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法については、以下の内容を含めて記載する。その他の算定手法については以下の内容に準じて重要な前提条件を記載する。

【1】市場株価法

・算定基準日、計算対象期間及び算定基準日が算定書作成日当日又はその前営業日でない場合には、当該日を基準日とした理由
・計算方法(終値単純平均か加重平均かの別)
・その他特殊な前提条件がある場合には、その内容

【2】類似会社比較法

・比較対象として選択した類似会社の名称及び当該会社を選択した理由
・マルチプルとして用いた指標(EV/EBITDA、PER、PBRなど)
・その他特殊な前提条件がある場合には、その内容

【3】ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法

・算定の前提とした財務予測(各事業年度における売上高、営業利益、EBITDA及びフリー・キャッシュ・フロー)の具体的な数値
※ 上場維持を前提とする場合を除く。
・算定の前提とした財務予測の出所
・算定の前提とした財務予測が当該取引の実施を前提とするものか否か
・算定の前提とした財務予測で大幅な増減益を見込んでいるときは、当該増減益の要因
※上場維持を前提とする場合は、算定の前提とした財務予測で大幅な増減益を見込んでいるときはその概要(計数を含む。)及び増減益の要因を記載し、算定の前提とした財務予測で大幅な増減益を見込んでいないときはその旨を記載する。
※「大幅な増減益」に該当するかどうかについては、各当事会社の当該公開買付け実施後5事業年度のいずれかにおいて、各々の前事業年度と比較して、利益の増加又は減少見込額が30%未満であるか否かを目安とする。
・割引率の具体的な数値(レンジ可)
・継続価値の算定手法及び算定に用いたパラメータの具体的な数値(レンジ可)
・その他特殊な前提条件がある場合には、その内容

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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