【相続相談事例】夫の連れ子は相続人ではない。自宅を渡すには遺言書で

法定相続人は実子のみになります。しかしこれまでの家族関係の中で連れ子に遺産を遺されたいという場合もあるでしょう。そうした場合の対応例を見てみましょう。

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それぞれ、連れ子がいる再婚。公正証書遺言を作っていた。

Aさん(70代女性)は、夫婦ともに再婚です。夫は死別した前妻との間に息子が2人、Aさんも先夫との間に息子が2人います。

結婚した30年前には、子供たちはそれぞれ独立しており、夫婦で仲良く生活をしてきました。

夫は、10年程前に病気を発症したこともあり、体調が落ち着いた頃に決断をして公正証書遺言を作成しました。

自宅マンションと金融資産の大部分さんにとし、2人の子どもには現金の一部を渡すという内容です。

夫婦で住んできた自宅マンションですので、自分がいなくなったときに子供たちと分割でもめずに、Aさんが住み続けられるようにという気持ちからです。

夫は今年の初めに亡くなりましたが、公正証書遺言を作っていることは夫から子どもたちに伝えてありましたので、もめる事もなく円満です。

夫の公正証書遺言には付言事項が記されており、Aさんに対する感謝の気持ちの他に「自宅マンションは将来、自分の2人の息子に渡してもらうことを希望する」と書いてありました。

Aさんが住んでいるうちはそれでよいが、相続になったら、自分の子供たちへ戻してほしいということです。

夫の連れ子は相続人ではない

Aさんは夫の籍に入っていますが、そのときにすでに成人していた夫の子供たちとは養子縁組をしていません。Aさんの相続人は、先夫の子ども二人だけで、夫の連れ子は相続人ではないのです。

夫の手続きのために、Aと夫の長男が2人で来られ、1人になったAさんのために定期的に顔を見に行っているし、何かあればすぐに行ける距離に住んでいると夫の長男は話をされていて、とても円満です。

しかし、このままでは、夫のマンションは先夫の子どもしか相続できないのです。

そこで、夫の希望を叶えるためにも、Aさんが遺言書を作成して「自宅マンションは夫の子どもに遺贈する」としておくことを提案しました。

順番として、夫の公正証書遺言で自宅マンションをAさんが相続し、名義換えしたあと、つぎに、遺贈のための公正証書遺言を作ることになります。

実子2人には現金を残すようにしたいということで、すぐに決断をされました。実子にも自分が遺言書を作る事や内容を伝えておくので、この分割で問題とないということでした。

Aさんはまだ70代で、相続は先のことですが、夫の意思を生かし、自分の気持ちも入れた遺言書作りができると、ほっとされていました。妻に渡した財産は妻の権利なので、夫の遺言書で決めることはできません。

けれどもAさんの夫のように、意思を残しておけばそれを実現してもらえます。それも夫婦の信頼関係が前提にあるからだと言えます。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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