相手はプロだ!宅建業者から不動産を買うときは要注意!8種規制とは?

宅建業者・8種規制

宅建業者が売主となり、宅建業者ではない者が買主となる売買契約においては、代金や不動産の引渡しなどで宅建業者がプロの手口で利益をぼったくってしまうおそれがあります。素人の買主が高値で買う羽目になり、損害を被ってしまう結果になります。そこで、宅建業法では、プロの宅建業者から一般消費者が買主となって不動産取引を行う場合の8種規制が設けられています。

目次

(1)損害賠償額の予定の制限

民法は、当事者間で予め債務不履行などのよる損害賠償の金額を定めておくことができるとしています。

しかし、宅建業法では、宅建業者が自ら売主となる場合、損害賠償の予定額+違約金の合計額が、売買代金(消費税含む)の20%を超えてはいけないものとされています。

(2)手付金の制限

宅建業者が自ら売主となる場合、手付金は解約手付とみなされ、売買代金(消費税含む)の20%を超えてはいけないものとされています。

(3)手付金等の保全措置

手付金等とは、手付金・中間金などの名称を問わず、契約締結日以降引渡し前に支払われる金銭で、売買代金に充当されるものをいいます。宅建業者は、原則として、一定の保全措置を講じなければ、買主から手付金等を受領してはならないものとされています。

したがって、宅建業者は、保全措置を証明する書面を買主に交付しなければいけません。

保全措置の方法には、①銀行等が連帯保証する保証委託契約、②保険会社等の保証保険契約、③手付金等寄託契約(完成物件のみ)の3種類があります。

ただし、例外があります。受領する手付金等の金額が、売買代金の20%以下であり、かつ、以下の金額以下のときは保全措置が不要とされています。

【未完成物件】代金5%以下、かつ、1,000万円以下
【完成物件】代金10%以下、かつ、1,000万円以下

(4)他人物売買

民法上、他人が所有する不動産の売買は有効であり、売主はその権利を取得して買主に移転するものとされています。これを他人物売買といいます。

この点、宅建業法では、原則として、宅建業者による他人物売買を禁止しています。ただし、例外があり、以下の2つのケースでは、宅建業者による他人物売買が可能です。

■対象物件の売買契約を締結しているとき(契約の予約でもよい)
■手付金等の保全措置が講じられているとき

(5)クーリング・オフ制度

民法では、契約を締結したならば、勝手に申込みを撤回したり、契約を解除したりできないものとされています(債務不履行があれば、契約解除権が発生します。)。

この点、宅建業者が売主である場合、買主が自由に意思表示することができない不利な場所で、強制的に契約の申込みをさせられるなど、強引に契約を強いられることがあります。

そこで、宅建業法では、クーリング・オフ制度を設け、宅建業者が自ら売主となって、宅建業者以外の者と締結した契約について、「事務所等以外の場所」で締結した場合には、買主が撤回や解除することができるものとされています。

つまり、事務所以外の場所で契約の申込みを行った場合(締結ではなく申込みです。)、クーリング・オフ制度が適用されます。

たとえば、喫茶店・レストランなどのお店、宅建業者が申し出た場合の買主の自宅や職場、仮設小屋など一時的で移動可能な施設での契約申込みです。

すなわち、宅建業者は、法定事項を記載した書面を交付し、クーリング・オフができる旨およびその方法を告げなければいけません。そして、告げた日から起算して8日を経過したとき(翌週の同じ曜日)まで、買主は解約できることができます。8日経過した後は解約することはできなくなります。

ただし、物件の引渡しを受け、かつ、代金全額を支払ったときは、買主は解約することはできません。

クーリング・オフによる解約の申し出は、書面によって行うことが必要です(口頭ではダメです。)。

宅建業者の事務所等に買主が出向いて契約を締結した場合、これは買主が購入を決意していると思われるため、クーリング・オフ制度は適用されません。また、買主が自ら宅建業者を自宅や職場に招いた場合も、クーリング・オフ制度は適用ありません。

(6)瑕疵担保責任特約の制限

民法では、隠れた瑕疵があった場合、善意無重過失の買主は、瑕疵発見から1年以内に、売主に対して瑕疵担保責任を追求することができるものとされています(売主の無過失責任)。

この点、宅建業法では、原則として買主に不利な特約を付すことはできないものとされつつも、例外で、特約を「引渡し日から2年以上の期間」と定めることができるものとしています。

ただし、新築住宅については、住宅の品質確保の促進等に関する法律があります。これによれば、新築住宅の構造耐力上主要な部分(柱や梁など)と雨水侵入防止する部分について、引渡し時から10年間の瑕疵担保責任を負うものとされています。

(7)割賦販売契約の解除の制限

割賦販売契約とは、不動産の引渡し後、1年以上の期間にわたり、かつ、2回以上に分割して代金を受領することを条件して販売する売買契約をいいます。

民法では、買主が代金支払いしないときは、売主は相当の期間を定めて催告しなければ、契約を解除することができないものとされています。

この点、宅建業法では、宅建業者が自ら売主となった場合、割賦金の支払いが行われないときであっても、30日以上の期間を定めて、かつ、支払いを書面で催告しなければ、契約解除や残金一括請求できないものとされています。

(8)割賦販売における所有権留保の禁止

宅建業者が自ら売主となって割賦販売契約を締結した場合、原則として、目的物を買主に引き渡すまでに、登記などの売主の義務を履行しなければならないものとされています。残金を担保するために所有権留保すると、二重売買のおそれがあるからです。

ただし、例外があります。宅建業者が受領した代金が30%以下である場合、30%を超えて受領していても買主が抵当権の設定登記など保全措置を講じる見込みがない場合には、所有権留保することができないものとされています。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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