【相続相談事例】同居するなら区分登記に?!親名義でないと特例が使えない。

Aさんは父親から呉服商を引き継ぎ、経営してきました。自宅は問屋街にあり、祖父の代に自宅と会社併用の6階建てのビルを建てています。バブル経済の頃は着物の需要も増えて、自宅以外に閑静な住宅地を控える立地にも店舗を出店し、そちらにも4階建てのテナントビルを建てています。

父親の相続では長男のAさんが、自宅も会社も引き継ぎました。嫁いだ2人の姉たちには現金を渡しましたが、相続税の納税と分割金の捻出に苦労したと。Aさんは70歳になり、これからの相続が不安になってきました。呉服商は閉めて、会社も個人もビルの賃貸収入が主です。ビルは自宅がRC造、テナントビルは鉄骨造ながら、両方とも、築30年程はすぎています。

建築費のローンもなくなったので、ビルのメンテニンスのために借入をして外装を主に大規模修繕をすることを予定しています。また、次女家族が地方の転勤から戻ることになり、ビルの別フロアで同居できることになりましたので、内装もリフォームする予定です。その際、次女世帯のリフォーム代は次女夫婦で負担し、区分登記をしてはどうかと銀行から勧められています。
そこで、どうすればいいかとAさんと娘さんが相談に来られました。

現在の自宅ビルは、1〜3階がテナントが入居、4階会社、5〜6階自宅として使っています。よって、娘家族が住むのは、4階だということです。財産の確認をしたところ、相続税の申告が必要な財産だとわかりましたので、節税対策が必要になります。
ところが、4階を区分登記して、次女家族の家になってしまえば、その分はAさんの財産では無くなり、居住用の小規模宅地等の特例が使えなくなります。

1回目は配偶者が相続すればいいのですが、二次相続でも特例が活かせないため、やはり、建物の名義は区分登記をせずに、土地を所有するAさんが持っている方が得策だと判断できました。ということは、リフォーム代もAさんが負担する事が原則ですので、Aさんがローンを借りるなどすれば、節税対策ができます。
もう一つのテナントビルは会社名義ですが、同様に大規模修繕が必要な時期で法人で借入して修繕しておくことで株評価を下げることもでき、やはり、節税対策にもなります。

ただし、ビルをどのように所有し、どのように相続人に承継させていくのか相続や事業承継について、家族の話し合いをするようにアドバイスしました。せっかく同居したのに選択肢を間違えて節税できなかったとならないように、確認が必要です。
二世帯住宅にして、同居すれば節税になるためには、「親の家に同居」が前提。子どもがお金を出して、自分の家にすると、同じ同居でも節税できなくなります。ちょっとした違いのようで、税金が変わりますので、要注意です。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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