【ファミリーオフィス】家族会議の運営方法

目次

家族会議における議題

(1)ファミリーのビジョンと価値観の共有と文書化

ファミリーメンバー全員が集まり、それぞれのビジョンと価値観を共有します。司会者がファシリテーターとなって意見を集約し、それを議事録として記録します。文書化した意見を「家族憲章」とし、ファミリーの繁栄の意味を明確化します。今後作成する細かいルールは、家族憲章に従うものとします。

(2)ファミリービジネスへの取り組み

司会者は、外部専門家が作成した分析資料に基づいて、ファミリービジネスの現状(外部経営環境と内部経営環境)を説明し、ファミリーメンバーに共有します。また、ファミリービジネスを担当する経営者(現社長)は、今後の事業戦略を説明し、ファミリーメンバーの理解を得ます。

また、ファミリーメンバーが意見を出し、次の後継者をどうするか話し合います。合意が形成された場合は、後継者となる人材の教育プランを検討します。さらに、ファミリーの繁栄をもたらすため、親族内から事業を担当する人材をどのように選抜するか、その資質の要件や選抜のルール(例えば、一世代に一人しか会社に入れない、各傍系家族の輪番で後継者を出すなど)を決めます。

そして、株式の所有ルールを決めて、文書化します。ファミリービジネスが上場企業によって営まれているのであれば、その上場株式を所有する資産管理会社があるはずです。ここでのルールは、資産管理会社の株式の所有ルールということになります。

資産管理会社に係るルールは、所有株式数と議決権数に係るものがあります(種類株式を発行していない場合はいずれも同じ数となります。)。経営承継円滑化法の納税猶予制度(事業承継税制)を適用するのであれば、各世代における筆頭株主を誰にするか決めなければいけません。また、配当還元価額による特例的評価による株式承継を狙うのであれば、中心的な同族株主をどの傍系家族にするか決めなければいけません。このルールを文書化します。

(3)社会的事業への取り組み

ファミリーメンバーの多くは、ファミリービジネスに関与していないはずです。ファミリービジネスから分配される配当金を原資として、SDGsへ向けた事業への寄付や投資、新技術研究を行うベンチャー企業への投資など、社会的事業を行います。このような社会的事業は、ファミリーの名声を高め、間接的にファミリービジネスの利益にも貢献します。また、ファミリービジネスに従事していないメンバーにとっての生きがい、価値観の実現、アイデンティティの確立をもたらします。

資産承継(相続税対策)への有用性から公益財団法人を運営主体とするケースが多く見られます。また、ファミリービジネスが上場企業であれば、事業承継税制を活用するために、資産管理会社において別の事業を運営しなければいけません。

(4)ファミリーガバナンスの細かいルールの策定

ファミリービジネスと社会的事業の定期的な業績報告をルール化し、ファミリーメンバーでモニタリングします。司会者は四半期ごとに業績を報告し、ファミリーメンバーによる承認を得ます。

また、個別の議題が出されたときには、それを審議し、決議するためのルールを決めて文書化しておきます。例えば、ファミリービジネスの一部を売却する(M&A)、業績悪化に対してファミリーの個人資産をつぎ込んで支援するなど、新たな社会的事業を開始するなど、ファミリー全体への影響が大きな議題については全員一致を原則とするなどのルールを設けます。

司会者がチェックすべきポイント

  • 家訓や家憲がファミリーメンバーに浸透しているか。
  • ファミリーの永続的な繁栄を見据えた生き方を行っているか。
  • ファミリーメンバーが、ファミリービジネス(事業)の現状を把握しているか。
  • ファミリーの人間関係は良好か。
  • 定期的な家族会議にファミリーメンバー全員が参加できているか。
  • 家族会議では、女性も含めて、自由闊達に意見交換されているか。
  • 経営者が属する傍系家族、経営者がいない傍系家族のそれぞれが役割を決められ、お互いに不満を持っていないか。
  • 後継者を育成するための計画はあるか。
  • 後継者ではない人材に対する教育や投資が行われているか。
  • ファミリーメンバー間におけるトラブルを解消するためのルールは定められているか。
  • 社会貢献の意識はあるか。
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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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