M&Aによる事業承継:経営者は親族内・従業員・第三者の選択を行う

M&A
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子どものキャリアを考える

経営者としての長いキャリアを経て、引退を考えるときが来ます。しかし、後継者が見つからないという問題に直面することがあります。

経営者も人間(親)であり、自分の子供に事業を継がせたいと考えるのは自然なことです。しかし、子供が親の事業に興味を持たず、他分野でキャリアを形成するケースが増えています。この場合、親子でのキャリア相談が重要です。

親がこれまでの経験や仕事のやりがいを共有することで、子供が事業を継ぐ意欲を持つかもしれません。子供が異なる業界で活躍している場合は、そのキャリアを尊重し、子どもにとっての最適な人生の道を考えるべきでしょう。

従業員への承継を考える

子供が承継しない場合、次に考えるべきは、企業を支えてきた従業員です。しかし、従業員が経営者としての能力を持っているかは分かりません。また、優良企業の場合、株式や事業用資産の買い取りには多額の資金が必要です。

従業員承継は、従業員にとっては大きなチャンスですが、経営者としての自信や資金面の問題が障壁となることがあります。

第三者承継を考える

最後の手段として考えられるのが、第三者(同業者など)への事業承継です。第三者に承継することで、事業は新たな経営者によって継続され、経営者は安心して引退することができます。

承継すべき経営資源は、人的資産(ヒト)、物的資産(モノやカネ)、無形資産の3つに大別されます。これらの中でも、特に無形資産の承継が最も重要です。経営ノウハウ、信用・ブランド、技術や技能、顧客情報などの無形資産は、目に見えにくく、承継が容易ではありません。これらは経営者個人の頭の中にある情報だからです。しかし、承継する相手が求めているものは、まさにこの無形資産なのです。現経営者は後継者との「対話」を通じて、これらの経営資源を明確な言葉で表現し、伝えていく必要があります。

具体的に、事業を第三者へ引き継ぐ方法として、事業譲渡、株式譲渡があります。これに加えて、廃業に伴う経営資源引継ぎも存在します。

会社の経営者であれば、会社そのものを譲渡する方法が株式譲渡、会社が持っている事業だけを譲渡する方法が事業譲渡となります。株式譲渡では、対象会社の株主が変わるだけで、会社自体は変わりません。簿外債務や偶発債務も引き継がれます。その一方、事業譲渡では、譲渡する対象資産が選別され、譲渡されなかった資産は会社に残ります。会社の株主は変わりません。

さらに、事業が継続できない場合、廃業することによって経営資源をバラバラにし、そのうち価値のある経営資源だけを譲渡することも可能です。顧客関係と従業員の雇用契約に大きな価値があるでしょう。それら価値ある経営資源を無駄にすることなく、承継することができれば、経営者は安心して引退することができるでしょう。

結論として、後継者がいない場合には、従業員への事業承継、第三者への事業承継を検討しつつ、それが難しい場合には、廃業を決断したうえで経営資源の引継ぎを検討することになります。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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