親族外事業承継(M&A)に悩む!社長はどのように決断するか?

親族外事業承継(M&A)に悩む!社長はどのように決断するか?

親族外事業承継(M&A)の増加

近年、事業承継における後継者不在という問題がクローズアップされてきています。従来、わが国の中小企業は、親族内承継を基本的な方向だと考えてきました。

しかし、子供が人生の選択肢として他社でサラリーマンとして働くことを望むケースもあります。また、そもそも現経営者に子供がいないケースが増えてきています。

それゆえ、現在、わが国の中小企業の「3人に1人」は後継者不在だといわれることもあります。

このような場合、次世代の経営者が不在ということになりますから、親族外から後継者を見つけるしかありません。すなわち、役員・従業員が後継者になること(従業員承継、MBO)か、第三者が後継者になること(第三者売却、M&A)です。

M&Aによる会社売却は可能だろうか?

親族外承継(M&A)を行うと決めたならば、まずは希望条件を整理しておくべきです。決算書や税務申告書などの財務情報は、手元に揃えておきましょう。事業計画や営業資料など、社内情報も必要です。

それらに目を通して自社の現状と将来性を客観的に分析しておくのです。買い手にとって魅力のある会社かどうか、高く買ってくれそうか、親族外承継(M&A)の着地点をイメージするとよいでしょう。

また、引退後の生活費を予測し、希望する売却価格も決めておきたいところです。売却価格は財務データだけで評価されるものでなく、景気動向、市場環境、業界動向などの定性的要因が影響してくるため、希望価格が必ずしも実現できるとはかぎりません。これは買い手との交渉で決まるものです。

しかし、目標となる売却価格を設定したうえで、価格交渉を開始する必要があります。それゆえ、公認会計士やFAのアドバイスを聞いたうえで、売却価格を試算し、希望売却価格で売れるか事業かどうかを確かめておきましょう。

売り手の価格目線と売却実現可能性

子供がいても売却(M&A)を決断するケースがある

会社の事業承継は、子供に継がせることが基本でしょう。事業の成長性に問題がなければ、安心して子供に経営を任すことができます。残された株式相続の問題だけ考えておけば十分です。

一方、子供が後を継ごうとしない場合は、会社の売却(M&A)を考えるしかありません。

問題となるのは、子供を後継者としたいと考えていても、彼らに会社経営の意欲や能力がない場合です。子供に会社を任せて大丈夫なのかと不安になることでしょう。

また、子供を後継者にするとは言っても、会社の経営環境が厳しい場合も同様です。事業の将来性が暗い場合、いくら同族経営の責任があるとはいえ、自分の子供を一生苦労させるような事業承継は避けたいところです。

日本企業の経営環境は極めて厳しく、国内市場は縮小傾向にあり、外国企業との価格競争は激化しています。このような経営環境では、老舗企業の存続は容易ではありません。

将来的に会社が倒産すれば、子供が事業承継しても、株式の価値はゼロ、借入金の個人保証などで大きな負債を抱える危険性もあります

このように微妙に難しい状況で事業承継を考える場合、以下の2つの選択肢を検討します。

(1)会社を売却して現金化するか、
(2)株式を承継させて会社経営を任せるか

子供に難しい会社を継がせるべきなのか、現金だけを遺してやるべきか、企業オーナーには、親としての難しい判断が求められるのです。

この意思決定において考慮すべきことは、将来キャッシュ・フロー比較です。すなわち、相続財産として子供が受け取る将来キャッシュ・フローとして、次の2つを比較してみましょう。

(1)親族外承継(M&A)の対価として残された現金
(2)株式を相続した子供が将来受け取るであろう役員報酬や配当金

これらを比較し、どちらが有利になるかを計算してみるとよいでしょう。

株式相続か現金相続(M&A対価の相続)か

株式を相続させる場合、子供は株式の承継によって、役員報酬や配当金を永続的に受け取ることができるようになります。したがって、株式に伴う相続税(または贈与税)さえ支払えば、将来キャッシュ・フローを永続的に得る権利を取得することができるのです。

これに対して、売却(M&A)した後に現金を相続させる場合、子供が多額の金融資産(現金)を受け取ることになります。もちろん、相続税(または贈与税)の支払いは必要ですが、子供は、一時金として多額の現金を受け取ることになるでしょう。受け取った現金の資金運用は、子供の自ら決めることができます。

子供の観点から比較すると、株式相続と現金相続の違いは、キャッシュ・フロー発生のタイミングにあります。

株式の相続の場合、相続税という現金支出が先行しますが、その後の現金収入は、会社が倒産しないかぎり長期にわたって続きます。

それに対して、現金の相続の場合、相続時に多額の現金収入が発生するものの、自ら資産運用しないかぎり、その後の現金収入はありません。

つまり、売却(M&A)して現金を相続するということは、配当や役員報酬などの将来キャッシュ・フローを、一時金として先取りすることといえます。

つまり、売却(M&A)とは、「将来キャッシュ・フローの現金化」なのです。

したがって、子供に会社を継がせるべきか、売却(M&A)して現金化すべきか、判断を迷う場合には、子供が得られる将来キャッシュ・フローの正味現在価値が大きいほうを選択すればよいでしょう。

会社の将来性が期待されるのであれば、株式を相続して将来キャッシュ・フローを承継すべきということになるでしょう。逆に、将来性が期待されないのであれば、先代のうちに親族外承継(M&A)して将来キャッシュ・フローを現金化すべきということになるでしょう。

つまり、将来キャッシュ・フローの大きさ、それを生み出す会社の将来性・収益性が判断基準となるのです。

この点、会社の将来性・収益性を大きく左右するものが、後継者となる子供の会社経営に対する意欲と能力の有無です。子供が会社経営に意欲と関心がない場合、たとえ成長性のある事業を承継しても、倒産させてしまうおそれがあるので要注意です。

後継者の能力や経験が不足している場合、先代経営者が元気なうちに徹底的に後継者教育を行うことが必要です。

それでも後継者が一人前に成長する見込みがない場合、先代経営者のうちに売却(M&A)して現金化し、賃貸マンションでも購入し、子供には不動産経営から得られる家賃収入を継がせたほうが無難でしょう。

企業オーナーの相続対策とは、将来キャッシュ・フローを確実に引継ぐことなのである。会社を継がせるのか、現金を継がせるのか、不動産を継がせるのか、将来キャッシュ・フローの観点から考えましょう。

親族外事業承継(M&A)を悩む方の意思決定

複数の事業を営んでいる場合、そのうち一つの事業を営む子会社を売却するケースがます。子会社が売り手となる親会社から切り離されることで、親会社に様々な財務的な影響を与えます。

プラスの影響は、売却によって得られる現金対価です。これに対して、マイナスの影響は、将来得られるはずであるキャッシュ・フローを失うことです。本社費の負担や経営指導料の支払いとして親会社が獲得していたキャッシュ・フローが失われてしまうからです。

逆に、対象会社が赤字であった場合は、将来発生するはずであったマイナスのキャッシュ・フロー(現金支出)が回避できるというプラスの影響になります。

この判断は、売却せずに売り手が自ら事業運営を継続する場合の将来キャッシュ・フローを予測して、その割引現在価値と売却価格との比較を行うことで決定することができます。

この点、対象事業は、本業とは関係ない事業であれば、企業オーナーがその事業を継続運営して得られる将来キャッシュ・フローの実現可能性は低いと考えるべきでしょう。

そのような場合、自ら事業運営することによる将来キャッシュ・フローの割引現在価値に対して、高い事業リスクを考慮し、高い割引率を適用すべきでしょう。

M&Aとは事業価値を現金化すること

親族外承継とは、親族外の役員・従業員または第三者へ、非上場株式とそれに伴う経営権を承継することです。この際、親族内とは異なり、無償で贈与というわけにはいかず、「事業」を有償で譲渡することになります。法人(会社)であれば、その「株式」の売却によって承継させることもできます。

事業の譲渡によって、企業オーナーは、対価としての現金を受領します。つまり、これまで築いてきた事業価値が、現金という財産に交換され、「金融資産家」という分類の資産家に転身するということになります。

その際、個人の利益最大化の観点から、次の3つのポイントを検討しなければなりません。

M&Aにおける売却価格を最大化する

第一に、事業売却(M&A)する対価としてどれだけ多額の現金を獲得することができるかという点です。これは、買い手に事業価値をどれだけ高く評価させることができるかということです。

事業価値によって非上場株式の譲渡価額が決まります。つまり、高く売却できるかどうかは、買い手が評価する事業価値の大きさによるのです。

加えて、譲渡(M&A)のタイミングや、その際の価格交渉や条件交渉の巧拙によって価格は大きく変わります。買い手とうまく交渉を行えば、事業価値を大きく上回る、高い譲渡価額を実現することもできるでしょう。優秀なFAを雇うべきです。

M&Aにおける税金を最小化する

第二に、売却(M&A)に伴う税負担を最小化できるかという点です。M&Aには事業譲渡と株式譲渡の2つの取引スキームが想定されますが、どちらの取引スキームのほうが税負担を小さく抑えることができるか、検討する必要があります。

たとえば、自社株式を直接保有している場合と、持株会社を通じて間接保有している場合では、売却に伴う税負担が大きく異なる。株式譲渡と事業譲渡の選択は、極めて重要です。

M&A後は金融資産家としての相続税対策が必要

第三に、現金を受け取って金融資産家に転身した後、どのように相続税対策を講じるかという点です。

金融資産を相続財産とする場合、遺産分割と納税資金の観点からは全く問題ありません。しかし、相続税対策の観点からは不利な状況に陥ります。金融資産の相続税評価が高く、相続税負担が重いからです。M&Aを実行する前から、相続税対策を練っておく必要があるでしょう。

M&A実行後の相続税対策の進め方

M&Aで会社を売却したオーナー経営者は、その売却代金として多額の現金を受け取ります。受け取った現金は預金として所有してもよいですが、一般的には金融機関を通じて金融資産を購入し運用することになります。つまり、M&Aを通じて、企業オーナーは金融資産家へ転身するということです。

金融資産家の相続対策は、「不動産投資」「贈与」です。

保有する財産のポートフォリオを最適化という観点からは、金融資産よりも相続税評価が低くなる不動産に組み替えることによって、相続税負担を軽減することができます。

すなわち、タワーマンションなど、時価(取得価額)よりも相続税評価額が大きく下回る不動産(時価>相続税評価)を購入するのです。この乖離を利用して相続税評価を引き下げることができます。

近年、M&Aした後の資産家が、タワーマンションを購入する事例が増えています。事業承継が終わったら、その次に相続税対策が待っていることを忘れてはなりません。

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