遺産をめぐる相続争いの相談事例は多数!分割できるない不動産が原因か?

保有する資産のタイプで富裕層を分類しますと、不動産オーナー、企業オーナー、金融資産オーナーの3つにすることができます。すなわち、個人財産のほとんどが不動産(土地・建物等)である不動産オーナーと、個人財産のほとんどが非上場株式(自社株式)である企業オーナーと、個人財産のほとんどが金融資産(現預金、上場有価証券、生命保険など)である金融資産オーナーです。

相続税負担の観点から見れば、金融資産オーナーの税負担が最も重く、不動産オーナーと企業オーナーの税負担は比較的軽くなります。しかし、遺産分割の観点から見れば、不動産オーナーと企業オーナーの遺産分割はとても難しく、いわゆる争族、遺産を巡る争いが生じる可能性が高いのです。

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不動産オーナーの遺産分割と相続争い

わが国の富裕層は、高度成長期からバブル期にかけて不動産で財を成した人が多く見受けられます。不動産オーナーの特徴は、先祖代々から受け継いだ土地を守るために堅実な人が多く、特に地価が高くなった都市部には著名な地主一族が存在していることです。例えば、1丁目1番地などの若い番号の土地の地主は、有名な一族である可能性が高いでしょう。

不動産オーナーが保有する不動産の特徴は、金融資産オーナーと異なり、相続時の遺産分割が大きな問題となることです。また、比較的大きな遺産総額に占める不動産比率が高い場合には、多額の相続税が課されるにもかかわらず、納税資金となる現金が不足することになります。

近年、ゼロ金利政策によって不動産価格が極めて高い水準まで上昇しています。相続財産の中で不動産が大きな割合を占めるケースが多く見られます。

遺産分割協議の結果として、共有することとなれば、将来的に売却することが難しくなってしまう可能性があります。そう言っても、不動産を相続人の1人に集中するとすれば、バランスが悪くなり、親族間の様々なトラブルの種にもなりかねません。相続争いを招く大きな原因とってしまいます。

企業オーナーの遺産分割と相続争い

一方で、富裕層の中でも「超・富裕層」「ハイエンド」「ウルトラ・ハイ・ネット・ワース」と別格扱いされる人たちのほとんどは、企業オーナーです。すなわち、上場企業の創業家一族、非上場企業のオーナー経営者、大病院を経営する医師などです。この点、上場企業の創業者一族であれば、自社株式という位置づけで保有する資産は、上場株式となります。これは、証券口座を通じていつでも換金可能な金融資産です。しかし、このクラスまで個人財産を増やした創業者一族のほとんどの方々は、節税目的のために資産管理会社(持株会社)を作り、上場株式を間接的に保有する所有構造を採用しています。それゆえ、上場企業であれ、非上場企業であれ、個人が保有する資産は「非上場株式」であることが多いのです。

企業オーナーの相続では、非上場株式の遺産分割が問題となります。大きな遺産総額に占める非上場株式の比率が極端に高い場合には、多額の相続税が課されるにもかかわらず、納税資金となる現金が不足することになります。

しかし、不動産と異なり、非上場株式は容易に売却することができません。それによって会社に対する支配力の低下を招くからです。そうすると、納税資金とするために、非上場株式以外の金融資産もまとめて後継者に取得させることになる可能性があります。そのため、企業オーナーである親の相続財産のほとんどが会社の後継者となる子どもに集中し、後継者とならない子どもの遺留分を侵害するほどバランスが悪くなるケースが多く発生するのです。

以上のように、不動産や非上場株式は、相続人の1人に集中させようとして、遺産分割のバランスを悪くしてしまうものなのです。相続争いを招く厄介なものなのです。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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