【相続相談事例】ストレスをかかえる二世帯住宅は悲劇。ほどよい距離が必要なことも。

【相続相談事例】ストレスをかかえる二世帯住宅は悲劇。ほどよい距離が必要なことも。

二世帯住宅でも不安な祖父母のケース

Mさん(70代男性)は妻と長男(40代)家族(嫁と孫2人)と同居しています。

今の自宅は父親から相続したものですが、建物が古くなって建て替えるときにそれまで賃貸だった長男と相談し、二世帯住宅を建てて同居を始めました。

Mさんの子どもは他に長女、次女がいますが、それぞれ配偶者と子どもが2人いて別のところが生活しています。

建物を建てるときに3000万円かかりましたので、Mさんが自己資金で1000万円を出し、長男は2000万円を銀行ローンで調達しました。

建物の登記はMさん3分の1、長男3分の2とするのが本来の持分ですが、融資した銀行の担保評価の都合で、建物の名義は長男だけとするようにという条件が出されました。

致し方なくそのとおりにし、建物は長男の単独名義になりました。

Mさんも70代後半になり、妻よりも自分が先になったことを考えると建物に名義がないと、妻が追い出されるのではないかと不安です。

また、急な病気でも見つかり、長男が先に亡くなってしまうようなことがあると、建物は未成年の孫ではなく嫁の名義になると思われるため、やはり不安です。

それもこれも、Mさんは嫁のことが信用できないというのです。嫁の実家は車で30分ほどのところにあり、嫁の母親が品は頻繁に来ては2人の孫に会って帰ります。

孫は、同居する自分たちとは挨拶程度しかしないのに、嫁側の親はとにかく一日おきくらいにも来ている状況で、家が嫁の名義になれば、自分たちは追い出されるかもしれないと不安です。

しかも、かわいいはずの孫も、まったく話をしない嫁に似て、2階に住んでいるのに寄ってもきません。

Mさんには、いろいろな不安があり、安心して生活することができません。二世帯住宅で幸せに暮らすにはどのようにすればよいでしょうか。

正しい二世帯住宅のあり方を考えてみましょう。そのためには、二世帯住宅を設計や建築から考える必要があります。

二世帯住宅の3つのタイプ

二世帯住宅と言っても様々なタイプがあり、簡単な話ではありません。二世帯住宅は次の3つのタイプに大別されます。

1)完全同居型の二世帯住宅
2)部分共用型の二世帯住宅
3)完全分離型の二世帯住宅

これらはどのような住宅なのか、メリットとデメリットを解説いたします。

完全同居型の二世帯住宅

完全同居型の二世帯住宅は、通常の一戸建て住宅の中に、二世帯が同居するタイプです。この内部では、玄関から内部設備まで、すべてを二世帯で共有することになります。

このタイプのメリットは、他の二世帯住宅と比較して建築費用が安いこと、将来一世帯となった場合に対応しやすいことです。ハウスメーカーが最初に提案するものでしょう。

これに対して、このタイプのデメリットは、プライバシーが確保しづらいこと、電気、ガス、水道、電話代などの公共料金を世帯別に把握しづらいことです。二世帯の生活を一体化せざるを得ません。

部分同居型の二世帯住宅

部分共用型の二世帯住宅は、玄関は一緒であるものの、各階に各世帯が居住しているタイプです。

たとえば、1階は親世帯、2階は子世帯というように居住空間が階ごとに独立しており、トイレやお風呂、キッチンといった内部設備を別々に設けます。

このタイプのメリットは、同居ではないものの、一部の生活空間を一緒にすることで比較的距離の近い暮らしができること、完全分離型と比較し、建築費を抑えることができることです。

これに対して、このタイプのデメリットは、電気、ガス、水道、電話代などの公共料金を世帯別に把握しづらいこと、完全分離型と比較して、プライバシーが確保しづらいことです。

完全分離型の二世帯住宅

完全分離型の二世帯住宅は、一つの建物に玄関を2ヶ所設置し、内部の設備も世帯ごとに2つに分かれているタイプです。各階もしくは各棟にて各世帯が居住することになります。

このタイプのメリットは、生活動線が別々なのでプライバシーの確保がしやすいこと、電気、ガス、水道、電話代などの公共料金を世帯ごとに把握することができることです。

また、分離しながらも隣同士である家族の安心感はありますし、半分を賃貸として使う選択肢があることも有用です。

これに対して、このタイプのデメリットは、設備を完全に分けるため、建築費用が高くなることです。玄関を2つ設置する分、余計なスペースを必要とすることになります。

二世帯住宅のメリットとデメリット

二世帯住宅のメリット

二世帯住宅のメリットは建築費用でしょう。二世帯住宅では複数の家族が一緒に暮らすため、ある程度の広さの建物が必要になりますから、建築費用が高くなります。

しかし、住宅を2棟建てたり、お互いに部屋を借りて住むことような状況と比べますと、建築費や家賃は安くなるはずです。

また、電気や水道などの公共料金についても、基本料金を各家庭が払うよりも、二世帯で1つにまとめたほうが節約することができるでしょう。

共働きの子世帯であれば、同居している祖父母に、家事や子育てのサポートを受けられ助かるという安心感を得ることができます。

二世帯住宅のデメリット

二世帯住宅に住むデメリットは、家族の距離が近すぎることでしょう。世代の異なる二世帯が同居するため、食事や入浴、就寝時間といった生活習慣や価値観の違い、訪問客の受け入れなどが原因で、家族間のトラブルが生じることがあります。

また、家族間の関わりが増えてきますと、お互いにプライバシーを確保しにくくなり、二世帯住宅に住むことで、親子でも気を遣う場面が増えたと感じる人もいるようです。

二世帯住宅は、それなりの広さや設備が必要なため、一般的な一軒家に比べて建築コストは少し割高です。

二世帯住宅の建築費用

一般的に、完全同居型、部分共用型、完全分離型の順に、建築費用は高くなると考えられます。

設備のグレードや工法、建築業者によっても当然に費用額は変わってきますが、坪単価での費用の目安は、概ね以下のようになります。

完全同居型:坪単価 60万円
部分共用型:坪単価 85万円
完全分離型:坪単価 100万円

部分共用型について見ますと、その工事の方法によって建物の建築費用が変わってきます。

木造軸組工法であれば、坪単価85万円で工期は半年くらい、ツーバイフォーであれば、坪単価70万円で工期は3ヶ月くらい、鉄骨造であれば坪単価100万円で工期は半年、鉄筋コンクリート造(RC造)であれば、坪単価110万円で工期は半年くらいになるでしょう。

二世帯住宅は、新築の建売住宅として売られていることがほとんどありませんので、相続対策も考えて、親子がオーダーメイドの注文住宅として建てる場合が多いでしょう。

建物の建築費用は高くなりますが、もともと親の持っていた土地に二世帯住宅を建てるケースも多く、土地の購入費用がかからない分、建築費用に多くの資金をかけることができます。

完全分離型の二世帯住宅の設計の秘訣

二世帯住宅に関してよく聞く悩みで、嫁の親と同居する夫の生活に関するものがあります。

このような夫の悩みとして、「一人になれる時間・場所がない」というものがあります。

このような二世帯住宅の場合、完全分離型の二世帯住宅であれば、上下階で独立した空間であるため、マンション上下階のように別世帯と考えてもよさそうなものです。

しかし、1階に住んでいる夫婦は、上に嫁の親が住んでいるというだけでプレッシャーを受けることになります。

筆者のお客様では、このような状況において、1階から屋上へ直接登ることができる階段を設けることで、悩みを解消されていました。1階から2階を超えて屋上に直行することができるのです。

「屋上は太陽光パネルと家庭菜園にも使っていますが、富士山が見え気持ちのよい場所なので、1階から2階の親世帯を通らなくても、3階の屋上へ直接上がれる設計にしています」とのこと。

屋上が、夫の独りになる時間、寛ぎのスペースとなっているとのことです。

また、「親の介護が必要になったときには、上下階を交代しようと話しています」とのこと。

居住者の状況によって、住み方を変えることができるのも、二世帯住宅の上手な活用方法と言えるでしょう。

二世帯住宅で親子が仲良く暮らすために

上述のお客様の話の続きですが、嫁のお父様の意見も同様、「お互いに干渉し合わない、自分の事は自分でやるというスタンスが仲良く暮らす秘訣です。」という話を聞かせてもらいました。

こちらのご家族は、娘が3人いました。お母様によれば、娘との同居は本当にうれしいとのこと。一般的に、娘は結婚して家を出ていきます。

しかし、二世帯住宅を建てることで、娘夫婦と一緒に住むことができ、安心して老後を過ごすことができているのです。

お孫さんたちと頻繁に会うことができることも、親夫婦にとって大きな幸せでしょう。三世代のつながり、祖父母と孫との交流を楽しんでいるご様子した。

一方、奥様によれば、お母様が娘夫婦の健康状態に気を遣ってくれること、いざというときに、子どもを預かってもらったりして助けてもらったりすることで、生活しやすい環境だとおっしゃっています。子育て中の奥様にとっても、二世帯住宅のメリットは多いようです。

一般的に、うまくいく二世帯住宅の秘訣は、近居から同居へと、段階を踏んで関係を近づかせていることです。

完全分離型の二世帯住宅が最適

また、二世帯住宅の建築も完全分離型として、親世帯と子世帯それぞれが独立して生活していることです。

ケースバイケースではありますが、建築費用の負担が重くならないかぎり、完全分離型とすることが二世帯同居を成功させる秘訣のように思われます。

加えて、親は子供夫婦に干渉しすぎない、娘は母親の世話に依存しすぎないことも重要です。自立した生活と人間関係が、円満同居の秘訣となります。

祖父母との同居する際の問題点

二世帯住宅では祖父母と同居することになり、トラブルが生じることも多々ありますが、その際の問題点は以下のとおりです。

二世帯住宅における経済面での負担増加

第一に、経済面での負担が増加することです。

祖父母と同居しますと、家賃や光熱費などの公共料金、料理を一緒に作ることで食費を節約することができます。

しかし、同居することが全面的にお得とは言えないことがるのです。一番注意していただきたい費用が、国民健康保険料です。

国民健康保険料は、各市町村の財政状況によって決定されるため、財政が苦しい地方のほうが高くなる傾向があります。健康保険料が高い自治体の場合、一年前と比べて年間10万円も支払額が増えるケースもあると言われています。

もし3世帯同居を始めた場合、子供夫婦の年収に、祖父母の年収が加算され、健康保険料が上がる可能性もあるのです。これには注意が必要でしょう。

また、子どもの保育料が高くなることも考えられます。認可保育園に支払う料金は、「同居世帯の中で最も収入が高い人を基準にして計算する」方法が多く採られています。

そのため、二世帯同居で祖父母の所得が子供よりも高いのであれば、保育料が高くなるケースもあるのです。

そして、子供夫婦の関係が悪くなり、配偶者と離婚した後に三世帯同居を始めた人に伴う問題があります。

児童扶養手当は、年収160万円までの一人親世帯に対して毎月最大4万2500円(子1人の場合)が支給されます。

しかしながら、親と同居しますと、祖父母の収入額が合算されるため、160万円の上限を超えてしまい、手当の支給が停止される可能性があるのです。

二世帯住宅における精神面での負担増加

第二に、精神面での負担が増加することです。

筆者のお客様の例ですが、シングルマザーの25歳の女性で、2人目の子どもが生まれてすぐに50歳の祖母の家に引っ越した方がいました。彼女も祖母も働いており、子供は保育園に預けていました。

しかし、こうした生活を続けていくうちに、夜泣きがひどいゼロ歳の赤ちゃんと、元気で活発すぎる3歳の息子の世話に、親子2人とも疲れ果ててしまいました。

そのうち、祖母は、「母乳が出ないのは仕事しすぎだからよ。離乳食も料理も下手くそ。そんな女だから、あなたは夫に逃げられるのよ!」などと暴言を吐くようになりました。

また、「男の子は厳しく育てないといけないのよ!」と息子にも手を上げるようになりました。

悲しい話ですが、祖母が孫に対して暴力を振るうケースは、意外と多く見られることだと言われています。

以前、50代の若い祖母が、3歳の孫娘の首にコードを巻きつけて絞殺しようとした事件がありました。

また、インターネットで「孫 虐待」と検索しますと、祖父母の孫に対する暴力についての相談が多く表示されてきます。

同じ家族、親子だとしても、教育方針の違いや、世代間の考え方の相違が大きいがゆえに、このような悲しいトラブルが生じるのでしょう。

二世帯住宅における育児と介護の二重ケア

第三に、育児と介護の二重ケアが発生することです。

これも筆者のお客様のケースですが、40歳のある女性は、最高の子育てを目指すために、夫の母親の実家を頼って北海道に移り住みましたが、その直後に義母が脳梗塞で倒れてしまいました。

脳梗塞の高齢者を受け入れてくれる施設がなかったため、彼女は仕事を辞めて、子供の育児と義母の介護の両方を行うことになったのです。

彼女の話では、「私の実家ではないから、近所に親戚や友達もいない。3歳の娘の世話だけでも負担が大きいのに、義母の介護までやらされることになった。仕事を辞めたので、保育園に預けることもできなくなった。それでも、祖母は私たち夫婦の子育てを助けようとしてくれたから、その責任も感じて、義母を放り出して東京に戻るようなことはできない。」とのことでした。

昔と比べて、子育てをとりまく家族の状況が大きく変化しています。時間的、金銭的余裕などの状況が異なっていますから、誰でも祖父母との同居・近居が理想的だというわけではありません。二世帯住宅が誰にとっても最適だと勧められるものではありません。

そして、祖父母、子供夫婦、孫の三世帯同居は、居住費用を安くすることで、生活の負担を軽くすると必ずしも言い切れるものではありません。メリットとデメリットを比較検討する必要があります。

二世帯住宅を建てたけど離婚するケースもある

結婚したときは、夫婦関係と親子関係は、いずれも良好です。新婚夫婦は、いきおい義両親と一緒に暮らすために二世帯住宅を建てることがあります。

しかし、実際に生活を始めてみると、こんなはずではなかった!と後悔することがあるのです。我慢も限界になれば、離婚や同居解消も考えることもあります。

筆者のお客様のケースを紹介しましょう。銀行借入金が残っていても、離婚した女性がいます。

この方は、離婚した元夫の希望で、義両親・義祖父母との同居をはじめました。新婚ではありましたが、賃貸では家賃を支払うのがもったいないという理由だったようです。

その際、建物にかなり大掛かりなリフォーム工事を行いました。地方都市の大きな家でしたので、リフォーム費用は高額であり、新築一棟が建つくらいの大きな費用がかかりました。

リフォーム費用は、義両親が半分を負担しましたが、残り半分の費用は、ご夫婦で負担することとなり、銀行借入金を返済することとなりました。

銀行借入金の名義について、夫一人では借りられず、この女性と元夫の二人の名義で借りようとしていたところ、この女性は勤務していた会社を退職したばかりであったため、名義人になることができませんでした。結果として、元夫と義父の共同名義で、銀行借入金を行ったのです。

リフォームをして、キッチンをご夫婦のスペースにつけたのですが、夕飯はほぼ毎日、義両親と一緒に食べていました。

お風呂も一つしかなく、義両親の生活スペースである一階にご夫婦の部屋があったので、気軽に声をかけられてしまい、奥様の気が休まることがありませんでした。これが問題だったようです。

しかし、出産して育児が始まると、義両親との接触が多くなり、奥様は精神的に病んでいきました。仮に夫が精神的にも頼れる存在であり、夫婦関係が良好でしたら、奥様が病んでしまうことはなかったでしょう。病院での診断は、適応障害だったとのことです。

適用障害となり、我慢できなくなったこの女性は、同居の解消を求めたのです。しかし、元夫は猛反対し、辛い気持ちを理解してくれません。

この女性は、1歳になったばかりの娘を連れて、自分の実家に戻りました。離婚協議はすんなりとはいきませんでしたが、数か月後に離婚が成立しました。

リフォーム費用の銀行借入金が30年くらい残っていたため、離婚した元夫が返済を続けることになりました。

二世帯住宅、ほどよい距離の大切さ

二世帯住宅は、円満な生活スタイルのように思いたいところですが、人間関係が円満でないと、ストレスをかかえることになります。

特に義父母と一緒に暮らす奥様の精神的な負担は、想像以上に大きなものです。ストレスをかかえる二世帯住宅であれば、日々の生活が豊かで幸せだとは言うことはできません。

スープの冷めない、ほどよい距離が必要だと言われることがあります。お互いの精神的な安定を維持できる、ほどよい距離感を確保すること、これが二世帯住宅で幸せに暮らす秘訣だと言えるでしょう。

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