【企業経営者の相続対策】2人の子供に会社を継がせることはできるか?会社分割による事業承継とは?(公認会計/士税理士 岸田康雄)

1 事業を2つに分けて2人に承継

会社を1社のみ経営する企業オーナーの相続において、複数の子供が後継者として想定される場合、その1社の経営権をめぐって親族内で争いが起きる可能性があります。そこで、会社分割や事業譲渡によって会社を複数に分け、複数の会社をそれぞれ子供に承継するという方法が考えられます。

たとえば、A事業とB事業を営む甲社の経営権をめぐって長男と次男が争ったとします。そのような場合、甲社の営む2つの事業の1つであるB事業を会社分割によって新設の乙社に移転するのです。これにより、A事業を営む甲社を長男に承継すると同時に、B事業を営む乙社を次男に承継することが可能になり、会社の経営権をめぐる争いを回避することができます。

2 会社分割の注意点

会社分割や事業譲渡を行い、資産および負債を新会社に移転する際には法人税等の負担が伴いますので、注意しなければなりません。

また、会社分割後3年以内に企業オーナーの相続が発生した場合、以下のように株式の相続税評価が上昇するケースがあります。

第一に、3年以内に取得した土地や建物が通常の取引価額によって評価されることです。会社分割により上地や建物を移転した後、3年以内に企業オーナーの相続が発生した場合、相続税評価よりも高い価額で評価しなければなりません。

第二に、開業後3年未満の会社に対して純資産価額による評価が適用されることです。会社分割によって会社を設立した後、3年以内に企業オーナーの相続が発生した場合、その会社(分割承継法人)の株式は純資産価額による評価となり、類似業種比準価額よりも高くなる可能性があります。

第三に、会社分割によって会社規模が小さくなり、株式を割高に評価する可能性があることです。たとえば、大会社が中会社に変更となるようなケースが出てくるため、類似業種比準価額のみによる大会社の評価が、純資産価額との加重平均による中会社の評価となり、株式の相続税評価が高くなる可能性があります。

執筆者紹介

岸田 康雄 (きしだ やすお)

事業承継コンサルティング株式会社 代表取締役
島津会計税理士法人東京事務所長
公認会計士、税理士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)

一橋大学大学院商学研究科修了(経営学および会計学専攻)。 中央青山監査法人(PwC)にて事業会社、都市銀行、投資信託等の会計監査および財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、メリルリンチ日本証券、SMBC日興証券、みずほ証券に在籍し、中小企業経営者の相続対策から大企業のM&Aまで幅広い組織再編と事業承継をアドバイスした。 現在、相続税申告を中心とする税理士業務、富裕層に対する相続コンサルティング業務、中小企業経営者に対する事業承継コンサルティング業務を行っている。 日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員。中小企業庁「事業承継ガイドライン」改訂小委員会委員。

著書紹介

信託&一般社団法人を活用した相続対策ガイド【中央経済社】
金融機関・税理士・FP・PBのための事業承継・相続における生命保険活用ガイド―活用手法と税務【清文社】
税理士・会計事務所のためのM&Aアドバイザリーガイド【中央経済社】
富裕層マーケットで勝つための新たな営業手法 プライベートバンキングの基本技術【清文社】
相続生前対策完全ガイド【中央経済社】
中小企業のための会社売却(M&A)の手続・評価・税務と申告実務【清文社】
事業承継ガイドライン完全解説【ロギカ書房】
資産タイプ別相続生前対策完全ガイド【中央経済社】
顧問税理士が教えてくれない 資産タイプ別 相続・生前対策パーフェクトガイド【中央経済社】
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専門家のための事業承継入門〜事例で学ぶ!事業承継フレームワーク〜(共著)【ロギカ書房】
証券投資信託の開示実務【中央経済社】など他多数。