【不動産M&A事例紹介】不動産から事業を分離してMBOを行う

【不動産M&A事例紹介】不動産から事業を分離してMBOを行う

個人利用の不動産を買取り、賃貸ビルを不動産M&Aで売却した事例

輸入商社を廃業して不動産賃貸業へ

複数の不動産を所有する同族会社の不動産M&Aがありました。千葉県のY社の事例です。Y社は創業100年。もともとは輸入商社でしたが、代々の経営者が本業の利益を不動産に注ぎ込んでいました。会社の所有する資産は増えましたが、輸入商社の事業を閉鎖し、現在の会社の実態は、不動産賃貸業となりました。

Y社が所有する資産は、都心の賃貸ビルが5棟と、現社長が自宅として使っている世田谷の豪邸、熱海の別荘、都内各所に点在する遊休土地や駐車場、それに自動車やゴルフ会員権などです。総資産額は100億円前後と推定されます。

また、会社が所有する賃貸ビルの一部には、オーナー一族がオフィスを構えており、住居や店舗として使用しています。

株主は相続のたびに増え、現在20人になりました。株式を所有しているだけの株主は、早期に会社を清算して現金を分配してほしいと望んでいます。しかし、会社所有の自宅や店舗、オフィスを利用している株主に出て行けとも言えません。

それぞれの株主が財産の分け方に関して不公平感を持っているうえに、オーナー一族のリーダー的存在の現社長が離婚と再婚を繰り返したため、オーナー一族の関係はますます複雑になっています。利害対立に感情的なもつれが重なって、弁護士を雇って争う構えの株主もいます。

バブル崩壊で不動産価格が暴落したため、不動産売却の話しがストップしていましたが、アベノミクスによる不動産市場の回復とともに、会社の清算による現金の分配を求める声が高まってきています。

Y社の株主の一人、甲さんから顧問税理士に相談がありました。甲さんは数年前に親からY杜株式を相続しましたが、現社長とのつき合いはほとんどなく、「現金化して早く縁を切りたい。」と言います。

若い世代からは同様に、会社を売却して現金を分配することを望む声が挙がって、甲さんは顧問税理士に相談しに来たのです。問題は、会社所有になっているオーナー一族の自宅やオフィス、店舗です。疎遠になっているとは言え、親戚に対して、「会社を売却するから、自宅から出ていってほしい。」とは言いにくいのです。

親族が利用する不動産は買取っておく

そこで、顧問税理士は、不動産M&Aをアドバイスしました。それと同時に、会社名義の自宅や別荘、ゴルフ会員権などは、利用者が時価で買い取ること、自宅や別荘などの買取り代金は、会社の売却代金が入った段階で精算すること、オフィスや店舗は、不動産M&Aの買い手から適正な賃料で賃借することです。

買い手側にとっても、Y杜を購入する目的は、都心一等地に所有する5棟の賃貸ビルと遊休地です。世田谷の自宅や熱海の別荘の売却が事前に決まっていれば、処分する手間が省けます。

甲さんは、この話しをオーナー一族全員に切り出したところ、最初は大騒ぎになりましたが、若手の株主が合意して不動産M&Aを支持したことや、顧問税理士のきめ細やかな対話と説得が徐々に功を奏し、最終的にオーナー一族は、不動産M&Aに合意し、資産の現金化を実行しました。

赤字の事業を廃業して不動産M&Aを行った事例

赤字続きの本業を廃業

オーナー一族が第三者に経営を任せているケースがあります。精密部品製造業のB社の事例です。本業が厳しく赤字続きでしたが、過去の内部留保によって不動産を所有していました。所有する不動産は本社ビル、工場、倉庫、社宅などでした。

このまま会社を継続すれば、オーナー一族の資産でもある企業価値は、どんどん目減りしてしまいます。早期に手を打たなければなりません。

こうした末期的状況ならば、株主の利害は一致していますから、不動産M&Aを目的とする会社の売却についても、合意を取りやすいでしょう。

また、経営者は責任を果たすことができなかったわけですから、株主が会社をM&Aで売却することに対して、反対できないはずです。

従業員への退職金の支払いと負債の整理

問題は、従業員の雇用です。赤字の事業や従業員を引き受ける買い手はほとんどいないでしょう。

買い手側の不動産会社がM&Aで買収する目的は、所有する不動産の取得です。それゆえ、不動産M&Aを進めるのであれば、経営者は、従業員に退職金を支払って解雇したうえで、会社の売却を進めなければなりません。

複数の不動産を所有しているのであれば、まず一部の不動産を処分して資金を作り、それで従業員に退職金を支払い、また、負債を整理します。

そして、残った不動産を含めて、会社を丸ごと売却するのです。

不動産から事業を切り離してMBOと不動産M&Aを実行した事例

業績好調の事業は、所有と経営が分離

業績好調の事業を営んでいる会社の事例です。C社は食品加工メーカーで、本社ビル、工場、倉庫、社宅などの不動産を所有しています。本業は順調で黒字が続いていました。ただし、現社長は、株式を持たない雇われ社長であり、所有と経営が分離していたのです。

会社のM&Aに対しては、雇われ経営者や従業員から強い反対が想定されています。その一方で、経営に関与しないオーナー一族の株主からすれば、非上場会社の株式はやっかいな資産です。配当も少ないうえに、相続税負担は重いからです。

また、相続ごとに株主が増え、その関係が複雑になってきました。今後も経営に参加しないのならば、不動産M&Aで会社を現金化したいと考えるようになりました。

事業を雇われ経営者に売却するMBO

この問題に対して顧問税理士がアドバイスを行いました。それによると、不動産所有会社と事業会社に会社分割し、事業会社に営業を譲渡したうえで、不動産所有会社を売却するというのです。その一方で、事業会社を雇われ経営者に買い取ってもらうのです(MBO、マネジメント・バイ・アウト)。

切り離された不動産をM&Aで売却

事業会社は、事業の存続に必要な工場や倉庫、オフィスビルなどをM&Aの買い手から賃借します。こうした方法をとれば、経営者や従業員の雇用は確保されます。

このケースのように事業が順調な会社は、不動産M&Aの対象にはなりえないと思われがちですが、不動産と事業を分離することによって、不動産M&Aが可能となるのです。

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