不動産売買に伴うコストはいくらか?
宅地建物取引業者(宅建業者)を介して不動産の売買を行った場合、所定の仲介手数料を支払わなければなりません。仲介手数料は、通常は売買契約成立時にその半額を、残代金支払い時に残りの半額を支払う方法が多く採られています。
<計算例> 3,000万円でマンションの売却が成立した場合の仲介手数料(消費税込)3,000万円 × 3% + 6万円 = 96万円 96万円 × 1.08(消費税)=103万6,800円不動産業者に仲介を依頼し、3,000万円で売却が成立した場合の仲介手数料の上限額(消費税8%込み)は、103万6,800円となります。 |
また、土地を売却・購入する場合、その取引の対象となる土地の範囲を確定するために土地家屋調査士に依頼して測量を行うことが必要となることが多いでしょう。境界確定です。測量によって隣地や道路との境界が明確になり、対象地の位置や面積が確定します。
この点、民法では、「売買契約に関する費用は、当事者双方平分してこれを負担する」と定められていますが、不動産取引の慣例では、測量費用は売却対象物件を明確にするという観点から、売主側が負担するように特約で定めるケースが多くなっています。
【図 地積測量図】
宅建業者との媒介契約には注意すべき
希望物件を広く探索、契約諸条件の調整、契約書の作成・締結、引渡しと確実な権利移動など複雑な不動産売買の手続きを行うには、報酬の支払いは生じてでも、宅建業者に依頼した方が安心です。
しかし、すべての宅建業者が信頼できるとは限りません。信頼できる宅建業者であるかどうかを事前に確かめる必要があります。
不動産仲介業を営むためには国土交通大臣か都道府県知事の免許が必要です。その免許は、事務所ごとに番号や有効期間などを記載した「宅地建物取引業者票」を掲示することが義務付けられています。また、各都道府県の不動産業課などには、「宅地建物取引業者名簿」が備え付けてあるため、これを閲覧することで、その宅建業者が過去に法律に違反したことがないか確認することができます。
宅建業者に仲介(=媒介)や代理を依頼するにあたっては、依頼条件などを記載した媒介契約を締結することになります。
宅建業者との媒介契約には、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3 種類があり、依頼者がどの契約にするか選択することができます。依頼する側としてそれぞれの違いを知っておく必要があるでしょう。
専属専任媒介契約とは?
「専属専任媒介契約」とは、依頼者は1 社の宅地建物取引業者にしか媒介を依頼できず、自分で取引の相手方(買主や売主)を探すことが禁止されている契約です。
専属専任媒介契約の有効期間は3ヵ月を超えることはできません。宅地建物取引業者は、依頼された売り情報、買い情報を指定流通機構(REINS、「東日本レインズ」「中部レインズ」「近畿レインズ」「西日本レインズ」の4 つがあります。)へ、契約後5日以内に登録して情報を一般に公開し、広く相手方を探す活動をしなければなりません。また、1 週間に1 回以上の業務処理状況の報告が義務付けられています。
これらの業務が行われていない場合、宅地建物取引業者は宅建業違反となります。
専任媒介契約とは?
「専任媒介契約」とは、依頼者は1 社の宅地建物取引業者にしか媒介を依頼できないが、自分で取引の相手方を探すことは認められる契約です。
専任媒介契約の有効期間は3ヵ月を超えることはできません。また、宅地建物取引業者は、依頼された売り情報、買い情報を指定流通機構へ、契約後7 日以内に登録しなければならず、2 週間に1 回以上の業務処理状況の報告が義務付けられています。
一般媒介契約とは?
そして、「一般媒介契約」とは、依頼者が複数の宅地建物取引業者に媒介を依頼することができ、自分で取引の相手方を探すことも認められる契約である。
両手取引の媒介契約では売却価格は安くなる
宅地建物取引業者の報酬計算方法は、事務所ごとに、店頭に掲示しなければいけないものとなっています。探してみましょう。
仲介手数料の計算方法
宅地建物取引業者が依頼者から受け取ることができる報酬額には宅建業法において上限が定められています。「3%+6万円」です。これが依頼者1人から受け取ることができる上限額です。2人から依頼された場合は、それは2倍となります。
両手取引は売主と買主の双方から手数料を取る
宅地建物取引業者の仲介(=媒介)サービスには、「両手」と「片手」の取引があります。
両手取引(又は「両直」)は、1つの宅地建物取引業者が、売主と買主のお客様両方を担当して、双方から仲介手数料をもらう行為をいいます。
これに対して、片手取引は、売主もしくは買主の片方だけを担当して、担当するお客様から仲介手数料をもらう行為をいいます。つまり、宅地建物取引業者が2社いるということです。
つまり、宅地建物取引業者は、売主と買主の2人から報酬をもらうことができる両手取引を行うと、その1人からしか報酬をもらうことができない片手取引の2倍の仲介手数料を獲得することとなるため、両手取引を行いたい!と考えるのです。たくさん設けたいので、これは当然の考え方でしょう。
両手仲介は民法で禁止される双方代理に近い
再確認しますと、両手取引では、売主・買主双方から依頼された同じ宅地建物取引業者が、売りたい・買いたい双方のために売買を仲介することとなります。双方の利益を同時に実現する?という難しい取引です。民法の「双方代理」に近いかたちです。
これに対して、片手取引では、売主・買主それぞれが別々に依頼された宅地建物取引業者が、売りたい人、買いたい人それぞれのために売買を仲介することなります。
これは片側の利益だけを実現しようとするものですから、民法の「代理」に近いかたちです。これであれば、売りたい・買いたい!いずれか片方の利益最大化を追求することができます。
この点、国土交通省は、片手取引を推奨しています。なぜなら、両手取引には、利益相反問題という大きな欠点があるからです。
もちろん、利益相反に伴う欠点の犠牲となるのは宅建業者ではなく買主や売主である依頼者(お客様)です。
しかし、宅建業者の営業目的は、収益獲得(仲介手数料の獲得)にありますから、結局は、売買取引が成約して仲介手数料を得るために営業しているのです。売買価格などの取引条件はどうあれ、依頼者(お客様)の利益はどうあれ、宅建業者はとにかく手数料を稼ぎたいのです。
両手取引では、本来、依頼者のために働くべき立場の宅建業者が、依頼者の反対側にいる相手方からも依頼を受けているわけですから、片側の依頼者の利益は最大化されません。
買主情報を拒絶する恐るべき「抱え込み」スキーム
問題となるのは、売主が物件を売却する際、先に売主を担当する宅建業者の別のお客様(買主①)が8千万円という低い価格を提示し、次に他の宅建業者のお客様(買主②)が1億円という高い価格を提示した場合です。
売主側の宅建業者は、自分の直接のお客様(買主①)と契約させて、両手取引を行いたいと考えるのが当然でしょう。
その結果、本来ならば売主のお客様に全ての情報を提供しなければならないはずですが、他の宅建業者が連れてきたお客様(買主②)の提示価格を売主に伝えません。これが、宅建業者の「抱え込み」を呼ばれる手法です。
他社に買主候補がいても「商談中」として物件の販売を中止し、自社に買主候補が現れるまで放置し、両手取引を目指すのです。このような抱え込みは、売主の利益を害することになります。つまり、宅建業者の利益のために、売主の利益が犠牲となります。