自宅の相続税が軽減される特例を適用できる5つのケースとは?

小規模宅地等特例のうち、被相続人の自宅または生計同一親族が住む家(特定居住用宅地等)について、要件を詳細に見ていきましょう。

【1】配偶者が継ぐのであれば、すぐに売却するとしても適用可能!

【要件①】被相続人の配偶者が取得する場合

配偶者が取得するならば、特例適用のために求められる要件はありません。常に適用することができます。また、相続続直後に売却する場合であっても適用することができます。

【2】親族は同居していれば適用可能

【要件②】被相続人と同居していた親族が取得する場合

親族が、相続開始の直前において宅地等の上に存する被相続人の居住用の家屋に居住(同居して、生活の本拠地を置くこと)していた者であること。
●相続開始時から申告期限まで当該宅地等を継続所有していること。
●中告期限まで当該家屋に継続居住していること。

【3】「家なき子」は適用要件が厳しくなった!

【要件③】配偶者および同居親族がおらず非同居親族が取得した場合(家なき子)

●被相続人の配偶者または相続開始の直前において被相続人の居住用の家屋に居住していた親族(法定相続人である同居親族)がいないこと。
●相続開始前3年以内にその者またはその者の配偶者の所有する家屋(当該相続開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く)に居住したことがない者であること。
●ただし、以下の者を除く(2018年改正)。
相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族または特別関係法人が所有する家屋に居住したことがある者、相続開始時において居住していた家屋を過去に所有していたことがある
●相続開始時から申告期限まで当該宅地等を継続所有していること。

(注)「法定相続人である同居親族がいない」という意味ですが、たとえば、被相続人が自分の兄弟姉妹と同居している場合、被相続人に子供がいるときには兄弟姉妹は法定相続人に入りませんので、要件を満たすことになります。

【4】建物に生計同一の親族が住んでいた場合でも適用可能

【要件④】被相続人と生計同一親族の自宅を配偶者が取得した場合

これは、親が買ってあげた家に子供が住んでいるケースが該当します。配偶者が土地を相続したうえで、子供が居住し続けてもよいですし、すぐに売却しても構いません。

【要件⑤】生計同一親族の自宅をその親族が取得した場合

●被相続人からの相続または遺贈により取得した親族が、被相続人と生計を―にしていた者であること。
●相続開始時から申告期限まで宅地等を継続所有していること。
●相続開始の前から申告期限まで宅地等に継続居住していること。

【5】賃貸併用住宅は面積按分する

1棟の建物の敷地である宅地に、自宅部分賃貸部分がある場合が問題となります。1つの宅地のうちに特定居住用宅地等の部分とそれ以外の部分がある場合、それぞれの部分ごとに按分して減額割合を計算することになります。

たとえば、次の図表のような例を考えてみます。面積300㎡、自用地としての相続税評価額60,000千円、借地権割合60%、借家権割合30%としましよう。

【計算式】

まず、借地権と借家権の評価減を考慮します

(1階、3階、4階) 60,000千円×3/4=45,000千円
(2階) 60,000千円×1/4×(1−60%×30%)=12,300千円
45,000千円+12,300千円=57,300千円

次に、居住用の4階部分に対して小規模宅地特例を適用します。

60,000千円×1/4×▲80%=▲12,000千円

さらに、貸付事業用の2階部分に対して小規模宅地特例を適用します。

60,000千円×1/4× (1−60%×30%)× ▲50%=▲6,150千円

以上から、土地の評価額は、

57,300千円−12,000千円−6,150千円=39150千円

となります。

執筆者紹介

岸田 康雄 (きしだ やすお)

事業承継コンサルティング株式会社 代表取締役
島津会計税理士法人東京事務所長
公認会計士、税理士、中小企業診断士、国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)

一橋大学大学院商学研究科修了(経営学および会計学専攻)。 中央青山監査法人(PwC)にて事業会社、都市銀行、投資信託等の会計監査および財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、メリルリンチ日本証券、SMBC日興証券、みずほ証券に在籍し、中小企業経営者の相続対策から大企業のM&Aまで幅広い組織再編と事業承継をアドバイスした。 現在、相続税申告を中心とする税理士業務、富裕層に対する相続コンサルティング業務、中小企業経営者に対する事業承継コンサルティング業務を行っている。 日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員。中小企業庁「事業承継ガイドライン」改訂小委員会委員。

著書には、「プライベート・バンキングの基本技術」(清文社)「信託&一般社団法人を活用した相続対策ガイド」(中央経済社)「資産タイプ別相続生前対策完全ガイド」(中央経済社)「事業承継・相続における生命保険活用ガイド」(清文社)「税理士・会計事務所のためのM&Aアドバイザリーガイド」(中央経済社)、「証券投資信託の開示実務」(中央経済社)などがある。