法人化で節税したい!不動産オーナーが建物を法人に移転させる方法とは?

法人化で節税したい!不動産オーナーが建物を法人に移転させる方法とは?

「負担つき贈与」借金のある不動産は生前贈与できない

「借金してアパート」によって建築した賃貸不動産を生前贈与する場合、担保となる不動産に借入金が付いてきますから、負担付贈与として評価されることに注意しなければなりません。

負担付贈与とは、第三者などに対して債務(借入金、預り保証金など)を引き継ぐことを条件として、資産を贈与することをいい、受贈者は、資産をもらうかわりに、一定の債務を負担します。たとえば、5億円の土地・建物を贈与する際に、借入金3億円を引き継ぐような場合です。

負担付贈与を受けたときは、贈与対象の資産(土地・建物)の通常の取引価額から借入金を差し引いた金額に対して、贈与税が課されます。つまり、相続税評価で贈与税が課されるわけではないということです。

通常、贈与税の計算では、相続の場合と同様に相続税評価(通常の取引価額より低い金額)を用います。しかし、土地や建物が負担付贈与されるときは、その評価は通常の取引価額で評価されるため、贈与税負担が重くなるのです。

そこで、不動産所有法人を設立し、その法人が借入金によって資金調達を行うとともに、不動産も法人所有とし、その株式(または持分)を生前贈与するのです。

不動産所有法人の株式を純資産価額で評価する場合、負担付贈与として取り扱われることがないため、不動産の相続税評価によって株式を生前贈与することができます(ただし、3年間経過後)。この結果、受贈者に対して借入金の付いた不動産を軽い税負担で承継することが可能となります。

管理委託方式と転貸借方式は節税効果が小さい

賃貸不動産の法人化スキームは3つあります。その1つは、「管理委託方式」です。これは、土地や建物の名義は個人のものとし、家賃の集金や物件の維持 管理などを不動産管理法人に代行させる仕組みです。

通常であれば、不動産オーナー向けの賃貸管理業務を手掛ける外部の専門業者に頼むことが多いのですが、法人化スキームを実施する際には、あえて自分の不動産を管理する法人を設立するわけです。

不動産オーナーは、自分が所有する不動産から生じる家賃収人の一部を管理料として不動産管理法人に支払います。支払われた管理料は不動産管理法人の売上となり、維持費、人件費などを賄うことになります。

管理料の支払いはオーナーの所得の計算上は必要経費となり、個人の不動産所得を減額することができます。これによって、税負担を軽減することができるわけです。

2つ目の方法が「転貸借方式 (サブリース方式)」です。これは、オーナー個人が所有する賃貸不動産を法人へ転貸借するスキームです。この場合、不動産管理法人が賃貸不動産を一括で借り上げることになります。

不動産管理法人は、オーナーに対して借上げ家賃を支払い、その一方で借り上げた物件について人居者を募集し、家賃収入を得ます。

このとき、賃貸不動産オーナーに支払う借上げ家賃よりも高い金額で賃貸することで収益を計上し、管理費用を負担します。そこから役員や従業員に給料を支払えば、それは経費として計上できるため節税につながるわけです。

転貸借方式では、その仕組みを自分で設立した法人を使って活用することで、利益の一部を法人のものとし、賃貸不動産オーナーの所得分散効果を得ることができます。

管理委託方式と転貸借方式のいずれにおいても注意しなければならないのは、自分で不動産管理法人を設立した場合には、税務調査において、管理業務の実態があるかどうかが必ずチェックされることです。

一般的に、外部の管理業者に対して業務委託した場合、その管理料はせいぜい家賃収入の10%前後です。それゆえ、10%を超える管理料というのは明らかに払いすぎでしよう。

近年、税務署は相場を超える管理料の支払いについて厳密にチェックするようになっていますので、法人が管理している場合には、家賃収入の10%を超えない水準に設定する必要があります。

同様に、転貸借方式の場合であっても、相場より明らかに安い金額で一括借上げを行っている場合があります。そのような場合は、同族会社に対して不当に利益を付け替えているとして税務署に否認されるリスクがあるため、適正な借上げ家賃を設定しなければなりません。

不動産を法人に所有させる方式が最適なスキーム

賃貸不動産を個人で建築または購入した場合、家賃収入が定期的に入ってくることによって将来の相続財産が増加し、相続税負担が大きくなっていくことが問題となりました。

そこで、管理委託方式や転貸借方式と異なり、法人に賃貸不動産を所有させるスキームを使うことになります。建物を法人に移転することによって、家賃収人を法人が直接受け取る方法、すなわち不動産所有法人の設立を行うのです。これが賃貸不動産の相続・生前対策として最も効果的な方法です。

地主の方々はもともと個人で土地を所有していますから、その土地に新たに法人名義で建物を建築するか、すでに所有する個人名義の建物のみ法人に売却または現物出資します。

この不動産所有方式は、個人の所得税率が法人税率よりも高い状況であれば、この税率差を利用することができます。すなわち、個人の場合、不動産所得として総合課税されるため、所得税等の負担は15〜55%となるのに対して、法人の場合、実効税率は所得800万円以下の中小法人で20~25%、800万円超でも35%です。

大まかにいえば、課税所得が800万円を超えていれば個人よりも法人のほうが税負担は軽くなります。

また、建物を法人所有とすることによって賃貸不動産という資産を非上場株式に転換し、類似業種比準価額を適用することによって相続税評価を下げることができます。これにより、相続人に対する生前贈与が行いやすくなります。

生前から家賃収入を子供に移転させることができる!

さらに、設立時の法人の株主を賃貸不動産のオーナーではなくその後継者である子供にすることで、不動産所有法人に蓄積される利益を生前に移転してしまうことができます。

すなわち、不動産所有法人を設立することによりオーナー個人の相続財産の増加を完全に停止させ、相続税の増加を抑制させることができます。

また、法人を通じた所得分散によって所得税の節税効果を享受することもできます。すなわち不動産所有法人から子供や配偶者に役員報酬を支払うことで、所得の分散効果を享受することができます。

この場合、給与所得控除の適用を受けることができるほか、親族内の税率差を利用した節税を図ることが可能となります。

将来の相続発生時においても、不動産所有法人で資金を蓄積しておけば、個人の土地または不動産所有法人の自己株式を買い取ることによって、相続人の納税資金を捻出することができます。もちろん、不動産所有法人で生命保険に加入しておいて、死亡退職金を支給することも可能です。つまり、相続税対策だけでなく、納税資金対策としても効果があります。

以上のように、不動産所有法人を設立することによって、生前贈与の促進、後継者への財産の早期移転という効果を享受することができ、効果的な相続・生前対策を実施することができるのです。

注意すべき点は、法人設立後の自社株式の評価にあたって、その資産である建物が、法人へ譲渡または現物出資されてから3年間は通常の取引価額で評価されることです。それによって、建物の評価額は、固定資産税評価額よりも高くなりますので、その3年間は法人の自社株式の評価額が高くなります。

それゆえ、建物のオーナーであった親の相続が3年以内に発生しそうな状況であれば、法人化による相続税対策は行うべきではありません。

法人に移すのは建物のみ!土地は移さない!

不動産所有方式を採用する場合、基本的に土地は法人には移さず、建物のみを移します。なぜなら、土地の譲渡に伴って所得税負担が生じるからです。

土地の譲渡所得税については、たとえば土地の譲渡価額が1億円であったとしても取得費が不明の場合には,9,500万円(=1億円-(1億円×5%))に課税されるため、長期譲渡の税率20.315%を適用することで、1,930万円程度の税負担が生じることになります。

法人による買取資金は、オーナー個人に対する債務(未払金)として分割で返済します(10〜20年)。もちろん、銀行からの融資でも構いません(ただし、個人の土地を担保提供します)。

個人から法人への建物の譲渡価額は、同族関係者間取引であることから、適正な時価評価が求められます。この場合、税務上問題とならない評価は、帳簿価額(未償却残高)ということになるでしょう。

建物を法人に移すときのコスト負担も考えておく

なお、法人へ移す際には、登録免許税(固定資産税評価額の2%)、不動産取得税(固定資産税評価額の3%)、消費税(取引価額の8%)などのコストが発生します。

法人から個人へ権利金の支払いが行われることは通常ありません。すると、個人から法人へ権利金(借地権)に相当する経済的利益が無償で移転したと考え、経済的利益を受け取った法人は課税されることになります。それゆえ、権利金(借地権相当)に係る認定課税のリスクを伴います。

そこで、法人へ借地権相当額の贈 与が行われたとみなされないために、土地の賃貸借契約を締結し、通常の地代 を支払い、地の無償返還に関する届出書を税務署に提出します。

これによって、個人が所有する土地の相続税評価は20%減少させることができます(法人には同額を資産計上します)。

繰越欠損金があれば認定課税の受贈益にぶつけろ!

建物を法人へ移す際、多額の繰越欠損金を抱える既存の法人があるならば、無償返還の届出書を提出せずにあえて借地権を発生させる方法も効果的です。

そうすれば、個人においては、土地の相続税評価は、借地権割合を控除した底地だけの評価額(借地権割合が70%であれば30%)まで下がることになりますし、法人においては、借地権相当額の受贈益と繰越欠損金を相殺することができることに加えて、会計上も貸借対照表における財政状態を健全に見せることができます。

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