不動産を売却したときの税金はいくらか?譲渡所得の特例を理解しよう!

確定申告
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土地・建物の譲渡所得の計算

不動産を売却したことによって生じた所得を譲渡所得といいます。譲渡所得は、他の所得と分離して所得税及び住民税が課されます。

土地建物を譲渡した場合の所得は、所有期間が5年超の長期譲渡所得と、所有期間が5年以下の短期譲渡所得に分けられます。この際の所有期間は、譲渡した年の1月1日現在において、所有期間が5年以下か、5年を超えるかにより判断します。この区分によって、以下の図表のように、税率が異なる。

  短期 長期
期間 5年以下 5年超 10年超(軽減税率の特例)
居住用 39.63%

(所得税30.63% 住民税 9%

20.315%

(所得税15.315% 住民税 5%)

①課税譲渡所得6,000万円以下の部分14.21%

(所得税10.21%・住民税4%)

②課税譲渡所得6,000万円超の部分20.315%

(所得税15.315%・住民税5%)

非居住用 39.63%

(所得税30.63% 住民税 9%

20.315%

(所得税15.315% 住民税 5%)

取得費とは、譲渡した土地や建物を購入したときの購入代金、購入時の仲介手数料(売却時の仲介手数料は譲渡費用です。)、登録免許税や不動産取得税のことをいいます。建物の場合は、減価償却累計額を控除した金額です。ただし、譲渡収入金額の5%を取得費とすることもできます(概算取得費)。

居住用財産の譲渡に係る3,000万円特別控除の特例

マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除することができます。これを、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例といいます。

(適用要件)

マイホームの適用要件 ①現在住んでいる自宅を売却すること

②居住用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までに売却すること

③家屋を取壊した場合は、上記②の範囲内で、家屋を取壊した日から1年以内にその敷地の売却に関する契約が締結されていること(取壊し後、敷地を賃貸その他の用に供した場合には不可)

④転勤等で単身赴任の場合、配偶者等が居住している家屋を売却すること(但し、2つの家屋を所有する場合は、主たる居住用家屋のみ)

その他の適用要件 ①共有の居住用財産を譲渡した場合、共有者の持分の範囲内において各人毎に適用することができる

②住宅ローン控除、特定居住用財産の買換え特例との重複適用はできない

③譲渡する相手が、譲渡者の配偶者や親・子など直系血族、生計を一にする親族、同族会社等でないこと

④3年に1度しか適用することができない。

期間の要件 所有期間及び居住期間に関する要件はない

空き家の譲渡所得3,000万円特別控除

相続した空き家の建物やその敷地について、一定の要件のもとで譲渡した場合、譲渡所得の計算において3,000万円を控除することができます。

(適用要件)

・1981年5月31日以前に建築された被相続人の居住用財産であること。
・区分所有建物ではないこと。
・相続開始日から3年後の12月31日までに譲渡すること。
・譲渡対価が1億円以下であること。
・相続開始日から譲渡日までの間に、家屋と土地を居住・事業・貸付のいずれにも使用していないこと。

居住用財産の譲渡に係る軽減税率の特例

自分が住んでいたマイホーム(居住用財産)を売って、一定の要件に当てはまるときは、長期譲渡所得の税額を通常の場合よりも低い軽減税率で計算することができます。

ここでの譲渡所得は3,000万円特別控除を適用した後の金額です。その際、譲渡所得が6,000万円超の部分の税率は20.315%ですが、6,000万円以下の部分の税率は14.21となります

(適用要件)

マイホームの適用要件 ①現在住んでいる自宅を売却すること

②居住の用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までに売却すること

③家屋を取壊した場合は、上記②の範囲内で、家屋を取壊した日から1年以内にその敷地の売却に関する契約が締結されていること(取壊し後、敷地を賃貸その他の用に供した場合には不可)

④転勤等で単身赴任の場合、配偶者等が居住している家屋を売却すること(但し、2つの家屋を所有する場合は、主たる居住用家屋のみ)

その他の適用要件 ①共有の居住用財産を譲渡した場合、共有者の持分の範囲内において各人毎に適用することができる

②住宅ローン控除、特定居住用財産の買換え特例との重複適用はできない

③譲渡する相手が、譲渡者の配偶者や親・子など直系血族、生計を一にする親族、同族会社等でないこと

④3年に1度しか適用することができない。

期間の要件 譲渡した年の1月1日で建物と土地の所有期間がともに10年を超えていること。

居住用財産の買換え特例

特定のマイホーム(居住用財産)を売って、代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます(譲渡益が非課税となるわけではありません。)。これを、特定の居住用財産の買換えの特例といいます。

たとえば、1,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、7000万円のマイホームに買い換えた場合には、通常の場合、4,000万円の譲渡益が課税対象となります。ここで特例の適用を受けた場合、売却した年度において譲渡益への課税は行われず、買い換えたマイホームを将来譲渡したときまで課税が繰り延べられるのです。つまり、課税を将来に飛ばしているのです。

また、売却代金よりも小さい金額でマイホームを買い換えた場合については、売却代金と買い換えた金額の差額を収入金額として譲渡所得の金額の計算を行います。つまり、【譲渡価格 > 買換資産】の場合、差額(=譲渡価格-買換資産)にのみ課税され、残りの部分の課税は繰延べられます。

(適用要件)

マイホームの適用要件 ①現在住んでいる自宅を売却すること

②居住の用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までに売却すること

③家屋を取壊した場合は、上記②の範囲内で、家屋を取壊した日から1年以内にその敷地の売却に関する契約が締結されていること(取壊し後、敷地を賃貸その他の用に供した場合には不可)

④転勤等で単身赴任の場合、配偶者等が居住している家屋を売却すること(但し、2つの家屋を所有する場合は、主たる居住用家屋のみ)

⑤譲渡価額が1億円以下であること

買換え資産の要件 ①譲渡年の前年1月1日から譲渡年の12月31日までに取得すること

②買換え資産を取得した日から譲渡年の翌年12月31日までに居住の用に供すること

③家屋の床面積50㎡以上(登記簿面積)かつ土地の面積500㎡以下

④中古のマンション等の耐火建築物は、新築後25年以内のもの又は新耐震基準に適合していることが証明されたものや、既存住宅売買瑕疵保険に加入している一定のものであること(木造は制限なし)

その他の適用要件 ①共有の居住用財産を譲渡した場合、共有者の持分の範囲内において各人毎に適用することができる

②住宅ローン控除、3,000万円特別控除、10年超の軽減税率の特例との重複適用はできない、前年又は前々年において3,000万円特別控除、10年超の軽減税率の特例を適用していた場合も適用できない

③譲渡する相手が、譲渡者の配偶者や親・子など直系血族、生計を一にする親族、同族会社等でないこと

期間の要件 譲渡した年の1月1日で建物と土地の所有期間がともに10年を超えていること。

居住期間が通算10年以上であること。

居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

個人が、土地又は建物を売却して譲渡損失が生じた場合には、その損失を他の土地又は建物の譲渡所得の金額から控除できます。しかし、その控除を行ってもなお控除しきれない譲渡損失があったとしても、事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することはできません。

この点、長期譲渡所得に該当する場合で居住用財産を譲渡したときに生じた譲渡損失については、一定の要件を満たす場合に限り、譲渡をした年に事業所得や給与所得など他の所得との損益通算をすることができます。さらに、これらの通算を行ってもなお控除しきれない譲渡損失については、その譲渡の年の翌年以後3年間にわたり繰り越して控除することができます。

この特例が適用できるケースは、住宅ローンが残っているときです。住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る価額で売却して譲渡損失が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除することができます。

この特例を、特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例といいます。この特例は、新たなマイホーム(買換資産)を取得しない場合であっても適用することができます。

この特例で損益通算できる金額は、以下のうちいずれか少ない金額となります。

①譲渡所得の計算上生じた損失の金額
②譲渡資産に係る住宅ローン残高から譲渡資産の譲渡対価の額を控除した額

(適用要件)

マイホームの適用要件 ①現在主として住んでいる自宅を売却すること

②居住の用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までに売却すること

③家屋を取壊した場合は、上記②の範囲内で、家屋を取壊した日から1年以内にその敷地の売却に関する契約が締結されていること(取壊し後、敷地を賃貸その他の用に供した場合には不可)

④転勤等で単身赴任の場合、配偶者等が居住している家屋を売却すること(但し、2つの家屋を所有する場合は、主たる居住用家屋のみ)

⑤譲渡したマイホームの売買契約日の前日において、償還期間10年以上の住宅ローン残高があること

⑥譲渡損失が生じて、居住用財産の譲渡価額が住宅ローン残高を下回っていること

買換え資産の要件 なし
その他の適用要件 ①共有の居住用財産を譲渡した場合、共有者の持分の範囲内において各人毎に適用することができる

②繰越控除を受ける年の所得金額が3,000万円以下であること(ただし、損益通算を行う年は所得金額の制限はない)

③譲渡する相手が、譲渡者の配偶者や親・子など直系血族、生計を一にする親族、同族会社等でないこと

期間の要件 譲渡した年の1月1日で建物と土地の所有期間がともに5年を超えていること。

居住期間の制限はない。

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

譲渡損失の損益通算と3年間繰越控除の特例を適用ができるもう一つのケースは、マイホームを買い替えた場合です。すなわち、マイホーム(旧住居)を売却して、新たにマイホーム(新住居)を購入した場合で、旧住居の譲渡による損失が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。また、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除することができます。この特例を、居住用財産の買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例といいます。

(適用要件)

マイホームの適用要件 ①現在主として住んでいる自宅を売却すること

②居住の用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までに売却すること

③家屋を取壊した場合は、上記②の範囲内で、家屋を取壊した日から1年以内にその敷地の売却に関する契約が締結されていること(取壊し後、敷地を賃貸その他の用に供した場合には不可)

④転勤等で単身赴任の場合、配偶者等が居住している家屋を売却すること(但し、2つの家屋を所有する場合は、主たる居住用家屋のみ)

⑤譲渡価額が1億円以下であること

買換え資産の要件 ①譲渡年の前年1月1日から譲渡年の12月31日までに取得すること

②買換え資産を取得した日から譲渡年の翌年12月31日までに居住の用に供すること

③家屋の床面積50㎡以上(登記簿面積)

その他の適用要件 ①共有の居住用財産を譲渡した場合、共有者の持分の範囲内において各人毎に適用することができる

②繰越控除を受ける年の所得金額が3,000万円以下であること(ただし、損益通算を行う年は所得金額の制限はない)

③譲渡する相手が、譲渡者の配偶者や親・子など直系血族、生計を一にする親族、同族会社等でないこと

期間の要件 譲渡した年の1月1日で建物と土地の所有期間がともに5年を超えていること。

居住期間の制限はない。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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