【企業経営者の相続対策】会社に対する貸付金にも相続税が課される!引退後に貸付金を処分する方法とは?(公認会計/士税理士 岸田康雄)

1 現金や貸付金を株式に変換させる

企業オーナーと会社との資本関係を確認すると、会社に出資しているだけでなく、会社に資金を貸し付けているケースが多くみられます。このような貸付けによる金銭債権は、実質的に出資による株式保有と同様の資本投下であるにもかかわらず、相続が発生するときには債権の額面金額で評価されてしまい、税負担が重くなります。つまり、非上場株式の評価よりも割高な個人財産となっています。

そこで、デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap、略してDES)を実行し、金銭債権を株式に転換することによって、保有する個人財産の相続税評価を引き下げておくのです。

デット・エクイティ・スワップとは、デット(債務)とエクイテイ(資本)をスワップ(交換)することです。すなわち、法人側から見れば、債務と交換に株式を発行することをいいます。つまり、現物出資による新株発行です。逆に企業オーナー側から見れば、金銭債権の現物出資による新株引受けということになるでしょう。新株発行は現金を払い込むことが一般的ではありますが、デット・エクイティ・スワップの場合は、金銭債権の拠出を行うことになるのです。

デット・エクイティ・スワップは、債務者である自社にとっては、過剰債務を減らし財務体質を健全化できるメリットがあります。経営再建を行うためのスキームとして利用されることも少なくありません。

2 債権放棄(債務免除)には法人税が課される

貸付金の額面金額とその時価に差額があると「債務免除益」が計上され、会社側で法人税が課されてしまう可能性があります。具体的には、債権の時価相当額(<額面金額)についてのみ資本金等の額を増加させ、それを上回る額面金額との差額は「債務免除益」として課税されることとなります。

これを回避する手段 として、いったん金銭出資による増資を行った後、その払込金で借入金を返済する、いわゆる「疑似DES」と呼ばれる方法があります。この方法によれば,金銭出資による増資払込みと債務の返済の組み合わせですから、債務免除益を発生させることはありません。

執筆者紹介

岸田 康雄 (きしだ やすお)

事業承継コンサルティング株式会社 代表取締役
島津会計税理士法人東京事務所長
公認会計士、税理士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)

一橋大学大学院商学研究科修了(経営学および会計学専攻)。 中央青山監査法人(PwC)にて事業会社、都市銀行、投資信託等の会計監査および財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、メリルリンチ日本証券、SMBC日興証券、みずほ証券に在籍し、中小企業経営者の相続対策から大企業のM&Aまで幅広い組織再編と事業承継をアドバイスした。 現在、相続税申告を中心とする税理士業務、富裕層に対する相続コンサルティング業務、中小企業経営者に対する事業承継コンサルティング業務を行っている。 日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員。中小企業庁「事業承継ガイドライン」改訂小委員会委員。

著書紹介

信託&一般社団法人を活用した相続対策ガイド【中央経済社】
金融機関・税理士・FP・PBのための事業承継・相続における生命保険活用ガイド―活用手法と税務【清文社】
税理士・会計事務所のためのM&Aアドバイザリーガイド【中央経済社】
富裕層マーケットで勝つための新たな営業手法 プライベートバンキングの基本技術【清文社】
相続生前対策完全ガイド【中央経済社】
中小企業のための会社売却(M&A)の手続・評価・税務と申告実務【清文社】
事業承継ガイドライン完全解説【ロギカ書房】
資産タイプ別相続生前対策完全ガイド【中央経済社】
顧問税理士が教えてくれない 資産タイプ別 相続・生前対策パーフェクトガイド【中央経済社】
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専門家のための事業承継入門〜事例で学ぶ!事業承継フレームワーク〜(共著)【ロギカ書房】
証券投資信託の開示実務【中央経済社】など他多数。