遺言書の書き方と相続争いを防ぐ【相続相談事例】

遺言書はその内容と同じく伝え方にも注意を払いましょう。特に親から子への遺言書は、兄弟が複数名いる場合誰か一人を代表に指名し、その人から他の兄弟へ伝えてもらうという場合があります。

しかし、これは相続争いの原因になりかねません。

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姉との遺産分割に悩むMさんの場合

Mさん(50代女性)は、90歳の母親のサポートをしてきました。同居はしていませんが、すぐ近くに住み、毎日、実家に通っては母親の身の回りの世話をしています。

遠方に住む姉(60代)は、物事をはっきり言うタイプで、母親とはよくケンカになるといいます。

父親が亡くなったときは遺言書がなく、70代だった母親が中心に手続きをしましたが、姉は自分の権利もあると言って、現金を相続しました。

姉の言い分では、自分が一人住まいになった母親の母親の面倒を見てもよいが、それなら、母親が自分の住まいの近くの老人ホームに入る事が条件だと言うのです。

しかし、母親は長く住んだ現在の住まいから動く気はありません。

それよりも、姉の言い方に怒り心頭で、姉には面倒は見てもらわなくて良いという気持ちになり、近くに住むMさん家族に頼りたいというのです。

母親は、自分の意思を残しておきたいと公正証書遺言の作成をしたいと考え、公証役場に出向いて相談しているということですが、どういう内容にすればいいか、わからないこともあり、母親の代わりにMさんが相談に来られました。

母親の意思は、これからも自宅で生活し、自宅やお墓はMさんに守ってもらいたいということです。

母親の財産は自宅不動産1500万円、預金、有価証券1300万円、生命保険200万円。他にすでに姉夫婦が自宅を購入するときに援助した現金1000万円があります。

Mさんが不安に思うのは、姉夫婦は不動産に執着していて、母親の実家も欲しいと言い出す事は間違いないと思えることです。姉たちは住まなくても、二人の子どもに住まわせるなど想像されます。

このまま母親が意思を残さず亡くなった場合は、姉が強く主張すれば、Mさんには勝ち目がないため、姉の思うままの分割になりそうです。

遺言書作成時の注意点

こうした不安があり、母親が遺言書を作っておこうという気持ちになってくれたことで、Mさんはほっとしているということです。

当社でアドバイスをしたことは、母親が自分の意思で遺言書を作ったことを母親の言葉で姉に伝えてもらう事が必須だということです。

直接話をするのが億劫な場合は、手紙にしてもかまいません。亡くなったあとにMさんが姉に伝えるのでは、怒りを引き出すのです。

母親が自分の意思で決めておくことは母親の権利でもあり、それを生前に子どもたちに伝えておく事で争いを防ぐのです。

公正証書さえあれば完璧とはなりませんので、その先まで想定した遺言書作りをお勧めしました。

母親にも自分の意見を言うタイプの方は、妹の意見など聞くつもりはなく自分の意見を通すのが当然だとなるでしょう。

それが想定されるなら、遺言書は絶対に必要だと言えます。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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