実家の売却で税金はいくら取られるのか?土地の取得費がわからない場合の対応策

実家の売却で税金はいくら取られるのか?土地の取得費がわからない場合の対応策

相続した実家を売却する際に心配になるのが、いくら税金を取られ、手取りがいくらになるのかということです。しかし、親が土地をいくらで購入したかなど、記録に残っているはずがありません。取得費がわからない場合の対応策を説明します。

親から相続した土地の取得費は、親が購入した金額

譲渡所得の金額は、売却金額(譲渡収入)から必要経費を差し引いて計算します。必要経費とは、不動産を購入したときの取得費、売却時に宅建業者に支払った仲介手数料などの費用です。

譲渡所得 = 譲渡収入 ― (取得費 + 譲渡費用)

この点、相続した土地の取得費は、相続税評価額ではないのか、そうであれば、譲渡所得の金額は、それほど大きなものにならないはずだと思うかもしれません。

しかし、実家を相続した場合(または贈与を受けた場合)、その取得費は、親が当大昔に購入したときの購入金額を引き続くことになります(所得税法60条)。

所得税法 第60条(贈与等により取得した資産の取得費等)

1 居住者が次に掲げる事由により取得した前条第一項に規定する資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす

① 贈与、相続又は遺贈
② 前条第2項の規定に該当する譲渡

2 居住者が前条第1項第1号に掲げる相続又は遺贈により取得した資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が当該資産をその取得の時における価額に相当する金額により取得したものとみなす。

譲渡所得の計算では、証拠となる書類が必要です。売買契約書は権利書と一緒に保管しておきましょう。大昔、親が土地を買ったときの売買契約書が残っていれば、そこで取得費が判明します。それ以外の資料でもよいでしょう。たとえば、以下のようなものです。

<取得費の参考となる資料>

・代金を支払った領収書

・昔の登記書類に記載された売買代金

・購入代金を送金した時の銀行の通帳

・仲介業者からの証言

しかし、ほとんどのケースでは、そのような売買契約書は残されていないことでしょう。親が購入したときの売買契約書が残っていない場合、取得費をどのように計算すべきなのかが問題となります。

この点、資産税に慣れていない顧問税理士に質問すれば、「概算取得費5%を使いましょう。」と指導されるはずです。つまり、譲渡収入の5%を取得費とし、残り95%が譲渡所得になるという計算です。これでは、20.315%の税率を乗じると、多額の所得税等を支払うことになってしまいます。

そこで、証拠となりうる複数の書類を組み合わせて、取得費の金額を把握します。実際の購入金額を確認できる資料が無い場合には、親が当時購入したときの不動産のチラシ(マイソク)や、同時期に不動産を購入したお隣さんの不動産売買契約書も、参考となる資料として活用することができます。

<取得金額を推測するための参考となる書類>

・購入当時の不動産チラシの価格

・同時期に購入した隣人の売買契約書

・仲介業者の証言

・その他参考になる資料

これらの資料によって判明する金額は、実際の購入金額ではありませんの、複数の書類を組み合わせることで、当時の購入金額を合理的に計算します。

よくある質問ですが、取得費がわからないからと言って、購入金額の代わりに固定資産税評価額や相続税評価額を使用することはできません。固定資産税評価額や相続税評価額は、固定資産税や相続税を課税するための評価額であり、当時購入した金額とは次元がまったく異なるものだからです。

相続した実家を売却するときの税率はいくらか?

譲渡所得は売却した物件の所有期間によって、「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に区分されます。短期・長期で異なる点は、適用する税率です。

短期譲渡所得は、譲渡した年の1月1日時点において、所有期間が5年以下の不動産を譲渡するケースであり、その税率は、39.63%(国税30%、地方税9%、復興特別所得税として国税の2.1%)です。

これに対して、長期譲渡所得は、譲渡した年の1月1日時点において、所有期間が5年超える不動産を譲渡するケースであり、その税率は20.315%(国税15%、地方税5%、復興特別所得税として国税の2.1%)です。

同じ所得金額でも、所有期間が異なると支払う税金が約2倍になります。

そこで、相続した実家を売却したときには、短期譲渡所得となって、39.63%という高い税率が適用されるのか?と心配になるかもしれません。相続した不動産の場合には、相続開始した時点で所有者となるからです。

この点、譲渡所得の所有期間の計算では、取得費と同様に、親の所有期間を引き続くことになります。

それゆえ、被相続人である親が購入した時点から所有期間を計算することになり、通常は長期譲渡所得となります。20.315%の税率ですので、安心してください。

土地と建物の按分計算、消費税額から逆算する方法

実家の土地と建物の両方を相続した場合、建物が老朽化していると、更地にしてから売却するケースがあります。この点、土地だけの売却であれば、取得費として認められるのは、土地の購入金額のみとなります。つまり、建物の購入金額が取得費に入らないのです。

しかし、分譲住宅の販売では、土地建物セットの金額のみがマイソクに記載されています。

そこで、譲渡所得の計算する際には、土地と建物の購入金額の内訳を計算する必要があります。

購入金額の内訳について、新築物件であれば、契約書に記載されている消費税の金額から土地と建物の金額を計算することが可能です。すなわち、土地は消費税が非課税であるため、消費税の金額を税率で割り戻すと、建物の金額を算出することができます。売買契約書には消費税額が表示されていますが、適用されている消費税は、不動産購入当時の昔の税率ですので、消費税率には気をつけてください。

<消費税の税率変遷>

税率 適用期間
3% 平成元年4月1日~平成9年3月31日
(1989年4月1日~1997年3月31日)
5% 平成9年4月1日~平成26年3月31日
(1997年4月1日~2014年3月31日)
8%(※) 平成27年4月1日~令和元年9月30日
(2014年4月1日~2019年9月30日)
10%(※) 令和元年10月1日~
(2019年10月1日~)

※2019年8月時点での予定

土地と建物の按分計算、「建築価額表」から建物を計算する方法

消費税の導入以前に購入した建物や、中古物件の場合には、消費税から土地建物の割合を算出することはできません。そこで、土地と建物の金額を按分するために、『建物の標準的な建築価額表』を利用して、先に建物の金額を算出します。

この『建物の標準的な建築価格表』とは、国土交通省の建築着工統計から1㎡当たりの建築構造別建築費を計算したものです。たとえば、床面積が100㎡で、1㎡あたりの建築費が10.42万円であれば、建物価格は1,042万円となります。

参考:建物の標準的な建築価額表(国税庁)

相続した実家を売却する場合、建物を解体して更地にするケースが多いでしょう。その一方で、土地は先祖代々相続していた土地であるが、建物は10年前に親が建築した物件であったケースもあります。

先祖代々の土地については、取得費を確認する手段がありませんので、『概算取得費』を使用することになります。概算取得費とは、売却金額(譲渡収入)の5%を取得費としてみなす方法です。売却金額が1,000万円であれば、50万円が概算取得費です。

この概算取得費の計算は、1つの譲渡契約全体に対して適用します。すなわち、土地と建物をセットで売却する場合には、土地と建物を合わせて概算取得費を計算することになります。この点、建物の取得費が判明している場合には、土地だけに概算取得費を適用することが可能です。

建物は土地と違い、特別な事情が無いかぎり、資産価値が上がることはありません。したがって、減価償却した後の取得費を購入金額とみなすことができます。

すなわち、売却金額から建物の取得費を差し引いた残りが、土地の売却金額だと考えて、その金額に対して概算取得費の5%を適用することができます。

概算取得費には購入時の費用を加算できない!

譲渡所得の取得費には、不動産の本体価格以外にも、購入した際に支払った不動産取得税や相続登記で支払う登録免許税などを加算することができます。

所得税法基本通達
法第60条《贈与等により取得した資産の取得費等》関係
(贈与等の際に支出した費用)
60-2法第60条第1項第1号に規定する贈与、相続又は遺贈により譲渡所得の基因となる資産を取得した場合において、当該贈与等に係る受贈者等が当該資産を取得するために通常必要と認められる費用を支出しているときには、当該費用のうち当該資産に対応する金額については、37-5及び49-3の定めにより各種所得の金額の計算上必要経費に算入された登録免許税、不動産取得税等を除き、当該資産の取得費に算入できることに留意する。

しかし、概算取得費を計算する場合には、それらの経費を含めることができません。概算取得費は売却金額の5%として計算しますが、この5%には不動産取得税や登録免許税の費用などもすべて含まれていると考えるからです。

税務署では、譲渡所得の取得費についての相談にも対応していますが、いくつか注意点があります。税務署が取得費として認めるのは、原則として不動産売買契約書などで実額が確認できる場合だけです。実額が不明だと概算取得費を用いた計算を行うようにとの指導を受けます。なぜなら、概算取得費は計算が簡便であるとともに、誤った指導を行うリスクが少ないからです。また、税務署が税務相談の時点で実額以外の取得費を認めてしまうと、税務調査で指摘しにくくなるので、税務署としては安全策として概算取得費5%を勧める傾向にあります。

市街地価格指数による推計は最終手段

譲渡所得の取得費が不明な場合の最終手段として用いられるのが、『市街地価格指数』を使った方法です。

市街地価格指数とは、一般財団法人日本不動産研究所の不動産鑑定士等が年2回価格調査を行い、不動産の価格を指数化したものです。

参考:一般社団法人日本不動産研究所

対象地は全国198都市で、昔からの不動産価格の変動の推移を確認する手段としては非常に便利な指数です。

譲渡所得の取得費に市街地価格指数を使用するメリットは、現在の時価から不動産購入当時の価格を推測することができることにあります。

たとえば、2019年の指数が100で1970年の指数が70であれば、2019年の時価に100分の70を乗じることで、1970年当時の時価を推測することができます。

市街地価格指数を使えば、現在の価格から過去の価格を推測することが可能ですので、当時の不動産価格を計算するには、非常に便利な指数です。

しかし、推測した価格はあくまでも参考となる数値です。これだけを使用して税務署が譲渡所得の取得費として認めるケースはほとんどありません。実例として、市街地価格指数を用いた譲渡所得の取得費が否認され、概算取得費を適用が妥当だと判断された事例も存在します。

参考:市街地価格指数の裁決要旨一覧(国税不服審判所)

市街地価格指数は、全国198都市が対象ですが、各都道府県の市区町村の中でも時価の推移は違います。実情と異なった情報で計算しても、正しい金額は導くことはできませんので、市街地価格指数以外にも根拠となる資料が必要です。

ただ、適切に市街地価格指数を使用したことにより、取得費として認められた事例も存在します。

平12.11.16裁決、裁決事例集No.60 208頁(国税不服審判所)

市街地価格指数が認められた要因としては、国税不服審判所が「市場価格を反映した近似値の取得費が計算でき、合理的であると認められる。」と判断したからです。

つまり、単純に市街地価格指数を使用するのではなく、指数自体が市場価格を反映し、計算方法も合理的であることが条件となります。

これらの状況を踏まえると、譲渡所得の計算や知識が少ない人が市街地価格指数を用いて取得費を計算することはリスクが伴います。たとえ税理士であっても、譲渡所得の申告経験が少ない人も多いですので、譲渡所得の申告の経験が豊富な税理士を選択することもリスク回避となります。

いずれにせよ、取得費の根拠は、不動産売買契約書などで確認できるのがベストです。ただし、不動産売買契約書などが無い場合であっても、取得費を計算する手立てはあります。概算取得費5%を適用する前に、資産税の専門家に相談してみましょう。

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