相続税がゼロ円に!?配偶者税額控除のすべて!

目次

はじめに

相続税の計算には、3つのステップがありました。第一ステップは課税価格の計算、第2ステップは相続税の総額の計算、第3ステップは、相続人それぞれが納付する税額の計算でした。今回は、第3ステップにおいて算出された相続税額から減算する「税額控除」について解説いたします。

税額控除

第3ステップの納付税額の計算では、それぞれが納付する相続税額に対して、一定の減算の調整を行います。この減算のことを税額控除といいます。また、特例として、配偶者の税額軽減による減算があります。

贈与税額控除

相続財産に対して生前に贈与税が課されていた場合は、その贈与税額を相続税額から控除することができます。これを贈与税額控除と言います。

相続開始前3年以内に被相続人からの生前贈与によって取得した財産は、相続税の課税価格に加算されますが、それに対して課された贈与税は、贈与税額控除の対象となります。

また、相続時精算課税制度の贈与によって取得した財産も同様に、贈与税額控除の対象となります。

いずれにしても、すでに支払った贈与税が相続税を上回っている場合は、その超過額を返金してもらうことができます。

未成年者控除

法定相続人が未成年者である場合には、満18歳に達するまでの1年につき10万円を乗じた金額を相続税額から控除することができます。これを未成年者控除といいます。

未成年者控除=(18歳-相続開始時の満年齢)×10万円
(注) 満年齢で、 1歳未満の端数は切り捨てる。

障害者控除

法定相続人が85歳未満の障害者である場合には、満85歳に達するまでの1年につき10万円を乗じた金額を相続税額から控除することができます。これを障害者控除といいます。特別障害者の場合には、1年につき20万円です。

一般障害者の障害者控除 =10万円×(85歳-相続開始時の満年齢)  
特別障害者の障害者控除 =20万円×(85歳-相続開始時の満年齢)
(注)満年齢で、 1歳未満の端数は切り捨てる。

相次相続控除

短期間に連続して相続が発生すると、相続税の負担が重くなってしまいます。そこで、同じ家族で10年以内に2回以上相続が連続した場合には、前回に課された相続税額の一定割合を、後で課される相続税額から控除することができます。これを相次相続控除といいます。

外国税額控除

外国にある財産を取得したものの、その財産に対して、外国で相続税が課されていたときには、国際的な二重課税となっています。そこで、外国で課された相続税額を、日本の相続税額から控除することができます。これを外国税額控除といいます。

配偶者の税額軽減の特例

最も大きな税額控除は、「配偶者の税額軽減」の特例です。配偶者が取得した相続財産が1億6,000万円以下である場合、または、法定相続分相当額以下の場合には、相続税が課されません。

被相続人から配偶者への相続は、同一世代間の財産の移転を意味しますから、大幅に税額が軽減されるのです。

この特例を適用すれば、配偶者は、課税価格が法定相続分までであれば、相続税は課されません。それを超えたとしても、1億6千万円までの課税価格であれば、相続税は課されません。

ただし、配偶者の税額軽減の適用を受けるためには、たとえ納付すべき相続税額がゼロになる場合であっても、申告書を提出しなければなりません。

申告書の提出期限までに遺産分割が確定していない場合には、配偶者の税額軽減の適用を受けることはできませんが、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、後から配偶者の税額軽減の適用を受けるように修正し、相続税を返金してもらうことができます。

相続税の申告と納税

最後に申告と納税の実務について解説しましょう。

遺産の総額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告書を提出しなければなりません。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例のような特例を適用する場合は、相続税額がゼロになる場合であっても、申告書を提出しなければいけません。

申告書の提出先は、被相続人の死亡時における住所を所轄する税務署、申告書の提出期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。

もし提出期限内に遺産分割が完了できなかった場合には、相続税を正しく計算することができません。そのような場合には、法定相続分によって相続されたものとみなして、相続税を仮計算することによって申告書を提出しなければなりません。

相続税の納税は、原則として、申告書の提出期限までに現金で一括納付することとなっています。期限内に納税されなかった場合、延滞税や加算税が発生し、税負担が一気に重くなります。

ただし、相続財産が不動産ばかりで現金が手元になく、納税が困難な場合には、5年以内の分割払いが認められることがあります。これを延納といいます。

さらに、延納も困難な場合には、例外として、現金以外の相続財産で納付できることがあります。これを物納といいます。物納に充てることができる財産には、順位が決まっており、国債や地方債、不動産、上場株式、非上場株式、動産の順番です。

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この記事を書いた人

公認会計士/税理士/宅地建物取引士/中小企業診断士/行政書士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年経済産業省「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント・コンサルティング部、みずほ証券投資銀行部門、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門に在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継のアドバイスを行った。現在は税理士として相続税申告を行っている。

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